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獣人の本能

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 先ほども述べた通り、僕は純潔を守っていることを決して誇っているわけではない。
単に、そういう性格だから、そうなっているだけであった。
 獣のように、本能でまぐわうなんて。
 少なくとも、人間だった頃の記憶でもそうそうは……まあ、いるにはいただろうけど(穴兄弟という名称があるくらいだ、)気持ちを通わせ合うことの大事さ、それは理解しているつもりだ。つもりだった。

 ただ、問題はこの世界は獣人の世界である、ということのみ。

 僕にもそういった本能が備わっていたのである……。





 祖先に龍人でもいたんだろうか、とは両親のお言葉である。
僕があまりにも人間だった頃の暮らしを踏襲するものだから、身持ちの堅さにずいぶんと辟易としているようだった。孫? 兄貴と妹にたくさんできるでしょ。
 
 「そういうことじゃないのよ、リヒト」

 うへーと苦い顔をすると、また、同じ調子で詰られる。
まさしく前世におけるお盆寝正月の親戚……ごほん。心配していってくれるのはわかるが、わかるけど。人の人生だもの、仕事だってしているのだから勘弁してほしい。あ、獣人か。

 さて、話を戻そう。

 獣人の厄介なところは、気に入った相手がいたら、即、やる、ということである。
即やるのだ。いた、即、やろう。そういうことである。
 路地裏もイカ臭いのだ。街の繁華街の裏では、至る所にしみったれたシミが漂っている。ああいやだいやだ。仕事でなければ絶対にいかないところに行かざるを得ないときはその日一日中、テンションが下がったもんだ。
 ここまで獣人としての本能に負けじといくのだから、もしかして、僕の体はどこかおかしいのだろうか、と早熟が当たり前の獣人だった両親は、医師に大枚叩いてつれてったりもしてくれたが、特に何もなく。
 そういう性癖ですねーだってよ。

 仕方ない。
ただ仕方ないのだ。性癖というよりも性格だ、と僕は言い返した。
 生意気なガキだな、と過去の自分をかこつけて、ふ、と笑う。



 気に入ったら、目と目があったら。
声が気に入ったから。姿が好みだったから。
獣人としての臭気、本能が好ましいものだったから。


 雰囲気に煽られたから。

 用意された食べ物が美味しかったから。
発情期だったから、も理由として挙げられるだろうか。


 ここまで鉄人だった僕が、まさかのまさかだ。



 そんな僕を、あの人はどこで見染めたのだろうか。

 「やっぱりあの夜会かな……?」

 呟く。
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