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幸せになれるのか?
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リノが帰った後、オーレリアーノも見舞いに着たのだが、リノの超解釈がもしも、いや、ないとは思うがもしも正解だったとすると、オーレリアーノは私に好意を抱いているということになる。
リノの言葉を信じたいという馬鹿な自分がいたが、寝込んでいる間にいいことを思いついた。
お金だけの関係に終わらないために、こっちから仕掛けるのも手とのことで、私が考えたのは『手作りお菓子』である。クッキーが簡単らしいので、それに挑戦することにした。
勿論、側仕えたちに手伝ってもらうわけにはいかない。
私は元気になると、リノについてきてもらって材料の買い出しに行った。
殿方と二人で出かけるのはなんたらかんたらと言われたので、とりあえず二人側仕えを連れて買い物に出かけたのだ。
1から作りたいという、私のわがままに振り回されなければならない側仕えたちには申し訳ないが、諦めてついてきてほしい。
卵、牛乳、砂糖……。
リノにアドバイスをもらいながら作ったクッキーは、残念ながらクッキーとわかるかわからないかほどのものだったが、精一杯ラッピングした。
迷ったが、あのスカイブルーのリボンをつけて、オーレリアーノの屋敷に馬車を走らせた。
☆★☆
カルロッテが、見知らぬ男と歩いている。側仕えからの情報だったが、それを聞いたときオレには衝撃が走った。
親が決めた婚約者だ。
嫌だけど、どうしてもオレが嫌で恋人をつくるというのなら、目をつむるつもりではあった。
彼女の幸せが第一なのだから、オレが我慢すればいいことだと思ったのだ。
思っては、いたのだが。
流石にこれは。
……傷つく、なぁ。
乾いた笑みが張り付いて、オレは部屋のすみで丸くなった。
「掃除の邪魔です」
例の容赦ない側仕えの言葉がグッサリと突き刺さる。
そうだ。オレはどうせ……。
「ご主人様、来客ですよ。カルロッテ様です」
それは嬉しい知らせだが、婚約破棄かなにかの相談という可能性もある。そのときはどうしようかと泣きそうになりながらドアを開けた。
入ってきたカルロッテの手には、なにやら袋が握られており、かわいくラッピングされている。その中には、何かがあった。
黒くて、硬そうで、もしかすると食べ物かもしれないなにかだった。
相変わらずの無表情だが、ほのかに顔が赤い。
「これ、リボンのお礼に、クッキーをつくりましたので」
これ、クッキーなのか。
という意見はさておき、リボンをつけたカルロッテが見れて目が幸せだと訴えている。
「毒見します」
「いや、いい」
これがカルロッテの手作りクッキーだとしたら、それで死んでもいい。
オレは躊躇いなくそのクッキーをもらい、口の中にいれた。
土と岩の味がしたような気がした。おおよそ食べ物のものとは思えぬ匂いや食感がした。
ーーだけど、やっぱり。
☆★☆
「美味しい」
ふんわりと笑ったオーレリアーノの笑顔が眩しい。ぎゅっと胸がしめつけられる。
「リボンも似合っています。クッキー、ありがとう存じます」
ところで、とさらに切り出されてカルロッテは不思議に思った。
「あの、一緒に男と町を歩いていたらしいのですが……」
あ……。
「あれはリノといいますの。私の友達で、クッキーのレシピを教えてくれたのです。レシピ通りにしたはずなのにうまくできなかったのですが……」
それを聞いたオーレリアーノは、ため息と共に座り込んでしまった。
「そうですか……友達なら良かった……お金にしか興味がないかもしれませんが、オレは貴女のことがすきで、婚約を申し込んだので」
あ……。
カッと顔が赤くなり、私は口をパクパクさせたあとになんとか言葉を紡いだ。
「あの、私……命の次に大切なものがお金だったのですが、変わったのです」
日頃まっ正直に話すことが少ないせいで、自分の感情を素直に言葉にできない。
「そう……なのですか」
裏返った震えた声。
オーレリアーノも緊張してるようだ。
私が次に言いたいこと、わかっているのかもしれない。見ると、耳まで真っ赤だった。
お互い、余裕なさすぎる。
「……背の低い、私の婚約者」
名前を呼ぶことができなくて、最後まで素直になれなかったけど。
いつかはちゃんと、言うから。
