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トイレで簡単にドレスとメイクを整えたリリアは、満面の笑みでアッシュの元に現れた。
「どう、似合ってる?」
「ああ」
「もっと褒めてよ」
「似合ってる」
まったく。愛想のなさもこれに極まれり、だ。可愛いとか、綺麗だとか、普通はお世辞でも言うだろうに。
「アッシュも似合っているわよ。さ、エスコートくらいは果たして頂戴ね」
アッシュも、流石は貴族の家の息子と言うべきか、まだ一年生だと言うのに着慣れている。エスコートも不自然さはなく、リリアのペースに合わせて歩いてくれた。
「そう言えば、私を助けに来てくれてありがとう。どうしてあの場所がわかったのか、アッシュはどうしてたのか、聞いてもいい?」
「ああ。それも含めて…舞踏会が終われば、話をしておこう」
「…そうね」
アッシュが言いたいことを全て飲み込んで、リリアの意志である舞踏会を優先してくれているのが伝わってきた。
会場のドアを開ける。
盛り上がり始めた舞踏会会場は、豪華な絨毯と音楽隊、美味しい食べ物や飲み物で溢れ、男女が中心でダンスを踊っている。シャンデリアも意気揚々と蝋燭を抱え、会場を照らしていた。
遅れてやって来た美しい一組の男女に、比較的入り口付近にいた生徒たちの視線が集まる。
その中には、レティシアとエスター、マリーナ、カイルの顔ぶれも見える。
エスターは目を見開き、確かに穴が開きそうなほどリリア達を見ているし、マリーナは嬉しそうに手を振っている。今、あちらに行けば質問攻めに合うのは明白だった。
一度目の人生はエスターの隣にいたのに、今は全く違う視点に立っている。
「リリア?」
エスターがそう呟いたのは口の動きでわかったが、応えてやるつもりはなかった。その目にとくと焼き付けておくと良い。リリアのパートナーは既にエスターではないということを。
「アッシュ、踊らないの?」
「リリア先輩は、ダンスが好きではないと聞いたのだが」
「ええ、確かに。でも、踊れないわけじゃないわよ。私のお願いに付き合ってくれた後輩を、リードするくらいの甲斐性はあるわ」
一向にダンスをしている真ん中あたりにエスコートしてくれないアッシュをせっつき、会場の真ん中に躍り出る。視界の端にいたクリスが悔し気にしながら会場を出ていくのを見ながら、リリアはアッシュの腕が自分の腰に回るのを待つ。
彼の身長は、低くはないがリリアとそれほど変わらない。ヒールを履いてこなかったのは正解だった。
「そのドレスはどうしたんだ」
今日のリリアは、アッシュの目に合わせた藍色のドレスに銀色の輝く刺繍が施された夜空色のドレス。平民も通う学園での舞踏会ということで悪目立ちを避け、大粒の宝石などは配置していないが、それだけにリリアの色気を引き立てていた。
「あら、今更褒めてくれるの? 貴方の髪色と目の色になるべく近いドレスを準備したのに、ああ、だとかに会ってる、だとかしか言ってくれなかったわよね」
「ああ」
「あのね、ここは褒めるところだから。返事をすればいいってものじゃないから。私が折角褒めやすいように言ってあげたのに」
臍を曲げた振りをすると、アッシュはふむ、と真面目腐った顔でリリアの腰を掴み、持ち上げた。
「えっ、きゃ、何するのよ」
ダンスの途中のことである。リズムは外さなかったが、そんな芸当をするのなら一言言ってほしかった。
「全身を見たかった」
密着して踊るダンスでは、あまり見ることができない。
そういうわけであるらしい。
後輩から不意打ちの要望に、リリアの顔は真っ赤に染まる。
「そ、そ、それで、全身を見た感想は?」
「うん。綺麗だ」
饒舌に褒めそやすのではなく。ただ一言、耳元で囁かれただけで、リリアの恥ずかしさはピークに達してしまった。慣れた体が勝手にステップを刻んでくれていなければ、リリアは今すぐ穴を掘って自分で埋まっていた。
