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 翌日、レオの見込み通り、厳重に包装された小包が届いた。エーリヒの仕事の早さは相変わらず流石である。
 ヨアヒムは仕事だし、ハンネスには一日レオの部屋に近づかないようお願いしておいた。朝風呂に入った後、早速包装を紐解く。

 出てきたのは不思議な形状をした医療用器具である。
 エネマグラと呼ばれるそれは、前立腺──以前レオがヨアヒムにいじられた体内のある部分を押すことに特化している。

 レオの作戦はこうだった。

 挿れてくれないヨアヒムの前で、エネマグラを自分の中に挿れ、乱れてみせる。そうすればヨアヒムの理性を突き崩すことができるだろう。自分の容姿や言葉では彼を陥落させられないのなら、もっと別のものに頼ればいい。

 かといって、レオはまだ前立腺できちんと感じられる自信はなかったし、大きすぎるものを挿れるのは怖い。小さすぎるものは一人で挿れても無事に出せる自信がなかった。そこでバイブよりも小さく、ローターよりも大きい、加えて前立腺をピンポイントで開発してくれるというエネマグラに白羽の矢を立てたのである。

 カーテンを閉め、ソファにタオルを敷いてその上に寝転がる。
 大きなソファなので、寝心地はベッドに及ばないが、夜の前にきちんとエネマグラを挿れられるか予行演習するのに問題はない。

「ヨアヒムは、確か…」

 なにしろ実践経験は一度しかないため、思い出すのはあの夜のことになる。体勢は些かキツかったが、なんとか後孔に手を伸ばすことができた。
 指を入れ、念入りにほぐしていく。指を出し入れし、偶にシワを伸ばすように触れる。段々入り口が柔らかくなってきた。

 今の所特に気持ちよさはない。

「このくらいかな」

 事務的に終えた作業を終え、エネマグラに潤滑油を纏わす。風呂で中にも仕込んでいるが、念には念を入れて、痛くないよう慎重にコトを運ぶ。
 自分の準備が良かったからか、幸いエネマグラはぬぷりと挿入された。異物感があるものの、変な気持ち悪さや体調の異変はない。

「……」

 というか、本当に何もない。気持ちよくもない。
 朝からこんなことをしていることにドキドキしている感覚はあるが、それだけだ。

「前立腺で感じたのは気のせいだったのか…?」

 初夜でのレオはヨアヒムに触れられ、後ろだけで達するほど感じ入った。しかし今日のそこはあの焦燥感も感じたことのない、脳を炙られるような快楽もない。

「ひとまず、挿れられたことでよしとするか」

 何気なく身を起こした、その時だった。

「んッ……ア…」

 体勢の変化と腹部に力を入れたことにより、体内で大人しくしていたエネマグラが前立腺を抉った。突然の強い刺激に驚いて目を白黒させる。
 内壁も衝撃にうねり、ぴくぴくと痙攣した。

 それが、更に快楽を呼び起こした。

 前立腺に吸い付くように触れているエネマグラは、内壁のうねりによって更にしこりを押し込む。そのせいで感じてまたエネマグラを締め付ける。
 気持ち良い。

 久しぶりの快感に未知への好奇心が疼く。

「アッ、あっ、…ふっ、アッ…アッ…」

 断続的にコリコリと前立腺を押し潰されると同時に、レオは控えめな喘ぎ声を溢す。
 もはやエネマグラを出そうとしていたことも忘れ、ただ下腹部に何かがじんわり溜まっていくのが嬉しかった。

「イきたい…」

 気持ちよさの波が高まっていく。
 あの日のように、また後ろでイけるかもしれない。確か、とても幸せで気持ち良かった。ここにヨアヒムがいないことは寂しいが、計画が上手くいけば今夜の彼は構ってくれるはずだ。

 彼の欲情した瞳がよぎった瞬間、レオの体は頂点に達した。

「~~! っアア! ~ッアッ!」

 びくびくと体が痙攣し、腰が少し浮き上がる。下半身に力が入り、快楽が脳を焼く。幸せでいっぱいになるレオの前立腺を、しかしエネマグラは容赦なくグリ、と押し込んだ。
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