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浮気者
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2度目だ。
致してる現場に遭遇したのは。
最初に見た衝撃が強すぎて耐性でもできたのか、思ってたよりも僕の心臓は張り裂けそうなほどではなかった。それでも動悸息切れはする。基本的に人前でみせる行為ではないからであろう。
そもそもの話、
(こういった誰が通るかわからないところでヤるっていうのが、
僕には理解できない)
不貞だし。
ショックすぎて、どう考えれば良いか分からなかった。
だから、生まれて初めて目撃した他人の情事を、そのまま通り過ぎてしまった。あまり深く考えられなかった。
さて、今回の扉は少し、あいている。
僕は、頼まれたことをやり遂げねばなるまい。
くぐもった声がするけど。
そっと、横開きの戸口を一人分、押すようにして広げた。
すると、見たくもない光景だが、やけに人を惹き付ける行為がつまびらかになった。
(う……)
何度見ても、いや2回目だけど。
ひどいものだと思う。理不尽さに、僕の目頭が熱くなる。
でも、泣いては、いけない。
噛み締めると、なんとか、熱量は引っ込んだ。泣いてる場合じゃない。
(端っこにでも置けばいいか)
実験教室内部の、壁際に。
そっと、両手で抱えていた実験器具をゆっくりと棚の上に載せた。特に音もなくガラス製品も割れず、しっかりとしたものだ。設計が良いからだろうか。ほっとした僕は、彼らを見ないフリをして、しかし、少しずつ退出した。まるで心からも、何かが出ていくかのようだけれど。
「レイ、レイ、んんんっ、そこ、もっと奥に……、
出して、いっぱいぃ……」
艶のある声とやけに具体的な交わり内容が、耳にこびりつく。
オメガの興奮した声というものはなんと甘やかなものか。
「赤ちゃんほしいよぉ……、
レイ、レイの赤ちゃん……」
僕には、生まれない。
産んでやれない。
「気持ちいい……、
レイ、もっと……、
ん、ん、んっ」
激しい混交がする。
ちゅぱちゅぱと、水音もする。汚らしい、と思った。
「ああああ、あん、あ、んっ、
すごい、すご、いっぱい出てるっ……」
最後に振り返ると、さっき見た二人の重なり合う影が色彩を帯び、はっきりと僕の目に映った。
銀色の髪を振り乱し、しっかりとオメガの細い腰を掴み、ぐっと力強く押し付けている浮気者の背中と。彼の腰にしっかりと絡めとっているオメガのたおやかな、生々しい白い素足を。足の指がぎゅうぎゅうに強くくるまっていて、絶対に彼を離すものか、という迸る情熱が感じられる。
見なくてよかったのに、僕はつい、傷つくだろうにこの光景を両目で焼きつける。
根っこのように張り付く足を動かしたかったけれど、
「チュー、して、レイぃ……」
オメガの、浅い息をはきながらのおねだりに、婚約者は疲れた息を吐き出しつつも。
僕の目の前で背を丸め、口づけをしていた。
なんともいやらしい口づけではあった。
僕は一度たりとも、彼と、いや、手すら握ったことはない。
やけに濃厚な淫らな水音もする。
「はぁ……」
どちらの吐息かわからない。
だが、婚約者の影にせっかく隠れていたオメガの口元がテラテラと濡れてい、またさらに、婚約者にキスをねだり、大きくその桃色の唇を広げて空気を吸い込むようにして、彼の。
そこから、僕は金縛りにあっていたかのように身動きできなかった両足を、動かすことができたんだ。
退出、できた。
致してる現場に遭遇したのは。
最初に見た衝撃が強すぎて耐性でもできたのか、思ってたよりも僕の心臓は張り裂けそうなほどではなかった。それでも動悸息切れはする。基本的に人前でみせる行為ではないからであろう。
そもそもの話、
(こういった誰が通るかわからないところでヤるっていうのが、
僕には理解できない)
不貞だし。
ショックすぎて、どう考えれば良いか分からなかった。
だから、生まれて初めて目撃した他人の情事を、そのまま通り過ぎてしまった。あまり深く考えられなかった。
さて、今回の扉は少し、あいている。
僕は、頼まれたことをやり遂げねばなるまい。
くぐもった声がするけど。
そっと、横開きの戸口を一人分、押すようにして広げた。
すると、見たくもない光景だが、やけに人を惹き付ける行為がつまびらかになった。
(う……)
何度見ても、いや2回目だけど。
ひどいものだと思う。理不尽さに、僕の目頭が熱くなる。
でも、泣いては、いけない。
噛み締めると、なんとか、熱量は引っ込んだ。泣いてる場合じゃない。
(端っこにでも置けばいいか)
実験教室内部の、壁際に。
そっと、両手で抱えていた実験器具をゆっくりと棚の上に載せた。特に音もなくガラス製品も割れず、しっかりとしたものだ。設計が良いからだろうか。ほっとした僕は、彼らを見ないフリをして、しかし、少しずつ退出した。まるで心からも、何かが出ていくかのようだけれど。
「レイ、レイ、んんんっ、そこ、もっと奥に……、
出して、いっぱいぃ……」
艶のある声とやけに具体的な交わり内容が、耳にこびりつく。
オメガの興奮した声というものはなんと甘やかなものか。
「赤ちゃんほしいよぉ……、
レイ、レイの赤ちゃん……」
僕には、生まれない。
産んでやれない。
「気持ちいい……、
レイ、もっと……、
ん、ん、んっ」
激しい混交がする。
ちゅぱちゅぱと、水音もする。汚らしい、と思った。
「ああああ、あん、あ、んっ、
すごい、すご、いっぱい出てるっ……」
最後に振り返ると、さっき見た二人の重なり合う影が色彩を帯び、はっきりと僕の目に映った。
銀色の髪を振り乱し、しっかりとオメガの細い腰を掴み、ぐっと力強く押し付けている浮気者の背中と。彼の腰にしっかりと絡めとっているオメガのたおやかな、生々しい白い素足を。足の指がぎゅうぎゅうに強くくるまっていて、絶対に彼を離すものか、という迸る情熱が感じられる。
見なくてよかったのに、僕はつい、傷つくだろうにこの光景を両目で焼きつける。
根っこのように張り付く足を動かしたかったけれど、
「チュー、して、レイぃ……」
オメガの、浅い息をはきながらのおねだりに、婚約者は疲れた息を吐き出しつつも。
僕の目の前で背を丸め、口づけをしていた。
なんともいやらしい口づけではあった。
僕は一度たりとも、彼と、いや、手すら握ったことはない。
やけに濃厚な淫らな水音もする。
「はぁ……」
どちらの吐息かわからない。
だが、婚約者の影にせっかく隠れていたオメガの口元がテラテラと濡れてい、またさらに、婚約者にキスをねだり、大きくその桃色の唇を広げて空気を吸い込むようにして、彼の。
そこから、僕は金縛りにあっていたかのように身動きできなかった両足を、動かすことができたんだ。
退出、できた。
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