33 / 71
21 フレキの心配
しおりを挟む
二時間ほど、信者たちと交流した後、俺はお礼をいって冒険者ギルドに戻った。
「人神さまの神殿はどうでしたか?」
フレキを預けた、従魔預かり担当の女性が、笑顔で尋ねてくれる。
「ああ、とても良かった。おかげでゆっくり礼拝できたよ。ありがとうございます」
「いえいえ、フレキちゃんはとってもいい子でしたよ」
担当者は大型犬にするかのように、フレキのことをわしわし撫でている。
『…………』
そして、フレキは不機嫌そうに、むすっと担当者の後ろでお座りしていた。
いや、ちょっと尻尾が揺れるのを我慢している。
担当者にわしわし撫でられるのはまんざらでもないらしい。
「それならよかった。……あれ? フレキ、雰囲気が変わった?」
「あ、気付きました? ちょっと臭かったので、洗っておきました」
「おお、確かに、毛艶が良くなって、ふわふわになり、匂いも良くなっている気がする」
『………………』
フレキが恨めしそうに俺を睨んでいる。
だが、尻尾の揺れは我慢できていない。少しずつ動き出していた。
「洗っている間、フレキちゃんはとっても大人しかったんですよ。ねー」
『…………』
従魔預かり担当者に撫でられながら、ちゅっちゅとキスされ、フレキの尻尾がバサバサゆれた。
俺は従魔預かり担当者にチップを渡し、フレキと一緒に冒険者ギルドを出た。
『ずいぶんと、遅かったではないか』
フレキは、魔法の起点を俺の耳元にして、ささやいてくる。
「ごめんごめん。でも収穫はあったよ。それにフレキも綺麗になったね」
『わしは元々綺麗なのじゃ』
その後、冒険者ギルドでおしえてもらった従魔可の宿屋にむかった。
途中で、フレキ用のご飯を買うのも忘れない。
「俺はもう食べたからな」
『……わしを、放置して……ご飯を……』
「ごめんごめん。情報収集で必要だったんだよ。あとで詳しく話すよ」
従魔可の宿屋で、先払いの料金を払い、部屋へと入る。
フレキがご飯を食べ終わるのを待って、俺は語った。
「まず、人神の神殿なんだけど……」
『ふむふむ』
神器は恐らく地下にあること。不死者の雰囲気を感じたこと。
神殿の地下には下水道ぐらいしかないこと。
そして、最後に人神の使徒に出会ったことも語る。
『む? 人神の使徒じゃと?』
「うん、優しそうで綺麗な子だったよ。これもらった」
俺は人神の聖印をフレキに見せる。
『し、死神さまの使徒ともあろう者が、人神の聖印を首からさげるなど……』
フレキがショックを受けたように、プルプルする。
「いやいや、聖印といっても、ただのアクセサリーだよ。魔導具でもなければ、神具でもない」
言ってみれば、ただの金属のかたまりである。
人の間で、信者同士を見分ける手段でしかない。
神殿にあった、人神の神像と同じだ。
神像も神器でも魔導具でもない。ただの石にすぎないのだ。
ただ、人がイメージしやすくするための物にすぎない。
『そうはいうがな、フィル』
「俺は擬態しないとダメだろう? 死神の使徒だとばれるわけにはいかないし」
『それはそうであるのじゃが……』
「なら、丁度良いでしょう? 俺は人族だし、人神の聖印を首に提げておけば、人神の信者だと思われるだろう」
人神の信者だと思われておけば、死神の使徒だと疑われることはなかろう。
『そういわれたら、そうかもしれぬが……釈然としないのじゃ』
「まあ、効果はあるんだし、便利だから、いいじゃないか」
『だが……しかしのう……』
フレキは理屈はわかるが、納得できないといった感じだ。
これ以上、何か言われないように、俺は話を進める。
「まあ、そういうことで、明日にでも下水道に潜ろうと思う」
『それがいいかもしれぬな、だがどうやってじゃ?』
「冒険者ギルドに下水道掃除の依頼が出ていたからね。それを受ければ入れるだろう」
ちらっと見ただけだが、下水道掃除の依頼はあった。
対象ランクも低く、五級の俺でも受けられるはずだ。
「人神さまの神殿はどうでしたか?」
フレキを預けた、従魔預かり担当の女性が、笑顔で尋ねてくれる。
「ああ、とても良かった。おかげでゆっくり礼拝できたよ。ありがとうございます」
「いえいえ、フレキちゃんはとってもいい子でしたよ」
担当者は大型犬にするかのように、フレキのことをわしわし撫でている。
『…………』
そして、フレキは不機嫌そうに、むすっと担当者の後ろでお座りしていた。
いや、ちょっと尻尾が揺れるのを我慢している。
担当者にわしわし撫でられるのはまんざらでもないらしい。
「それならよかった。……あれ? フレキ、雰囲気が変わった?」
「あ、気付きました? ちょっと臭かったので、洗っておきました」
「おお、確かに、毛艶が良くなって、ふわふわになり、匂いも良くなっている気がする」
『………………』
フレキが恨めしそうに俺を睨んでいる。
