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遭遇Ⅱ

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 どこまでやってたっけ。
あんまり……、うーん。覚えていない。本当に。

 「あ、あんまりです。
  この、わたくしめの口吸いをしながらのもがもがもが」

 詰め寄ろうとしてきたあたりで、どこからともなく、劇場関係者が現れて颯爽と排除された。
具体的に言うと、はがいじめ。屈強なるものたちが相手をものともせず運搬していく。
 (まるで宇宙人のようだ……)
 SFは詳しくはないけれども、空中に浮いて足掻く足が物陰に消えていくあたりがとてつもなくシュール。
公子様の様子を伺うと、にこ、と。

 「いや、あの。
  それで誤魔化せられるとでも」
 「リヒ。過去のことは心苦しいが、流してくれないか」
 
 とてつもなく笑顔だが、貴族流の笑顔だこれ。

 「んー……」

 僕は唸りながらも、彼によって力強く握りしめられる僕の二の腕が悲しい悲鳴をあげそうなので、ひとまず、これはこれでよしとした。面倒はまた、これからやってくるだろう、と。
 
 赤色の絨毯、敷かれたそこを歩ける金持ちは、何も貴族ばかりではなかったらしい。

 「あ……フリードリヒ様っ!」
 
 駆け寄ってきたのは、これまた愛らしい……歳若く、もしかしたら僕より年下かもしれなかった。なんたって顔が童顔である。肌もみずみずしく、声色も甲高い。男だけど。

 「もうっ、フリードリヒ様! どうして、俺と会ってくださらないのです?
  いっぱいいっぱい、お手紙だって出したのに!」

 ぶーぶー文句をいう感じ、自分の見た目の良さを分かってて演出しているタイプだ。僕はよく分かっている。
あとなんでかピンクのフリルを着用している。首周りもピンクだが、意外と似合っているのが怖い。

 「はあっ、もしかして、最後の夜、俺がフリードリヒ様のうしろをちゃんと、
  ほぐさずにたくさん愛しちゃったから……です?」

 むふふ、と僕の方をみやりながら、どことはなしに小馬鹿感を出してきた。
 びく、と思わず反応してしまったのは、途端、お隣の公子様に掴まれている腕が再び痛めつけられているからだ。

 「うふふふ、大丈夫ですよぉ!
  次こそは朝から晩まで、たーっぷり、俺のもん溜め込んでおきますから!
  禁欲したら今度は腰がたたないだけじゃなく、前と後ろから同時に、ってやめ」

 ああああ、と何やら叫びながら、劇場関係者、再び。
非常口っぽいあたりにまで、抵抗する物音がする……。せっかくの赤い絨毯に引き摺られた跡が……。

 「さ、行きましょう、リヒ」

 その笑顔、プライスレス。





 おおむね、10人はいくかいかないか。
面倒なので数はかぞえていないが、それなりの人数とすれ違った。公子とのちょめちょめ相手。
 勝手に話しかけられた中で分かったことは、公子様は対面座位もこなしたエキスパートってこと。4番目と8番目あたりのエピソードがえぐかった。デバガメした3Pは通常運転だったんだ……。
 (それと、なんでか巨根ばかり選んでたっぽい)
 逸物自慢をいく人かにされたので、どうやらそういった嗜好であるらしかった。ふむ。

 「リヒ、その……」
 
 そわそわ、と話しかけられるが、うん。いや別に気にしてはいない。
 どちらかというと今まで公子様がこなしてきた数々のプレイが気になった。
 (4番目の赤ちゃんプレイっぽいの衝撃的だったけど……)
 どっちがどっち役やったんだろ……。
僕は不安そうにしている婚約者様を尻目に、彼のノーマル? プレイへの興味が尽きなかった。

 「ねえ、公子様」
 「な、なんでしょうか」

 彫刻のような顔をしているというのに、僕如きにびくびくとしている彼に対し、僕は至極まっとうな意見を出した。

 「その。こういったデリケートなこと聞くのは失礼だろうけど。
  ……排尿プレイ、まではしてないよね……?」
 「は?」




 衛生的に良くないので一応、相手のために聞いてみたところ、そこまではやっていない、とのことだ。
おかげで、公子様の顔がただでさえ白いのに紙みたいに白くなった。
 本当は肛門から排出される例のプレイまで想定していたが、そこは一応、おぼっちゃまである。本格的に汚いことまではせず、実に正しいプレイばかりを経験してきたようだ。

 ヴォル邸の執事並みに姿勢がまっすぐな劇場関係者がひとり、扉の前に佇んでいて、僕たちを出迎えるためにずっとい続けていてくれていたようだ。僕らが近づくと、彼はうやうやしく、劇場ホールが見渡せる扉を開く。

 「おおー……」

 (ここが、そうかあ)
 とてつもなく広い劇場ホールがお目見えだ。
 
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