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会計として。ひとりの生徒として。
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オメガのわりに身長はあるし、顔立ちはまあバース特有の、整ったオメガ種の均一さが無いので、良くはないが悪くはない。派手さしかない副会長の婚約者にしては地味だが、成長著しい体は体力ありそうだし、口づけもしやすくて無駄なく万遍にベッドのうえでは楽しめそうだ。正味な話、舌舐めずりしたくなる。キュートな首筋にちゅっちゅしたい。いや、舐めたい。なかなか良い首筋しているし。俯いてるから丸わかり。生毛可愛い。ウブだけに。
(……けどなぁ、オレだって長生きしたいからなぁ~……)
どこからどう見たってあのムッツリ副会長は、このサギリを殊の外大事にしている。キスのひとつでもしたら首をへし折られそうだし、死んだほうがマシな目に遭いそうだ。想像するだに恐ろしい。かの副会長は真顔で真剣一太刀してきそうで怖い。月夜ばかりと思うなよ。ぶるり。
(けど、)
「あーあー、こんなに赤くしちゃって……」
(これぐらいは許してくれるだろう)
想像の中では散々なエロい目に遭っているサギリの目元を、袖口でそっと拭う会計の眼差しは、傲慢なアルファにしては妙に優しい。
会計は生まれながらに御曹司であり、跡取りであるため周りへの気配りを忘れない。それは息を吸うようにして当然のことであり、オメガに対しても親切に接した。
元々の気質も勿論ある。
世間さまが想像するようなアルファらしいアルファは確かに一般的ではあるけれども(特におっさんアルファ世代では普通)、最近の若いアルファらの間ではああいった凶暴イメージ先行はすでに辟易とした遺物である。有能なアルファほど察しているのだ、時代遅れの自惚れだと。独りよがりのアルファ芝居はみっともない。
であるからこそ、同じ御曹司であり年も一緒な副会長が、あんなにも古めかしいアルファの振る舞いを婚約者相手にしでかすことに驚愕したのだ。初めは。そのうち小慣れてきて、ことあるごとに嫁のオメガちゃんについて揶揄ったりしたものだが、そのたびに副会長はいつもの冷静な仮面を外してくれて面白かった。嫁に関してはおかしい行動ばかりとるので、本当にヘタレだなと思っているが、しかし、
(……本気だから、かねぇ~?
なんで、こう、サギリちゃんをきちんと扱わないんかね……)
こと、ここにきて妙に……まだねじ切られていない首を捻る。他人との性交を見せてしまうのはどう考えたってアウトだろう。婚約者には義理を通さねばならないと、会計の薄い理性が訴えている。
会計は、サギリのことを不便だと、それでいていじらしい、と。好ましいとすら思っている。
自分はこういった一途そうなオメガに弱いのかもしんない。
太陽の輝かしい光と違って、この図書室へ差し込む光は弱々しい。
本棚があらゆる紫外線を遮っている、のもそうだが、この陰鬱な空気は主に目の前の、そしてどうしようと実はこねこねと困っている会計の、サギリを労る気持ちの現れである。静謐で、しかしそれでいて。
なんでか、嫌じゃなかった。
会計本人は静かな性格じゃないのに、長机の向こう側で、ひょろ長い身長を小さく丸めて戸惑っているオメガの、その一雫を拭った手首が、なんでか熱い。湿っているからか。
「……あの」
サギリの声は、オメガにしては低いし。
心地よい。
……ほんの少しだけ、会計の心臓がどくりと脈打ち、落ち着くために下唇を舐めた。
「……聞いて、くれますか?」
「んんっ?」
ちょっとだけ、嫌な予感はしていたけれども。
乗り掛かった船である。
見上げてきた彼の茶色く潤んだ瞳を、会計は肯首して見つめ返した。
(……けどなぁ、オレだって長生きしたいからなぁ~……)
どこからどう見たってあのムッツリ副会長は、このサギリを殊の外大事にしている。キスのひとつでもしたら首をへし折られそうだし、死んだほうがマシな目に遭いそうだ。想像するだに恐ろしい。かの副会長は真顔で真剣一太刀してきそうで怖い。月夜ばかりと思うなよ。ぶるり。
(けど、)
「あーあー、こんなに赤くしちゃって……」
(これぐらいは許してくれるだろう)
想像の中では散々なエロい目に遭っているサギリの目元を、袖口でそっと拭う会計の眼差しは、傲慢なアルファにしては妙に優しい。
会計は生まれながらに御曹司であり、跡取りであるため周りへの気配りを忘れない。それは息を吸うようにして当然のことであり、オメガに対しても親切に接した。
元々の気質も勿論ある。
世間さまが想像するようなアルファらしいアルファは確かに一般的ではあるけれども(特におっさんアルファ世代では普通)、最近の若いアルファらの間ではああいった凶暴イメージ先行はすでに辟易とした遺物である。有能なアルファほど察しているのだ、時代遅れの自惚れだと。独りよがりのアルファ芝居はみっともない。
であるからこそ、同じ御曹司であり年も一緒な副会長が、あんなにも古めかしいアルファの振る舞いを婚約者相手にしでかすことに驚愕したのだ。初めは。そのうち小慣れてきて、ことあるごとに嫁のオメガちゃんについて揶揄ったりしたものだが、そのたびに副会長はいつもの冷静な仮面を外してくれて面白かった。嫁に関してはおかしい行動ばかりとるので、本当にヘタレだなと思っているが、しかし、
(……本気だから、かねぇ~?
なんで、こう、サギリちゃんをきちんと扱わないんかね……)
こと、ここにきて妙に……まだねじ切られていない首を捻る。他人との性交を見せてしまうのはどう考えたってアウトだろう。婚約者には義理を通さねばならないと、会計の薄い理性が訴えている。
会計は、サギリのことを不便だと、それでいていじらしい、と。好ましいとすら思っている。
自分はこういった一途そうなオメガに弱いのかもしんない。
太陽の輝かしい光と違って、この図書室へ差し込む光は弱々しい。
本棚があらゆる紫外線を遮っている、のもそうだが、この陰鬱な空気は主に目の前の、そしてどうしようと実はこねこねと困っている会計の、サギリを労る気持ちの現れである。静謐で、しかしそれでいて。
なんでか、嫌じゃなかった。
会計本人は静かな性格じゃないのに、長机の向こう側で、ひょろ長い身長を小さく丸めて戸惑っているオメガの、その一雫を拭った手首が、なんでか熱い。湿っているからか。
「……あの」
サギリの声は、オメガにしては低いし。
心地よい。
……ほんの少しだけ、会計の心臓がどくりと脈打ち、落ち着くために下唇を舐めた。
「……聞いて、くれますか?」
「んんっ?」
ちょっとだけ、嫌な予感はしていたけれども。
乗り掛かった船である。
見上げてきた彼の茶色く潤んだ瞳を、会計は肯首して見つめ返した。
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