34 / 39
切れる3秒前どころじゃない
しおりを挟む
抱きつかれた経緯のせいか元々不機嫌だったのかはわからないが、副会長は戸惑うサギリを他所に大いに眼を開くに開き、
「……ふざけるな!」
罵倒し、恐ろしい剣幕で姿を消した。
「え?」
サギリが驚くのも無理はない。
まるで残像も残さんばかりに全力パンチを仕掛けたのだから。会計に。
「ぐっ」
振り向くと、襲いかかる副会長からの猛攻にきちっと両腕でガード対応していた。腐っても鯛である。
「てめ、ふざけろ!」
「チッ」
防戦しながらも足蹴りで転ばそうとするあたり、なんだかんだでただのチャラ男ではなかった。
舌打ちかましながら頭突きまで仕掛ける副会長の動きもおかしいが、それをさらりと避けて弾みをつけ、両足でドロップキックする会計をさらにかわしてみせてくるりと、どこに重力置いてきたの? といわんばかりに回転して(それも廊下を転げたのかバック転したのかすらベータのサギリにはわからないぐらい早い動きで)生徒会役員たる彼らの戦いは熾烈を極めた。
しかも会計は半笑いだ。
「……なにが可笑しい!」
ブチギレ副会長はキレッキレのマジ切れ3秒前というかやっぱキレ気味だが。
ぷす、と含み笑いしながらも重たいパンチを受け流す会計の歪つな口はおふざけも止まらない。
「さすレイ」
「貴様ァ……」
地獄の底を這うようなおどろおどろしい副会長の声に比例し、ニヤニヤと引きつっていく口元。
(はは、まさかの秒パンチとは)
殺意を感じ、守りに入ったのは正解だった。
力と執念が籠りきったアルファパンチを顔面にキメられでもしたら、唯一の取り柄でもある顔面が陥没するところだ。しかも結構体重乗ってたし。思わずヒュー、と口笛吹いてしまった。
(やっべ、マジつええ。
案外とレイはヤル奴だったは……)
ちょっぴり漏らしそうになったのは内緒だ。
副会長の醜聞があるからこそ、と思っていたが、存外に能力あるやつが努力をすると青天井である。会計だって護身術は嗜んでいるものの、レイの持ち前のポテンシャルと能力はこうして拳を交えてわかるほどに常日頃から鍛えている者のソレであった。おそらくだが、レイと副会長が同級生であり、顔馴染みであるから無意識の手加減があるのかもしれなかった。
(まあ願望でしかないけどねん)
ひっそりと冷や汗を垂らしつつ。会計は真っ直ぐに予断なく見据える。ちっとも観念せず、むしろ燃え盛る目をその冷ややかな瞳から発している副会長のその修羅のごとき闘気からは普段のクールな面がすっかり消え去っている。
むしろ、意思を宿した青い瞳は冷え冷えとした炎を轟々と燃やし、白磁の肌を興奮で染めてややも整った美しさを際立たせ、魅力的なギャップすら披露していた。
黙って立ってさえいれば美しい男ではあるのだ。
それが、感情豊かに向かってくる。その熱い目線。
普段が普段の振る舞いなだけに、面白さもこみ上げてくるのも事実だった。
ただのヘタレかと思っていたのに、とんだ一面を隠し持っていたものだ。ゾクゾクする。
少しだけ、ほんの少しだけなら抱いてもいいな、と思ったが、一言でも軽口だとしても口にしたものならば、翌日には海魚の餌になってそうだからやめとこう、
「イテっ」
と、無事なほうの頬を触りながら思った。ちょっとだけ張り手を喰らってしまった。
「なにをしている!」
「あ、やべっ」
さて、こんな攻防を学園側が無視するわけもなく。
元々向かっていたらしい警備員たちによって、この戦いは甲乙つけることすらなく終了した。
「……ふざけるな!」
罵倒し、恐ろしい剣幕で姿を消した。
「え?」
サギリが驚くのも無理はない。
まるで残像も残さんばかりに全力パンチを仕掛けたのだから。会計に。
「ぐっ」
振り向くと、襲いかかる副会長からの猛攻にきちっと両腕でガード対応していた。腐っても鯛である。
「てめ、ふざけろ!」
「チッ」
防戦しながらも足蹴りで転ばそうとするあたり、なんだかんだでただのチャラ男ではなかった。
舌打ちかましながら頭突きまで仕掛ける副会長の動きもおかしいが、それをさらりと避けて弾みをつけ、両足でドロップキックする会計をさらにかわしてみせてくるりと、どこに重力置いてきたの? といわんばかりに回転して(それも廊下を転げたのかバック転したのかすらベータのサギリにはわからないぐらい早い動きで)生徒会役員たる彼らの戦いは熾烈を極めた。
しかも会計は半笑いだ。
「……なにが可笑しい!」
ブチギレ副会長はキレッキレのマジ切れ3秒前というかやっぱキレ気味だが。
ぷす、と含み笑いしながらも重たいパンチを受け流す会計の歪つな口はおふざけも止まらない。
「さすレイ」
「貴様ァ……」
地獄の底を這うようなおどろおどろしい副会長の声に比例し、ニヤニヤと引きつっていく口元。
(はは、まさかの秒パンチとは)
殺意を感じ、守りに入ったのは正解だった。
力と執念が籠りきったアルファパンチを顔面にキメられでもしたら、唯一の取り柄でもある顔面が陥没するところだ。しかも結構体重乗ってたし。思わずヒュー、と口笛吹いてしまった。
(やっべ、マジつええ。
案外とレイはヤル奴だったは……)
ちょっぴり漏らしそうになったのは内緒だ。
副会長の醜聞があるからこそ、と思っていたが、存外に能力あるやつが努力をすると青天井である。会計だって護身術は嗜んでいるものの、レイの持ち前のポテンシャルと能力はこうして拳を交えてわかるほどに常日頃から鍛えている者のソレであった。おそらくだが、レイと副会長が同級生であり、顔馴染みであるから無意識の手加減があるのかもしれなかった。
(まあ願望でしかないけどねん)
ひっそりと冷や汗を垂らしつつ。会計は真っ直ぐに予断なく見据える。ちっとも観念せず、むしろ燃え盛る目をその冷ややかな瞳から発している副会長のその修羅のごとき闘気からは普段のクールな面がすっかり消え去っている。
むしろ、意思を宿した青い瞳は冷え冷えとした炎を轟々と燃やし、白磁の肌を興奮で染めてややも整った美しさを際立たせ、魅力的なギャップすら披露していた。
黙って立ってさえいれば美しい男ではあるのだ。
それが、感情豊かに向かってくる。その熱い目線。
普段が普段の振る舞いなだけに、面白さもこみ上げてくるのも事実だった。
ただのヘタレかと思っていたのに、とんだ一面を隠し持っていたものだ。ゾクゾクする。
少しだけ、ほんの少しだけなら抱いてもいいな、と思ったが、一言でも軽口だとしても口にしたものならば、翌日には海魚の餌になってそうだからやめとこう、
「イテっ」
と、無事なほうの頬を触りながら思った。ちょっとだけ張り手を喰らってしまった。
「なにをしている!」
「あ、やべっ」
さて、こんな攻防を学園側が無視するわけもなく。
元々向かっていたらしい警備員たちによって、この戦いは甲乙つけることすらなく終了した。
0
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
おねしょ癖のせいで恋人のお泊まりを避け続けて不信感持たれて喧嘩しちゃう話
こじらせた処女
BL
網谷凛(あみやりん)には付き合って半年の恋人がいるにもかかわらず、一度もお泊まりをしたことがない。それは彼自身の悩み、おねしょをしてしまうことだった。
ある日の会社帰り、急な大雨で網谷の乗る電車が止まり、帰れなくなってしまう。どうしようかと悩んでいたところに、彼氏である市川由希(いちかわゆき)に鉢合わせる。泊まって行くことを強く勧められてしまい…?
【クズ攻寡黙受】なにひとつ残らない
りつ
BL
恋人にもっとあからさまに求めてほしくて浮気を繰り返すクズ攻めと上手に想いを返せなかった受けの薄暗い小話です。「#別れ終わり最後最期バイバイさよならを使わずに別れを表現する」タグで書いたお話でした。少しだけ喘いでいるのでご注意ください。
Tally marks
あこ
BL
五回目の浮気を目撃したら別れる。
カイトが巽に宣言をしたその五回目が、とうとうやってきた。
「関心が無くなりました。別れます。さよなら」
✔︎ 攻めは体格良くて男前(コワモテ気味)の自己中浮気野郎。
✔︎ 受けはのんびりした話し方の美人も裸足で逃げる(かもしれない)長身美人。
✔︎ 本編中は『大学生×高校生』です。
✔︎ 受けのお姉ちゃんは超イケメンで強い(物理)、そして姉と婚約している彼氏は爽やか好青年。
✔︎ 『彼者誰時に溺れる』とリンクしています(あちらを読んでいなくても全く問題はありません)
🔺ATTENTION🔺
このお話は『浮気野郎を後悔させまくってボコボコにする予定』で書き始めたにも関わらず『どうしてか元サヤ』になってしまった連載です。
そして浮気野郎は元サヤ後、受け溺愛ヘタレ野郎に進化します。
そこだけ本当、ご留意ください。
また、タグにはない設定もあります。ごめんなさい。(10個しかタグが作れない…せめてあと2個作らせて欲しい)
➡︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
➡︎ 『番外編:本編完結後』に区分されている小説については、完結後設定の番外編が小説の『更新順』に入っています。『時系列順』になっていません。
➡︎ ただし、『番外編:本編完結後』の中に入っている作品のうち、『カイトが巽に「愛してる」と言えるようになったころ』の作品に関してはタイトルの頭に『𝟞』がついています。
個人サイトでの連載開始は2016年7月です。
これを加筆修正しながら更新していきます。
ですので、作中に古いものが登場する事が多々あります。
幼馴染から離れたい。
June
BL
アルファの朔に俺はとってただの幼馴染であって、それ以上もそれ以下でもない。
だけどベータの俺にとって朔は幼馴染で、それ以上に大切な存在だと、そう気づいてしまったんだ。
βの谷口優希がある日Ωになってしまった。幼馴染でいられないとそう思った優希は幼馴染のα、伊賀崎朔から離れようとする。
誤字脱字あるかも。
最後らへんグダグダ。下手だ。
ちんぷんかんぷんかも。
パッと思いつき設定でさっと書いたから・・・
すいません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる