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終章・女神
それから、
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以後、何度となく偶然のような、まるで図ったかののごとき遭遇を経て、時に手紙のやりとりや只者ではない執事がやってきては約束を取り付けていき、あれこれとヴィクリス様と出歩く機会が増え……、時々、これってお付き合いしてる状況? と首を傾げるが、まるで友人みたいに気安く接してくれるので、彼が王家の人間であり到底手の届くはずがない人物であることを忘れそうになる。
横顔は鼻筋が高く、貴種であることをふと気付かされるけれども。
有名人なのでどこへ行っても注目されるし、常に堂々としている。
その隣にいる私は影が薄いのかあまり注目されていない様子なので、周囲を意識することもなく、ヴィクリス様とあれこれ普段通りに会話をする。時に季節の花々を愛たり、カフェでお茶を楽しみながら。
私が彼をどう思っているのか、正直、自分のことながらわからない。
確かに運命、なんだろうな、と思う。
キラキラしているし。視線が合うと、胸の奥がきゅっと引き締まるし。
かつての第三王子ほどの、そういった激しさはないが。
(何度も考え、生きてきた弊害なんだろうか)
悩みすぎたせいか、心が凪のように静かになっていくのを、幾度も幾度も夜が巡るほどにいつもいつも、俯瞰して眺めていた。私の愛はすっかり落ち着いていた。
(でも、)
彼に手を、エスコートされると嬉しいし、大事にされていると思う。
親切にしてもらえている。私の行き先をきちんと含んでくれて足取りも幅を合わせてくれるし、一緒に出かける時は何がしかの花束や思いを綴ったカードを贈ってくれる。
誰もが望む、お姫様待遇。
(そうそう、)
最近は、手の甲だけじゃなく、指先にも口づけを施し、馬車から降りる際には耳元に甘い言葉をのせ……、
あぁ、嫌だわ……。
恥ずかしいことばかりだ。
前世がおっさんだったのに、この乙女な気持ちはなんなんだろう。
女性という性に引きずられてでもいるんだろうか?
耳たぶの縁を優しく撫でられたり、触れるか触れないかのキスを耳にしてるような、そんな細やかな……吐息や、彼の青い瞳に映る私は……間違いなく、真っ赤なんだろう。
「お姉ちゃん、帰ってくるといつも顔が赤いよね」
「青春しすぎでしょ。もっとこうグイグイ……」
ニヤニヤと食卓を楽しむ兄妹のお皿には苦手な野菜をたっぷりと乗せてやり、ソワソワと土産話を待ち構えている両親に、今日の出来事を話す。
「研究所にねぇ」
「はい」
最先端の魔法研究を行なっている、王城内部のそこに私は連れられていった。
断わるのに苦心したが、強気なところもお持ちなヴィクリス様に連行された。
「ヴィクリス様の研究室もあるんです」
「へえ~そりゃすごい」
「秘密が多いところね」
「一般公開されてないのにすごいな、特別待遇じゃん」
研究内部にはダフォーディル学院で魔法を生徒に教えている先生もいて、私に片目を閉じてウインクしてきた。その後、ヴィクリス様が妙に不機嫌だったのが印象的だった。
(あの仕草があまりにも不敬すぎたとか?)
もし私も嫌われたいのなら、ウインクすべきだろうか?
と意味のないことを頭に収め、魔法の記述が恐ろしいほどに長いその文章の綴られた紙片を見せてくれたり、実践してくれたのは良い経験だった。水の魔法は美しく放射線を描き、まるで噴水みたいに上空へ飛んでいき……宝石の粒のように、水滴が空を舞い、光を反射してただひたすらに美しい瞬間だった。
皆が笑顔で。
私も、ヴィクリス様も。
(ああ、私のそばにこの人がいるんだ……)
体温を感じられる距離を覚え、ようやく私は理解した。
私の運命の人は、とても努力をし、きっと、足掻いてきたのだ。
何のために?
目と目が合えば、にこりと青い目を瞬かせ、嬉しげにしてくれる彼に、私の心はようやく、何かを掴んだみたいだった。
横顔は鼻筋が高く、貴種であることをふと気付かされるけれども。
有名人なのでどこへ行っても注目されるし、常に堂々としている。
その隣にいる私は影が薄いのかあまり注目されていない様子なので、周囲を意識することもなく、ヴィクリス様とあれこれ普段通りに会話をする。時に季節の花々を愛たり、カフェでお茶を楽しみながら。
私が彼をどう思っているのか、正直、自分のことながらわからない。
確かに運命、なんだろうな、と思う。
キラキラしているし。視線が合うと、胸の奥がきゅっと引き締まるし。
かつての第三王子ほどの、そういった激しさはないが。
(何度も考え、生きてきた弊害なんだろうか)
悩みすぎたせいか、心が凪のように静かになっていくのを、幾度も幾度も夜が巡るほどにいつもいつも、俯瞰して眺めていた。私の愛はすっかり落ち着いていた。
(でも、)
彼に手を、エスコートされると嬉しいし、大事にされていると思う。
親切にしてもらえている。私の行き先をきちんと含んでくれて足取りも幅を合わせてくれるし、一緒に出かける時は何がしかの花束や思いを綴ったカードを贈ってくれる。
誰もが望む、お姫様待遇。
(そうそう、)
最近は、手の甲だけじゃなく、指先にも口づけを施し、馬車から降りる際には耳元に甘い言葉をのせ……、
あぁ、嫌だわ……。
恥ずかしいことばかりだ。
前世がおっさんだったのに、この乙女な気持ちはなんなんだろう。
女性という性に引きずられてでもいるんだろうか?
耳たぶの縁を優しく撫でられたり、触れるか触れないかのキスを耳にしてるような、そんな細やかな……吐息や、彼の青い瞳に映る私は……間違いなく、真っ赤なんだろう。
「お姉ちゃん、帰ってくるといつも顔が赤いよね」
「青春しすぎでしょ。もっとこうグイグイ……」
ニヤニヤと食卓を楽しむ兄妹のお皿には苦手な野菜をたっぷりと乗せてやり、ソワソワと土産話を待ち構えている両親に、今日の出来事を話す。
「研究所にねぇ」
「はい」
最先端の魔法研究を行なっている、王城内部のそこに私は連れられていった。
断わるのに苦心したが、強気なところもお持ちなヴィクリス様に連行された。
「ヴィクリス様の研究室もあるんです」
「へえ~そりゃすごい」
「秘密が多いところね」
「一般公開されてないのにすごいな、特別待遇じゃん」
研究内部にはダフォーディル学院で魔法を生徒に教えている先生もいて、私に片目を閉じてウインクしてきた。その後、ヴィクリス様が妙に不機嫌だったのが印象的だった。
(あの仕草があまりにも不敬すぎたとか?)
もし私も嫌われたいのなら、ウインクすべきだろうか?
と意味のないことを頭に収め、魔法の記述が恐ろしいほどに長いその文章の綴られた紙片を見せてくれたり、実践してくれたのは良い経験だった。水の魔法は美しく放射線を描き、まるで噴水みたいに上空へ飛んでいき……宝石の粒のように、水滴が空を舞い、光を反射してただひたすらに美しい瞬間だった。
皆が笑顔で。
私も、ヴィクリス様も。
(ああ、私のそばにこの人がいるんだ……)
体温を感じられる距離を覚え、ようやく私は理解した。
私の運命の人は、とても努力をし、きっと、足掻いてきたのだ。
何のために?
目と目が合えば、にこりと青い目を瞬かせ、嬉しげにしてくれる彼に、私の心はようやく、何かを掴んだみたいだった。
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