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23.5 下水道探索

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 俺はフレキと会話しながら、神器の気配を探る。
 まっすぐ進めばいいわけではないので、中々人神の神殿の地下にたどり着くのは難しかった。

 ――KISYAAAA

「おっと」

 歩いていると、突然魔鼠が襲いかかってきたので、手で掴んで地面に落とす。

「鼠じゃなくて魔鼠か」

 魔鼠の体長は〇・二メートルほど。
 自分よりはるかに大きい俺に向かって襲いかかってくるとは、かなり凶暴な性格のようだ。

『ただの鼠なら、わざわざ冒険者に頼むこともあるまい』
「それもそうかって。フレキ?」

 俺が落としたあと、再び俺に襲いかかろうとした魔鼠を、フレキは牙であっさり殺した。

『わしは使徒ではないし、魔狼が魔鼠を殺すのは本能のようなものじゃ』
「そっか、まあそうだよね」

 俺は魔鼠の死骸に手を触れる。

「天はいいところだ。死神によろしくな」

 奇跡を使わずに、そういうだけで魔鼠の魂は天に還った。
 ほとんど本能で生きている魔物なので、未練が残りにくいのだ。
 俺が語りかけず、放置したとしても、遅くても数分で天に還ったことだろう。

『折角わしが殺したのじゃ。鞄に入れておけ』
「臭くなりそう」
『大丈夫じゃ。内側には特殊な加工がしてあり、血を洗い流すことができるのじゃ』
「へー、便利だな」
『うむ、先代の使徒さまがおっしゃるには、内張になんとかという魔物の分泌液を塗るとかなんとか……』
「なんとかって何だよ」
『忘れたのじゃ!』

 フレキはおじいちゃん狼なので、記憶が曖昧でも仕方のないことだった。


 その後、凶暴な魔鼠が五匹ほど襲いかかってきて、フレキに返り討ちにあった。
 魔鼠の死骸で鞄が一杯になった頃、やっと人神の神殿の真下あたりに到着した。


 人神の神殿の下は、別に広くなっているわけでもなく、なにも変わらなかった。
 普通に下水が流れており、その左右には一メートルの歩く場所がある。
 神器の鎌がおちているわけでもない。

『なにもないのじゃ』
「だけど、気配はこの辺りからするんだよね」

 神器の気配に加えて、不死者の気配も感じる。
 同時に人神の神殿の気配も感じる。

「フレキは人神の気配を感じたりする?」
『まったく』
「そうか。気のせいかな?」
『もしフィルが感じるのならば、それは使徒の感覚じゃ。先代さまも他神の神殿に入ったあと、そのようなことを呟いておられた』
「なるほど。この感覚は間違っていない可能性もあるのか」

 神域というわけではなく、神気をかすかに感じる程度だ。
 ここが神殿の地下にあたる場所なのは間違いないだろう。

「とりあえず、詳しく調べて見よう」
『うむ』
 俺は壁と床、天井を調べていく。

「下水の中は……後回しだな」
『それがいいのじゃ。なにせ臭いゆえな』

 下水の中を調べなくて良いなら、調べないで済ませたい。
 俺もフレキに同感だった。

「うん。それに、どちらかというと、こっちから気配を感じるんだよ」

 俺は下水路の壁の向こうから、神器と不死者の気配を感じていた。

『む? そっちか。ではそちらを集中的に調べようではないか』

 俺とフレキが真剣に調べはじめて、十分後。
 やっと、壁に補修された跡が見つかった。
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