だが、尻尾の揺れは我慢できていない。少しずつ動き出していた。
「洗っている間、フレキちゃんはとっても大人しかったんですよ。ねー」
『…………』
従魔預かり担当者に撫でられながら、ちゅっちゅとキスされ、フレキの尻尾がバサバサゆれた。
俺は従魔預かり担当者にチップを渡し、フレキと一緒に冒険者ギルドを出た。
『ずいぶんと、遅かったではないか』
フレキは、魔法の起点を俺の耳元にして、ささやいてくる。
「ごめんごめん。でも収穫はあったよ。それにフレキも綺麗になったね」
『わしは元々綺麗なのじゃ』
その後、冒険者ギルドでおしえてもらった従魔可の宿屋にむかった。
途中で、フレキ用のご飯を買うのも忘れない。
「俺はもう食べたからな」
『……わしを、放置して……ご飯を……』
「ごめんごめん。情報収集で必要だったんだよ。あとで詳しく話すよ」
従魔可の宿屋で、先払いの料金を払い、部屋へと入る。
フレキがご飯を食べ終わるのを待って、俺は語った。
「まず、人神の神殿なんだけど……」
『ふむふむ』
神器は恐らく地下にあること。不死者の雰囲気を感じたこと。
神殿の地下には下水道ぐらいしかないこと。
そして、最後に人神の使徒に出会ったことも語る。
『む? 人神の使徒じゃと?』
「うん、優しそうで綺麗な子だったよ。これもらった」
俺は人神の聖印をフレキに見せる。
『し、死神さまの使徒ともあろう者が、人神の聖印を首からさげるなど……』
フレキがショックを受けたように、プルプルする。
「いやいや、聖印といっても、ただのアクセサリーだよ。魔導具でもなければ、神具でもない」
言ってみれば、ただの金属のかたまりである。
人の間で、信者同士を見分ける手段でしかない。
神殿にあった、人神の神像と同じだ。
神像も神器でも魔導具でもない。ただの石にすぎないのだ。
ただ、人がイメージしやすくするための物にすぎない。
『そうはいうがな、フィル』
「俺は擬態しないとダメだろう? 死神の使徒だとばれるわけにはいかないし」
『それはそうであるのじゃが……』
「なら、丁度良いでしょう? 俺は人族だし、人神の聖印を首に提げておけば、人神の信者だと思われるだろう」
人神の信者だと思われておけば、死神の使徒だと疑われることはなかろう。
『そういわれたら、そうかもしれぬが……釈然としないのじゃ』
「まあ、効果はあるんだし、便利だから、いいじゃないか」
『だが……しかしのう……』
フレキは理屈はわかるが、納得できないといった感じだ。
これ以上、何か言われないように、俺は話を進める。
「まあ、そういうことで、明日にでも下水道に潜ろうと思う」
『それがいいかもしれぬな、だがどうやってじゃ?』
「冒険者ギルドに下水道掃除の依頼が出ていたからね。それを受ければ入れるだろう」
ちらっと見ただけだが、下水道掃除の依頼はあった。
対象ランクも低く、五級の俺でも受けられるはずだ。
0
お気に入りに追加
875
あなたにおすすめの小説
チートスキルを貰って転生したけどこんな状況は望んでない
カナデ
ファンタジー
大事故に巻き込まれ、死んだな、と思った時には真っ白な空間にいた佐藤乃蒼(のあ)、普通のOL27歳は、「これから異世界へ転生して貰いますーー!」と言われた。
一つだけ能力をくれるという言葉に、せっかくだから、と流行りの小説を思い出しつつ、どんなチート能力を貰おうか、とドキドキしながら考えていた。
そう、考えていただけで能力を決定したつもりは無かったのに、気づいた時には異世界で子供に転生しており、そうして両親は襲撃されただろう荷馬車の傍で、自分を守るかのように亡くなっていた。
ーーーこんなつもりじゃなかった。なんで、どうしてこんなことに!!
その両親の死は、もしかしたら転生の時に考えていたことが原因かもしれなくてーーーー。
自分を転生させた神に何度も繰り返し問いかけても、嘆いても自分の状況は変わることはなく。
彼女が手にしたチート能力はーー中途半端な通販スキル。これからどう生きたらいいのだろう?
ちょっと最初は暗めで、ちょっとシリアス風味(はあまりなくなります)な異世界転生のお話となります。
(R15 は残酷描写です。戦闘シーンはそれ程ありませんが流血、人の死がでますので苦手な方は自己責任でお願いします)
どんどんのんびりほのぼのな感じになって行きます。(思い出したようにシリアスさんが出たり)
チート能力?はありますが、無双ものではありませんので、ご了承ください。
今回はいつもとはちょっと違った風味の話となります。
ストックがいつもより多めにありますので、毎日更新予定です。
力尽きたらのんびり更新となりますが、お付き合いいただけたらうれしいです。
5/2 HOT女性12位になってました!ありがとうございます!
5/3 HOT女性8位(午前9時)表紙入りしてました!ありがとうございます!
