上 下
6 / 82

情、世は無常。

しおりを挟む
 こんなにも僕を求めている人に対し、僕はどう答えたらいいか?
アンサー。結論。
 たくさん、たくさん満足してもらうこと。
 いっぱい、いっぱい。動けばいい。

 律動は、僕も負けじとするべし。
 たくさん、出し入れした。
 熱い腹の中に、子沢山になるように。

 (でも、両生類でもない限り、子はできないと……)

 けど、これだけ出したら……。

 「うっ」

 またも、フィニッシュ。
かくり、と疲れてしまいそうになるが、そもそも激しい交接をしすぎではなかろうか。

 (……)

 腰、痛い。
なぜに、攻め手の僕が腰を痛めるのだろうか。普段運動しないから、にしてはやはりやりすぎたのかも。
 見やれば、彼はとてもどこもかしこも。
美しく、乱れに乱れ、精液に塗れた体のまま、意識を失っていた。さもありなん。

 「声……」

聞きたいな。
 思ったけど、伏せたまつ毛の長さ、それに。少し、泣いた跡があって。

 「あ……」

ショックを受けた。

 我に、返った。

 そうか、僕は。これ、ただの……。
でも、でもでも、彼だってノリノリだったような……?
 
 (……)

 めちゃくちゃ嬉しそうに、その、僕のもの、口に咥えて……。
 ボッ、と恥ずかしくなった。自分が。
想像するだに、照れる。

 (けど……)

 愛してる、とか。
言葉では、お互いに……返しては……。

 言葉のコミュニケーションの前に、体のコミュニケーションをとってしまったことを察し、僕は頭を抱えそうになる。とんでもないことだった。
 卑猥なことばかりして、先にするべきことを、しなかった。
なんというボディランゲージか。

 そよ、と。

 静かな部屋に、微風が、少し吹いた。

 「そういえば……もう、朝か」

 薄暗いキングベッドに、異臭まみれのこの空間を爽やかにする気配。
周囲の調度品。どれもこれも一級品。頑丈そうな両扉。明らかにどれもこれもが一流の品であった。
僕のしがないお小遣い程度では、どうしようもないほどで。
 ひとつ欠けるだけでも、とんでもないお値段になりそうだ。

 急に、自らの吐息でさえ、怖くなった。

 静寂に、恐怖を覚える。

 そういや、公子様は……王族の、身内だった。
そんな彼を……僕は……。手籠に。

 (いや、とてつもなく……ノリノリで……僕の上に乗り掛かってたけど……)

 彼にがむしゃらに喰われた気がするが……気のせいかな。
でも今日の朝は、僕がやり返した感はある。
あるけど……。
 でも……。

 「面倒そうな、予感しか……」

 しない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

【完結・短編】game

七瀬おむ
BL
仕事に忙殺される社会人がゲーム実況で救われる話。 美形×平凡/ヤンデレ感あり/社会人 <あらすじ> 社会人の高井 直樹(たかい なおき)は、仕事に忙殺され、疲れ切った日々を過ごしていた。そんなとき、ハイスペックイケメンの友人である篠原 大和(しのはら やまと)に2人組のゲーム実況者として一緒にやらないかと誘われる。直樹は仕事のかたわら、ゲーム実況を大和と共にやっていくことに楽しさを見出していくが……。

麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る

黒木  鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したから継母退治するぜ!

ミクリ21 (新)
BL
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したダンテ(8)。 弟のセディ(6)と生存のために、正体が悪い魔女の継母退治をする。 後にBLに発展します。

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

文官Aは王子に美味しく食べられました

東院さち
BL
リンドは姉ミリアの代わりに第三王子シリウスに会いに行った。シリウスは優しくて、格好良くて、リンドは恋してしまった。けれど彼は姉の婚約者で。自覚した途端にやってきた成長期で泣く泣く別れたリンドは文官として王城にあがる。 転載になりまさ

処理中です...