17 / 17
17 ラウルの材料採集
しおりを挟む
※※改稿した新バージョンの連載を始めましたので、よかったらご覧ください。
西門からでたラウルは周囲を見回す。
門からは街道がまっすぐに伸びていた。
ガローネの周辺は見晴らしの良い平原だ。
だが徒歩で三十分も進むと、街道は森の中へと入っていく。
さらに遠くには高い山も見える。山頂付近は雲に覆われ雪も溶けていない。
とはいえ、魔皇帝城の裏山ほどは高くなかった。
「やっぱり山かな。高度が上じゃないと生えない薬草も多いからね」
そんなことをケロに向かって呟いてから、ラウルは山に向かって走った。
いつも裏山を駆けていたときのように、ラウルは体を魔法で強化している。
ものすごく速い。
「走るのは久しぶりな気がするー」
「キュルルルルルッ!」
魔皇国からガローネまでの道中では父母から走るなと言われていた。
だからラウルが走るのは久しぶりだった。
「やっぱり思い切り走ると気持ちがいいね」
「キュルルルルルッ」
寝ぼけていたケロも、ラウルのあまりの速さに目を覚ました。
ケロは驚いて鳴きながら、羽をバサバサさせる。
思い切り走ったラウルは、馬どころか飛竜よりも速い。
そして東門に行こうとして西門に行ってしまうラウルである。
当然のように見当違いの方向へと走った。
ラウルは当初目指していた山とは全然違う場所へと向かっていく。
父母が走るなと厳命した理由がよくわかるというものだ。
そんなラウルが急に足を止める。
「あっ、薬草があった!」
いつの間にか、どこかの森の奥深くにいたラウルは薬草を発見した。
すぐに採集を開始する。
「これはキュアポーションの材料になるんだよ」
「きゅる」
「あ、ケロちゃん、お腹すいた?」
「きゅっきゅ」
ケロは寝ていたので朝ご飯を食べていないのだ。
ラウルは手ごろな岩を見つけて腰を下ろす。
そして鞄からご飯を取り出してケロに食べさせた。
「たくさん食べるんだよー」
ケロは一生懸命朝、むしゃむしゃとご飯を食べ始める。
朝ご飯のメニューはラウルと同じでパンとゆで卵である。
ケロが一生懸命ご飯を食べている姿をラウルはニコニコしながら見つめていた。
「きゅる?」
ケロがパンをラウルの方に差し出した。
ラウルはお腹が空いているから、じっと見ているのかと思ったのだろう。
「全部食べていいよ。僕はもうお腹いっぱい食べたからね」
そう言ってラウルはケロの頭を優しく撫でる。
そしてラウルは落ち着いて周囲を見回した。
「あれ、ここはどこだろう?」
目指していた山は影も形も見えない。
見知った風景が何一つなかった。
「きゅる?」
ご飯を食べながら、少しだけ不安そうにケロが首をかしげる。
そんなケロの頭を撫でる。
「まあいっか! ケロちゃん、大丈夫だよ」
「きゅるる~」
ラウルが明るいので、ケロも安心したようだった。
ラウルは基本的に楽観主義者だ。
それは元々強すぎて、脅威を感じたことがないせいでもある。
魔法のおかげで、何があっても一人で生還してしまう。
だから危機感を覚えず、のほほんとした性格になってしまっていた。
しばらくして、ケロがご飯を食べ終わる。
「もうお腹いっぱい?」
「きゅる」
ケロは「げふぅ」と、満足そうにげっぷをした。
「それならよかった。じゃあ、採集を再開しよっか」
「きゅっきゅ!」
意図せずラウルは人里から遠く離れた場所まで入り込んでしまっていた。
そこは熟練の冒険者すら入ってこないような場所だ。
おかげで手つかずの薬草が沢山ある。
「いっぱいあるね、あっ、あっちにも!」
「きゅっきゅ」
「ケロちゃん、山桃だよ。これは食べれるんだ。食べる?」
「きゅるる」
見つけた木の実などを食べながら、ラウルとケロは採集を続ける。
そんなラウルの耳に「GAAAAAA」という咆哮が聞こえた。
「あの声は……。熊かな」
ラウルは裏山で遊んでいたので動物には詳しいのだ。
「きゅるー……」
警戒するケロをラウルは優しく撫でる。
「大丈夫だよ。熊は怖いけど、臆病だからこうやって喋っていたら近寄ってこないんだよ」
「きゅっきゅ」
ケロは安心したようだった。
一方そのころ。
ガレーナを出て相当な距離を走ったピエールは肩で息をしていた。
「……いくら何でも速すぎるだろ。暁の侯爵閣下はどれだけ強いんだ?」
ちなみに、暁の侯爵はラウルの二つ名である。
ピエールは護衛なので、当然ラウルを最初からつけていた。
そして、街の外に出たラウルのあまりの移動の速さに見失ったのだ。
魔法皇国の特殊部隊、最精鋭のピエール基準でもラウルは速すぎたのだ。
「……すでに侯爵閣下は、魔王の奴らより速い、つまり強いんじゃないか」
ピエールは直接会話するとき以外、魔王には敬称を付けない。
ピエールは魔皇帝直属なので、魔王に対して忠義の心は持っていないのだった。
むしろ魔王が、魔皇帝に対し叛心を抱いていないか調べるのが本業だったりする。
そして魔王が反旗を翻したときに先頭にたって戦うのもピエールたちの大切な役目だ。
「いや、暁の侯爵閣下は、既に魔皇帝陛下より強いかも知れぬな」
そしてピエールは鞄から水を取り出してごくごく飲んだ。
「とはいえだ。閣下がいくら速くとも、跡をつける方法はいくらでもある」
そしてピエールは馬よりも速い速度で再び走り始めた。
西門からでたラウルは周囲を見回す。
門からは街道がまっすぐに伸びていた。
ガローネの周辺は見晴らしの良い平原だ。
だが徒歩で三十分も進むと、街道は森の中へと入っていく。
さらに遠くには高い山も見える。山頂付近は雲に覆われ雪も溶けていない。
とはいえ、魔皇帝城の裏山ほどは高くなかった。
「やっぱり山かな。高度が上じゃないと生えない薬草も多いからね」
そんなことをケロに向かって呟いてから、ラウルは山に向かって走った。
いつも裏山を駆けていたときのように、ラウルは体を魔法で強化している。
ものすごく速い。
「走るのは久しぶりな気がするー」
「キュルルルルルッ!」
魔皇国からガローネまでの道中では父母から走るなと言われていた。
だからラウルが走るのは久しぶりだった。
「やっぱり思い切り走ると気持ちがいいね」
「キュルルルルルッ」
寝ぼけていたケロも、ラウルのあまりの速さに目を覚ました。
ケロは驚いて鳴きながら、羽をバサバサさせる。
思い切り走ったラウルは、馬どころか飛竜よりも速い。
そして東門に行こうとして西門に行ってしまうラウルである。
当然のように見当違いの方向へと走った。
ラウルは当初目指していた山とは全然違う場所へと向かっていく。
父母が走るなと厳命した理由がよくわかるというものだ。
そんなラウルが急に足を止める。
「あっ、薬草があった!」
いつの間にか、どこかの森の奥深くにいたラウルは薬草を発見した。
すぐに採集を開始する。
「これはキュアポーションの材料になるんだよ」
「きゅる」
「あ、ケロちゃん、お腹すいた?」
「きゅっきゅ」
ケロは寝ていたので朝ご飯を食べていないのだ。
ラウルは手ごろな岩を見つけて腰を下ろす。
そして鞄からご飯を取り出してケロに食べさせた。
「たくさん食べるんだよー」
ケロは一生懸命朝、むしゃむしゃとご飯を食べ始める。
朝ご飯のメニューはラウルと同じでパンとゆで卵である。
ケロが一生懸命ご飯を食べている姿をラウルはニコニコしながら見つめていた。
「きゅる?」
ケロがパンをラウルの方に差し出した。
ラウルはお腹が空いているから、じっと見ているのかと思ったのだろう。
「全部食べていいよ。僕はもうお腹いっぱい食べたからね」
そう言ってラウルはケロの頭を優しく撫でる。
そしてラウルは落ち着いて周囲を見回した。
「あれ、ここはどこだろう?」
目指していた山は影も形も見えない。
見知った風景が何一つなかった。
「きゅる?」
ご飯を食べながら、少しだけ不安そうにケロが首をかしげる。
そんなケロの頭を撫でる。
「まあいっか! ケロちゃん、大丈夫だよ」
「きゅるる~」
ラウルが明るいので、ケロも安心したようだった。
ラウルは基本的に楽観主義者だ。
それは元々強すぎて、脅威を感じたことがないせいでもある。
魔法のおかげで、何があっても一人で生還してしまう。
だから危機感を覚えず、のほほんとした性格になってしまっていた。
しばらくして、ケロがご飯を食べ終わる。
「もうお腹いっぱい?」
「きゅる」
ケロは「げふぅ」と、満足そうにげっぷをした。
「それならよかった。じゃあ、採集を再開しよっか」
「きゅっきゅ!」
意図せずラウルは人里から遠く離れた場所まで入り込んでしまっていた。
そこは熟練の冒険者すら入ってこないような場所だ。
おかげで手つかずの薬草が沢山ある。
「いっぱいあるね、あっ、あっちにも!」
「きゅっきゅ」
「ケロちゃん、山桃だよ。これは食べれるんだ。食べる?」
「きゅるる」
見つけた木の実などを食べながら、ラウルとケロは採集を続ける。
そんなラウルの耳に「GAAAAAA」という咆哮が聞こえた。
「あの声は……。熊かな」
ラウルは裏山で遊んでいたので動物には詳しいのだ。
「きゅるー……」
警戒するケロをラウルは優しく撫でる。
「大丈夫だよ。熊は怖いけど、臆病だからこうやって喋っていたら近寄ってこないんだよ」
「きゅっきゅ」
ケロは安心したようだった。
一方そのころ。
ガレーナを出て相当な距離を走ったピエールは肩で息をしていた。
「……いくら何でも速すぎるだろ。暁の侯爵閣下はどれだけ強いんだ?」
ちなみに、暁の侯爵はラウルの二つ名である。
ピエールは護衛なので、当然ラウルを最初からつけていた。
そして、街の外に出たラウルのあまりの移動の速さに見失ったのだ。
魔法皇国の特殊部隊、最精鋭のピエール基準でもラウルは速すぎたのだ。