だから、少しだけ待っていてほしい。
「オレの大切なものは、素直じゃないけどめちゃくちゃ可愛い婚約者」
スカイブルーのリボンが風に吹かれて揺れた。
リノの言葉を信じたいという馬鹿な自分がいたが、寝込んでいる間にいいことを思いついた。
お金だけの関係に終わらないために、こっちから仕掛けるのも手とのことで、私が考えたのは『手作りお菓子』である。クッキーが簡単らしいので、それに挑戦することにした。
勿論、側仕えたちに手伝ってもらうわけにはいかない。
私は元気になると、リノについてきてもらって材料の買い出しに行った。
殿方と二人で出かけるのはなんたらかんたらと言われたので、とりあえず二人側仕えを連れて買い物に出かけたのだ。
1から作りたいという、私のわがままに振り回されなければならない側仕えたちには申し訳ないが、諦めてついてきてほしい。
卵、牛乳、砂糖……。
リノにアドバイスをもらいながら作ったクッキーは、残念ながらクッキーとわかるかわからないかほどのものだったが、精一杯ラッピングした。
迷ったが、あのスカイブルーのリボンをつけて、オーレリアーノの屋敷に馬車を走らせた。
☆★☆
カルロッテが、見知らぬ男と歩いている。側仕えからの情報だったが、それを聞いたときオレには衝撃が走った。
親が決めた婚約者だ。
嫌だけど、どうしてもオレが嫌で恋人をつくるというのなら、目をつむるつもりではあった。
彼女の幸せが第一なのだから、オレが我慢すればいいことだと思ったのだ。
思っては、いたのだが。
流石にこれは。
……傷つく、なぁ。
乾いた笑みが張り付いて、オレは部屋のすみで丸くなった。
「掃除の邪魔です」
例の容赦ない側仕えの言葉がグッサリと突き刺さる。
そうだ。オレはどうせ……。
「ご主人様、来客ですよ。カルロッテ様です」
それは嬉しい知らせだが、婚約破棄かなにかの相談という可能性もある。そのときはどうしようかと泣きそうになりながらドアを開けた。
入ってきたカルロッテの手には、なにやら袋が握られており、かわいくラッピングされている。その中には、何かがあった。
黒くて、硬そうで、もしかすると食べ物かもしれないなにかだった。
相変わらずの無表情だが、ほのかに顔が赤い。
「これ、リボンのお礼に、クッキーをつくりましたので」
これ、クッキーなのか。
という意見はさておき、リボンをつけたカルロッテが見れて目が幸せだと訴えている。
「毒見します」
「いや、いい」
これがカルロッテの手作りクッキーだとしたら、それで死んでもいい。
オレは躊躇いなくそのクッキーをもらい、口の中にいれた。
土と岩の味がしたような気がした。おおよそ食べ物のものとは思えぬ匂いや食感がした。
ーーだけど、やっぱり。
☆★☆
「美味しい」
ふんわりと笑ったオーレリアーノの笑顔が眩しい。ぎゅっと胸がしめつけられる。
「リボンも似合っています。クッキー、ありがとう存じます」
ところで、とさらに切り出されてカルロッテは不思議に思った。
「あの、一緒に男と町を歩いていたらしいのですが……」
あ……。
「あれはリノといいますの。私の友達で、クッキーのレシピを教えてくれたのです。レシピ通りにしたはずなのにうまくできなかったのですが……」
それを聞いたオーレリアーノは、ため息と共に座り込んでしまった。
「そうですか……友達なら良かった……お金にしか興味がないかもしれませんが、オレは貴女のことがすきで、婚約を申し込んだので」
あ……。
カッと顔が赤くなり、私は口をパクパクさせたあとになんとか言葉を紡いだ。
「あの、私……命の次に大切なものがお金だったのですが、変わったのです」
日頃まっ正直に話すことが少ないせいで、自分の感情を素直に言葉にできない。
「そう……なのですか」
裏返った震えた声。
オーレリアーノも緊張してるようだ。
私が次に言いたいこと、わかっているのかもしれない。見ると、耳まで真っ赤だった。
お互い、余裕なさすぎる。
「……背の低い、私の婚約者」
名前を呼ぶことができなくて、最後まで素直になれなかったけど。
いつかはちゃんと、言うから。
だから、少しだけ待っていてほしい。
「オレの大切なものは、素直じゃないけどめちゃくちゃ可愛い婚約者」
スカイブルーのリボンが風に吹かれて揺れた。
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