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はじまりの一日

第十八話 なんでもするよ

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「借りを返すって言われても……」

 うーん。

「かみーゆ、なんでもするよ」

 なんでも?
 今、なんでもって言ったかしら?

「ふふふ……わたしのカミーユ愛をなめないでくれる?うふふうふうううううふふふふふふ」

「ひぃっ!?」

 青ざめてドン引きするカミーユ。
 腕まくりしようとしたわたしに、突如一本の剣が向けられた。

「エリザベート様」

 いつになく冷ややかなローズの瞳。
 これは……軽蔑されている?

「ち、違うのよローズ。もちろん、カミーユだけにさせるつもりじゃないわ。ローズもカミーユもぜひ猫耳メイドになっていただい……」

 しどろもどろに弁解を初めたわたしに、無言で正義の剣が振り下ろされる。

「うわぁっ!死ぬ!死んじゃうわよ!」

 さっきの忠実なローズが懐かしいっ。
 主を殺したなんてツンデレどころじゃすまないのに……。

「エリザベート様の言動には時折淑女らしからぬものがまじっていると思っていました」

 時折、ね。
 うん。おそらく結構頻繁にまじってるんだけど、というか主成分がそっちなんじゃないかってくらいにまじってるけど。

「どこで下町のような知識を仕入れたのかは知りませんが、いい機会です。その知識の部分をすっぱり切っておきましょう」

 あれ?
 知識って散髪みたいにさくっと切れるものだったっけ?

「おそらく、その知識はこのあたりに蓄積されているものだと思います」

 す、と脳の一部を指差すローズ。
 その表情はいつにも増して無表情。

「待って待って。それ死んじゃう!死んじゃうってば!」

 脳って、都合のいいところだけ切り取れるようにできてないから!

「それで?カミーユ様には何をしていただくんでしたっけ?」

 ローズと一緒に猫耳メイド……は却下なんだよね。

「えっと……もしよろしければ、わたしの友達になってください」

 友達から始めましょう。
 それでゆくゆくは、美幼女が美少女に成長していくさまをじっくりと見られたらと思いますです。

「ともだち……」

 ぽつりと呟くカミーユ。
 その頬に、徐々に赤みがさしてきた。

「なってくれる?」

 わたしがおずおずと差し出した手を、カミーユはしっかりと握ってくれた。

「これで、えりざべーとはわたしのともだちだからね!」

 花が咲いたような笑みに、わたしは幸福感を覚えた。同時に、カミーユが握ったわたしの手がつぶれそうなのも感じた。

 そうだった。
 カミーユは、怪力なんだった。

「よろしくね、えりざべーと」

「よろしく、カミーユ」

 ふむ。
 手が潰れても、この笑顔が見られるならいいや。
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