「……すでに侯爵閣下は、魔王の奴らより速い、つまり強いんじゃないか」
ピエールは直接会話するとき以外、魔王には敬称を付けない。
ピエールは魔皇帝直属なので、魔王に対して忠義の心は持っていないのだった。
むしろ魔王が、魔皇帝に対し叛心を抱いていないか調べるのが本業だったりする。
そして魔王が反旗を翻したときに先頭にたって戦うのもピエールたちの大切な役目だ。
「いや、暁の侯爵閣下は、既に魔皇帝陛下より強いかも知れぬな」
そしてピエールは鞄から水を取り出してごくごく飲んだ。
「とはいえだ。閣下がいくら速くとも、跡をつける方法はいくらでもある」
そしてピエールは馬よりも速い速度で再び走り始めた。
0
お気に入りに追加
476
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
前世の忠国の騎士を探す元姫、その前にまずは今世の夫に離縁を申し出る~今世の夫がかつての忠国の騎士? そんな訳ないでしょう~
夜霞
ファンタジー
ソウェル王国の王女であるヘンリエッタは、小国であるクィルズ帝国の王子との結婚式の最中に反乱によって殺害される。
犯人は国を乗っ取ろうとした王子と王子が指揮する騎士団だった。
そんなヘンリエッタを救いに、幼い頃からヘンリエッタと国に仕えていた忠国の騎士であるグラナック卿が式場にやって来るが、グラナック卿はソウェル王国の王立騎士団の中に潜んでいた王子の騎士によって殺されてしまう。
互いに密かに愛し合っていたグラナック卿と共に死に、来世こそはグラナック卿と結ばれると決意するが、転生してエレンとなったヘンリエッタが前世の記憶を取り戻した時、既にエレンは別の騎士の妻となっていた。
エレンの夫となったのは、ヘンリエッタ殺害後に大国となったクィルズ帝国に仕える騎士のヘニングであった。
エレンは前世の無念を晴らす為に、ヘニングと離縁してグラナック卿を探そうとするが、ヘニングはそれを許してくれなかった。
「ようやく貴女を抱ける。これまでは出来なかったから――」
ヘニングとの時間を過ごす内に、次第にヘニングの姿がグラナック卿と重なってくる。
エレンはヘニングと離縁して、今世に転生したグラナック卿と再会出来るのか。そしてヘニングの正体とは――。
※エブリスタ、ベリーズカフェ、カクヨム他にも掲載しています。
転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】
ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
おなじみ異世界に転生した主人公の物語。
転生はデフォです。
でもなぜか神様に見込まれて魔法とか魔力とか失ってしまったリウ君の物語。
リウ君は幼児ですが魔力がないので馬鹿にされます。でも周りの大人たちにもいい人はいて、愛されて成長していきます。
しかしリウ君の暮らす村の近くには『タタリ』という恐ろしいものを封じた祠があたのです。
この話は第一部ということでそこまでは完結しています。
第一部ではリウ君は自力で成長し、戦う力を得ます。
そして…
リウ君のかっこいい活躍を見てください。
異世界で俺はチーター
田中 歩
ファンタジー
とある高校に通う普通の高校生だが、クラスメイトからはバイトなどもせずゲームやアニメばかり見て学校以外ではあまり家から出ないため「ヒキニート」呼ばわりされている。
そんな彼が子供のころ入ったことがあるはずなのに思い出せない祖父の家の蔵に友達に話したのを機にもう一度入ってみることを決意する。
蔵に入って気がつくとそこは異世界だった?!
しかも、おじさんや爺ちゃんも異世界に行ったことがあるらしい?
スウィートカース(Ⅱ):魔法少女・伊捨星歌の絶望飛翔
湯上 日澄(ゆがみ ひずみ)
ファンタジー
異世界の邪悪な存在〝星々のもの〟に憑依され、伊捨星歌は〝魔法少女〟と化した。
自分を拉致した闇の組織を脱出し、日常を取り戻そうとするホシカ。
そこに最強の追跡者〝角度の猟犬〟の死神の鎌が迫る。
絶望の向こうに一欠片の光を求めるハードボイルド・ファンタジー。
「マネしちゃダメだよ。あたしのぜんぶ、マネしちゃダメ」
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
竜の契約者
ホワイトエンド
ファンタジー
一人の青年は魂の半分を失った------
1体の竜は肉体を失った--------
二つの魂は混ざり合い生まれ変わった-----
あの日、全てを失った彼はその身に宿した力を振るう
悪を裁くために
正義をまっとうするために
例え、歪んでいようとも
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる