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スクロールは【テイム】と【契約魔法】だった。
【テイム】はお約束なスライムやもふもふを仲間にするための能力で、【契約魔法】は魔術による契約を結ぶことができるという代物だ。
例えば交渉毎が起きた場合、色々と条件をつけてこの契約魔法を使えばその内容が反越された場合ペナルティを与えたり度が過ぎれば命を奪うこともできてしまうらしい――熟練度が高ければ。
まぁ今のままだと他言しないとか情報の一部の記憶を消すくらいのことしかできないようだけど、それでも使い方次第で交渉毎を有利に持っていくことができるしろものだ。

私にそんな話術も技術もないわけだけれど。

【テイム】も憧れるけれど、今は自分の事で手一杯だし、そもそも魔物を連れて歩くとか色々と今の状況では無理だ。
スライム…一番初めに仲間になる代表だけど、あの子踏んだだけで倒せちゃうレベルで弱いので私は仲間にはしないかなぁ…。
私、スライムの天敵だしね…。

気を取り直してモノクル。
これは鑑定ができるモノクルだった。
機能的には【鑑定Ⅲ】程の能力が付与されたモノクルで鑑定すれば物や対象の名称、詳細、状態あたりまでが見えるようになるようだ。

この世界に今鑑定という機能を持った道具は試験を受ける前に使用されているステータスチェック用のボードだけである。
あれもダンジョンを生み出した側…すなわちダンジョン管理神さんたち側が用意したものであって、簡易的なステータスを確認する以外はできない代物である。
それ以外の魔道具は今のところ見つかったという話は聞かないし、スキルの類も聞かないのでもしかしたらこの道具がこの世界の初めての鑑定魔道具になるのではないだろうか?
「兎に角これも人様にバレちゃダメなものだね…」
暫く【万能収納】の肥やしである。

「あとはボスドロップの毛皮と槍か…」

『火吹熊の上等な毛皮…通常の刃物では貫通することは出来ない強靭な毛皮。なめし加工をしていないので腐敗する可能性が高い。火属性を有しているため防具を作成した場合【耐炎効果】【防寒機能】が付与される可能性がある』

『爆炎の槍…火属性が付与された魔槍。魔力を流し込むと刃に炎をまとわせることが出来る。炎を纏わせた状態で攻撃を当てるとその箇所が数瞬後爆発する』

ボスドロップは火属性特化だった。
…というか毛皮なめさないとなのか…。
「そういえば私錬金術…錬金秘術使えたっけ…?」
有用な能力で確かレシピも手に入っていたはずなのに私全然使っていなかった。
「なめし…できるかな?」
そう思った瞬間、スマホの画面にメッセージが表示された。

《火吹熊の毛皮を錬金秘術でなめしますか?》

「あ、はい」
思わず反射的にそう返事をしてみれば、『スライムの皮より粘液を採取して使用します。加工終了予定まで4時間』と出て暫くしたら消えてしまった。
なんか【万能収納】とリンクが繋がって収納内で作業できるらしい。
錬金術の本もリンクしてて、今収納内にあるもので作れるものがリストアップされて見ることができた。
「ポーション類はあっても困らないし、…って言うかやっぱりスライムのヌルヌル、美容に良かったんだ…」
材料が微妙に足りなくて灰色表示になっているけれど『最高品質のボディケアクリーム』とか『至高のオールインワンゲル』とかある訳で。
「はちみつと好みの香油と…」
足りない材料をメモする。
幸いダンジョンにあるものじゃなくてスーパーでも買えるものだったので明日買いに行こうと思う。



「眞守さんおはよー。またおんなじクラスだね」
「おはよう藤森さん。知ってる顔が居るとホッとするね」
何事もなく進級し、新しいクラスに入れば今どき女子の藤森さんが手を振って迎えてくれた。
連れ子愛莉は違うクラスで、合同の授業でも一緒になる事がないクラス編成となってホッとしている。
多分先生方の配慮なのだろうと思うけれど、だったら一年の時もそうしてくれれば良かったのにと思ってしまう。
…あそこまでひどいとは思わなかったのかなぁ…なんて遠い目をしながら席に座れば藤森さんがやってくる。
「あたし、ダンジョン見学参加することにしたわ」
「親御さんの説得に成功したんだ」
「うち、パパと兄貴が過保護なんだけどママが強いから…。でも勝手なことして周りを困らせんなって言われたわ」
「基本だよね、それ」
私の言葉に藤森さんはあははと笑う。
笑ったかと思えばぴたりと止まり、私の顔をじーっと凝視し始める。
「どうしたの?」
「眞守さん、なんかコスメ変えた?」
「私化粧したことないよ?スキンケアくらい?」
「うっそ!!」
言うなり藤森さんは私の顔を両手で挟んだ。
「スキンケアだけでこんなに透き通ったすべすべもちもち肌になる訳ないでしょ!!」
目が怖かった。
昨日足りない材料を買ってきて【錬金秘術】で『至高のオールインワンゲル』を作り使ったなんて言えない…。
「いや、オールインワンゲル使ってるだけだけど…」
「マジで?!どこの!」
「いや、見つけたレシピで作った手作りで…」
そのまま先生が来るまで私は藤森さんに肩を揺さぶられ続けた。
分けてほしいと言われたけれど、責任が持てないからもう少し自分で試してからと言えば激しくブーイングされたけれど。

「お前、本当に大変だな…」
「うぅ…」
哀れみの目を向けるのはやめてください新田先生。
そして今年も先生が担任なんですね…と思いながらも私は机にぐったりと突っ伏した。
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