上 下
17 / 39

庶務

しおりを挟む
 いや、よく見ると男の子だった。
ズボン着用しており制服そのものが男性用だ。背丈は僕よりも低くて、女の子に似た顔をしている。
 オメガ、っぽいが、花園クラスではない。ただ、どことはなしに既視感はあった。

 「あんた、サギリ君でしょ」

いきなり名前を呼ばれ、瞬いていると。

 「嗚呼、大丈夫。
  怪しい者じゃないよ、
  生徒会役員してる。庶務だ」
 「へ」

 まるで空気が抜けたかのような声が出てしまったが、そうか。
確かに生徒会に所属している顔だった。彼は肩口で真っ直ぐに髪を切り揃えていて、まるで日本人形みたいな髪型をしている。小さくて、本当に人形っぽい。
 大人しそうに見えたが、

 「こっちきて。危ないから」
 
 引率のごとき丁寧に僕は廊下の端へと追いやられる。
ぐいぐいと存外に強い力だ。引っ張られる。

 「え、あの」
 「ここで待ってて」
 「あ、でも……」
 「安心して。悪いようにはしないから。
  ここで良い子でいて」

 どうにも口が回らず、僕は身振り手振りで申告する。

 「けど、あの中にオメガがいるかも、あの、ええと」
 「……ん。ああ、大丈夫。
  そのことなら心配いらない」
 
 僕の言いたいことをさすがは生徒会役員。成績優秀者しか入れない生徒役員様だ。
会得のいった顔つきになり、くるりと僕に背を向けると、早速といわんばかりに彼は見事な足捌きで彼らの中へと飛び込んでいった。
 いや、蹴ってた。普通に。

 「え」

 アルファも、ベータも関係なし。平等だ。
平均的にも大きな体ではないというのに、物怖じもせず。
 蹴られた相手は顔を歪め、加害者たる庶務へと当然ながら怒りを向けるが、皆、一様にぎょっとした表情になり。即座に庶務から距離をとった。なんだろう、まるで天敵にでも会ったかのような態度ですらある。
 (ハブとマングース?)
 呆気にとられて眺めていると、さらに追加とばかりに。

 「生徒会だ!」

 (え)
 
 「生徒会長!」
 「きゃー会計もいる!」

 バタバタと慌ただしい足音がやってきた。
煌びやかな集団だ。なんとも黄色い声も聞こえたが、やけに野太いのは気のせいか。
 しかも、

 「あ……」

 そこには、婚約者の姿もあった。
アルファの集団でしかない彼ら、生徒会役員たちは見るものの目をつぶすような視覚効果でもあるのかといわんばかりに輝いていた。
 (あっ)
 生徒会に所属している副会長もいた。婚約者だ。
 思わず顔を伏せ縮こまっていると、彼らはたかがベータのことなど視界の隅にも留まらなかったようで、そのまま人だかりの中へと突入していった。
 まるでモーゼのように広がった人の波はさすがは生徒会、といったところか。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

理香は俺のカノジョじゃねえ

中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

処理中です...