「あ、貴方も格好いい、んじゃないの」
小さな声で、精いっぱいの誉め言葉を伝える。いつもなら、もっと自然に褒めることができるのに、アッシュにはペースを乱されてばかりだ。
「うん? 聞えなかった。もう一度言ってくれるか」
恥ずかしがるリリアが面白くて仕方ないのか、意地の悪い後輩は完全に揶揄うモードに入ってしまっている。クールな顔をしていながら、口元がおかしさでぴくぴく動いているのが丸わかりだ。
「言わないわよ!」
怒るリリアを宥めながらダンスをし、アッシュとリリアは一度料理を食べて一息ついた。勿論、リリアの手には上等なワインが握られている。
「うーん、これよこれ。アルコールっていいわ」
「おい、飲み過ぎても知らないぞ」
「大丈夫大丈夫。自分の限界ぐらいは弁えているから」
今はレティシアとエスターが踊っていた。酒を飲んでいないと、いきなり泣き出してしまいそうで不安だったのだが、案外なんともないものだ。もしかすると、いつの間にか本当に、リリアの中では折り合いがついていたのかもしれない。
「友人たちと話して来なくていいのか」
「…うん。私の目標は、アッシュと私のダンスを見せることで終わってるの」
こてん、とアッシュの肩に自分の頭をのせかけて、急いで飛びのく。
危ないところだった。つい癖で。お酒を飲む自分の隣には、いつだって誰かしらがついていて、甘えることに慣れている。同い年ならまだいいが、アッシュは後輩である。頼りになる先輩像を保ちたかった。
「もたれてもいいぞ」
「いい。寝ちゃいそうだから」
「そうか」
アッシュはさも納得しましたという顔をして、リリアの顔を掴み、ぐいぐいと自分の肩に押し付けようとしてくる。話を聞いていなかったのか?
「ちょ、ね、いいってば。何をしてるのよ」
「別に寝ても構わない。舞踏会が終わる前には起こす。今日は、疲れただろう」
半ば強制的に肩に顔を押し付けられ、仕方なくこの体制を受け入れることにした。朝からドレスを着て、一人でアッシュを待ち、その後クライスといざこざがあって。
確かに疲れていたらしく、平気だとばかり思っていたのにリリアの瞼は落ちていく。
「う、本当に、起こして、よ」
折角、お酒は少しに留めているのだ。自分で寮まで帰れる。後輩の手を煩わせるわけにもいかない。
寝息を立て始めたリリアをそっと眺めながら、アッシュは舞踏会が終わるまでその姿勢を保ち続けていた。
あと数十分で寮への帰宅を求められる時間。
頃合いを見計らってか、レティシアを連れたまま、エスターがアッシュ達の側にやって来た。
「あら、リリアさんったら、よっぽど寝心地がいいのかしら。よく眠ってらっしゃるわ」
とても微笑ましい物を見た、と嬉しそうにするレティシアとは対照的に、エスターの表情は硬い。そして、礼儀正しい彼にしては珍しく、アッシュへ挨拶も特になかった。舞踏会であること、エスター側が先輩なのを加味すればマナー違反ではないが、一応初対面である。
それほどに焦っていたのだろう。
「来るのが遅かったな。リリアに何かあったのか」
「エスター先輩に関係がありますか」
「ある。むしろ、ただの舞踏会のパートナーでしかない君より僕はリリアを知っているし、心配もする」
これは、かなり余裕がない。
レティシアをパートナーに迎えていることがあって、これでもすぐに問い詰めたかったのを我慢したのだろう。
アッシュは、自分の中でエスターへの対抗意識が芽生えていることに気づいた。
教えたくない。過去がどうあれ、少なくとも今日、リリアの側にいたのは自分であった。けれど、アッシュだけが処理をするよりも、目の前の男に任せた方がより重い処罰を与えられるであろうことは、何となく察せた。
「……主犯は、ライナス伯爵家の双子です」
エスターの表情が曇る。
本格的に何があったのかはわからなくとも、リリアに何かあった、という推察が裏打ちされたからだろう。
「わかった。舞踏会が終わり、レティシアさんを送り次第調査する」
「送らなくていいわよ。私も、憧れのクラスメイトに何かがあったのなら、絶対に報復したいから」
完全にリリアの保護者と化した二人は、怒りで息巻いたまますぐに会場を飛び出してしまった。
「どう、似合ってる?」
「ああ」
「もっと褒めてよ」
「似合ってる」
まったく。愛想のなさもこれに極まれり、だ。可愛いとか、綺麗だとか、普通はお世辞でも言うだろうに。
「アッシュも似合っているわよ。さ、エスコートくらいは果たして頂戴ね」
アッシュも、流石は貴族の家の息子と言うべきか、まだ一年生だと言うのに着慣れている。エスコートも不自然さはなく、リリアのペースに合わせて歩いてくれた。
「そう言えば、私を助けに来てくれてありがとう。どうしてあの場所がわかったのか、アッシュはどうしてたのか、聞いてもいい?」
「ああ。それも含めて…舞踏会が終われば、話をしておこう」
「…そうね」
アッシュが言いたいことを全て飲み込んで、リリアの意志である舞踏会を優先してくれているのが伝わってきた。
会場のドアを開ける。
盛り上がり始めた舞踏会会場は、豪華な絨毯と音楽隊、美味しい食べ物や飲み物で溢れ、男女が中心でダンスを踊っている。シャンデリアも意気揚々と蝋燭を抱え、会場を照らしていた。
遅れてやって来た美しい一組の男女に、比較的入り口付近にいた生徒たちの視線が集まる。
その中には、レティシアとエスター、マリーナ、カイルの顔ぶれも見える。
エスターは目を見開き、確かに穴が開きそうなほどリリア達を見ているし、マリーナは嬉しそうに手を振っている。今、あちらに行けば質問攻めに合うのは明白だった。
一度目の人生はエスターの隣にいたのに、今は全く違う視点に立っている。
「リリア?」
エスターがそう呟いたのは口の動きでわかったが、応えてやるつもりはなかった。その目にとくと焼き付けておくと良い。リリアのパートナーは既にエスターではないということを。
「アッシュ、踊らないの?」
「リリア先輩は、ダンスが好きではないと聞いたのだが」
「ええ、確かに。でも、踊れないわけじゃないわよ。私のお願いに付き合ってくれた後輩を、リードするくらいの甲斐性はあるわ」
一向にダンスをしている真ん中あたりにエスコートしてくれないアッシュをせっつき、会場の真ん中に躍り出る。視界の端にいたクリスが悔し気にしながら会場を出ていくのを見ながら、リリアはアッシュの腕が自分の腰に回るのを待つ。
彼の身長は、低くはないがリリアとそれほど変わらない。ヒールを履いてこなかったのは正解だった。
「そのドレスはどうしたんだ」
今日のリリアは、アッシュの目に合わせた藍色のドレスに銀色の輝く刺繍が施された夜空色のドレス。平民も通う学園での舞踏会ということで悪目立ちを避け、大粒の宝石などは配置していないが、それだけにリリアの色気を引き立てていた。
「あら、今更褒めてくれるの? 貴方の髪色と目の色になるべく近いドレスを準備したのに、ああ、だとかに会ってる、だとかしか言ってくれなかったわよね」
「ああ」
「あのね、ここは褒めるところだから。返事をすればいいってものじゃないから。私が折角褒めやすいように言ってあげたのに」
臍を曲げた振りをすると、アッシュはふむ、と真面目腐った顔でリリアの腰を掴み、持ち上げた。
「えっ、きゃ、何するのよ」
ダンスの途中のことである。リズムは外さなかったが、そんな芸当をするのなら一言言ってほしかった。
「全身を見たかった」
密着して踊るダンスでは、あまり見ることができない。
そういうわけであるらしい。
後輩から不意打ちの要望に、リリアの顔は真っ赤に染まる。
「そ、そ、それで、全身を見た感想は?」
「うん。綺麗だ」
饒舌に褒めそやすのではなく。ただ一言、耳元で囁かれただけで、リリアの恥ずかしさはピークに達してしまった。慣れた体が勝手にステップを刻んでくれていなければ、リリアは今すぐ穴を掘って自分で埋まっていた。
「あ、貴方も格好いい、んじゃないの」
小さな声で、精いっぱいの誉め言葉を伝える。いつもなら、もっと自然に褒めることができるのに、アッシュにはペースを乱されてばかりだ。
「うん? 聞えなかった。もう一度言ってくれるか」
恥ずかしがるリリアが面白くて仕方ないのか、意地の悪い後輩は完全に揶揄うモードに入ってしまっている。クールな顔をしていながら、口元がおかしさでぴくぴく動いているのが丸わかりだ。
「言わないわよ!」
怒るリリアを宥めながらダンスをし、アッシュとリリアは一度料理を食べて一息ついた。勿論、リリアの手には上等なワインが握られている。
「うーん、これよこれ。アルコールっていいわ」
「おい、飲み過ぎても知らないぞ」
「大丈夫大丈夫。自分の限界ぐらいは弁えているから」
今はレティシアとエスターが踊っていた。酒を飲んでいないと、いきなり泣き出してしまいそうで不安だったのだが、案外なんともないものだ。もしかすると、いつの間にか本当に、リリアの中では折り合いがついていたのかもしれない。
「友人たちと話して来なくていいのか」
「…うん。私の目標は、アッシュと私のダンスを見せることで終わってるの」
こてん、とアッシュの肩に自分の頭をのせかけて、急いで飛びのく。
危ないところだった。つい癖で。お酒を飲む自分の隣には、いつだって誰かしらがついていて、甘えることに慣れている。同い年ならまだいいが、アッシュは後輩である。頼りになる先輩像を保ちたかった。
「もたれてもいいぞ」
「いい。寝ちゃいそうだから」
「そうか」
アッシュはさも納得しましたという顔をして、リリアの顔を掴み、ぐいぐいと自分の肩に押し付けようとしてくる。話を聞いていなかったのか?
「ちょ、ね、いいってば。何をしてるのよ」
「別に寝ても構わない。舞踏会が終わる前には起こす。今日は、疲れただろう」
半ば強制的に肩に顔を押し付けられ、仕方なくこの体制を受け入れることにした。朝からドレスを着て、一人でアッシュを待ち、その後クライスといざこざがあって。
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とても微笑ましい物を見た、と嬉しそうにするレティシアとは対照的に、エスターの表情は硬い。そして、礼儀正しい彼にしては珍しく、アッシュへ挨拶も特になかった。舞踏会であること、エスター側が先輩なのを加味すればマナー違反ではないが、一応初対面である。
それほどに焦っていたのだろう。
「来るのが遅かったな。リリアに何かあったのか」
「エスター先輩に関係がありますか」
「ある。むしろ、ただの舞踏会のパートナーでしかない君より僕はリリアを知っているし、心配もする」
これは、かなり余裕がない。
レティシアをパートナーに迎えていることがあって、これでもすぐに問い詰めたかったのを我慢したのだろう。
アッシュは、自分の中でエスターへの対抗意識が芽生えていることに気づいた。
教えたくない。過去がどうあれ、少なくとも今日、リリアの側にいたのは自分であった。けれど、アッシュだけが処理をするよりも、目の前の男に任せた方がより重い処罰を与えられるであろうことは、何となく察せた。
「……主犯は、ライナス伯爵家の双子です」
エスターの表情が曇る。
本格的に何があったのかはわからなくとも、リリアに何かあった、という推察が裏打ちされたからだろう。
「わかった。舞踏会が終わり、レティシアさんを送り次第調査する」
「送らなくていいわよ。私も、憧れのクラスメイトに何かがあったのなら、絶対に報復したいから」
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