5/3 HOT女性4位(午後9時)まで上がりました!ありがとうございます<(_ _)>
5/4 HOT女性2位に起きたらなってました!!ありがとうございます!!頑張ります!
5/5 HOT女性1位に!(12時)寝ようと思ってみたら驚きました!ありがとうございます!!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
異世界のんびり冒険日記
リリィ903
ファンタジー
牧野伸晃(マキノ ノブアキ)は30歳童貞のサラリーマン。
精神を病んでしまい、会社を休職して病院に通いながら日々を過ごしていた。
とある晴れた日、気分転換にと外に出て自宅近くのコンビニに寄った帰りに雷に撃たれて…
================================
初投稿です!
最近、異世界転生モノにはまってるので自分で書いてみようと思いました。
皆さん、どうか暖かく見守ってくださいm(._.)m
感想もお待ちしております!
異世界へ全てを持っていく少年- 快適なモンスターハントのはずが、いつの間にか勇者に取り込まれそうな感じです。この先どうなるの?
初老の妄想
ファンタジー
17歳で死んだ俺は、神と名乗るものから「なんでも願いを一つかなえてやる」そして「望む世界に行かせてやる」と言われた。
俺の願いはシンプルだった『現世の全てを入れたストレージをくれ』、タダそれだけだ。
神は喜んで(?)俺の願いをかなえてくれた。
希望した世界は魔法があるモンスターだらけの異世界だ。
そう、俺の夢は銃でモンスターを狩ることだったから。
俺の旅は始まったところだが、この異世界には希望通り魔法とモンスターが溢れていた。
予定通り、バンバン撃ちまくっている・・・
だが、俺の希望とは違って勇者もいるらしい、それに魔竜というやつも・・・
いつの間にか、おれは魔竜退治と言うものに取り込まれているようだ。
神にそんな事を頼んだ覚えは無いが、勇者は要らないと言っていなかった俺のミスだろう。
それでも、一緒に居るちっこい美少女や、美人エルフとの旅は楽しくなって来ていた。
この先も何が起こるかはわからないのだが、楽しくやれそうな気もしている。
なんと言っても、おれはこの世の全てを持って来たのだからな。
きっと、楽しくなるだろう。
※異世界で物語が展開します。現世の常識は適用されません。
※残酷なシーンが普通に出てきます。
※魔法はありますが、主人公以外にスキル(?)は出てきません。
※ステータス画面とLvも出てきません。
※現代兵器なども妄想で書いていますのでスペックは想像です。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
異世界冒険記『ストレージ・ドミニオン』
FOX4
ファンタジー
遠坂亨(とおさか とおる)16歳は、夏休みの最中、新作ソフトを購入し、家へと帰る道のりで不幸にも命を落としてしまう。
その滑稽な死に方に、彼に大笑いで死を伝える、死神セラと対面する。
死後の選択として、天界で次の転生を待つか。新たな生を得て、超人的な能力か、神話級武器をもらい受け、ゲームの主人公みたいに活躍できる異世界にて、魔王討伐をするか。と、問われる亨。
迷ったあげく亨は、異世界へと旅立つ事を決意する。
しかし亨は、ゲームの主人公みたいな生活を送る事は拒否した。
どれだけ頑張っても、一人で出来る事は限界があると考えたからである。
そんな亨が選択した能力は、死んだ時に手にしていた携帯ゲーム機を利用し、ゲームに登場する主人公や、魅力的なキャラクター達をゲームのストレージデータから召喚するという能力だった。
ゲーム的主人公ポジションを捨て、召喚能力を得た、亨ことトールの旅が、どん詰まりの異世界からスタートする。
主人公、個人の力は、チート持ちとは縁遠いものです。地道に経験を積んで成長していくタイプです。
一話の文字数は、千から二千の間くらいになります。場合によっては、多かったり少なくなります。
誤字脱字は無いように見直してますが、あった時は申し訳ないです。
本作品は、横書きで作成していますので、横読みの方が読みやすいと思います。
2018/08/05から小説家になろう様でも投稿を始めました。
https://ncode.syosetu.com/n7120ew/
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!
転移ですか!? どうせなら、便利に楽させて! ~役立ち少女の異世界ライフ~
ままるり
ファンタジー
女子高生、美咲瑠璃(みさきるり)は、気がつくと泉の前にたたずんでいた。
あれ? 朝学校に行こうって玄関を出たはずなのに……。
現れた女神は言う。
「あなたは、異世界に飛んできました」
……え? 帰してください。私、勇者とか聖女とか興味ないですから……。
帰還の方法がないことを知り、女神に願う。
……分かりました。私はこの世界で生きていきます。
でも、戦いたくないからチカラとかいらない。
『どうせなら便利に楽させて!』
実はチートな自称普通の少女が、周りを幸せに、いや、巻き込みながら成長していく冒険ストーリー。
便利に生きるためなら自重しない。
令嬢の想いも、王女のわがままも、剣と魔法と、現代知識で無自覚に解決!!
「あなたのお役に立てましたか?」
「そうですわね。……でも、あなたやり過ぎですわ……」
※R15は保険です。
※小説家になろう様、カクヨム様でも連載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる