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はじまりの一日
第七話 タトゥー
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わたしは、まじまじと自分のタトゥーを見つめる。
これに、何か意味があったなんて考えたこともなかった。
物心ついたときからそこにあったのだから。
いくら好奇心旺盛な子供でも、「なぜ自分に手があるのか」なんてことは考えない。生まれたときからそういうものだと受け入れているからだ。
だから、わたしはこのタトゥーに何の疑問も抱いていなかった。
「タトゥーについて詳しいことを話そうとすれば、この世界の歴史やらなんやらを掘り起こさないといけない。それくらい深くて面倒くさいものだ。二人が知らないのも無理はないけど、このタトゥー、平民にはついていないんだよ」
これが?
下町に住んでいる人達には、これがないのか……。
「下流貴族以上はタトゥーがついている……これは、『魔力を持っている証』だからね。平民には魔力がない」
ふぅん。
いまいちピンとこないけど、そういうものなのかな。
こっそりとフレデリックの横顔を伺うと、なにやら考え込んでいた。
いつも考えなしの彼らしくない。
「魔法学校では、魔力の扱い方を教わるんだ」
魔力の扱い方、ねぇ。
「兄様」
黙りこんでいたフレデリックが急に口を開いた。
「俺は、魔法を使っている人を見たことがありません。どうしてですか?扱い方を習うんですよね?」
それに、ベルトラン様は困った顔になる。
「扱い方、というか。魔力をできるだけ使わない方法を習うんだよ。そーゆーことは、魔法学校で聞きなさい」
あまり答えたくないことなのかもしれない。
ベルトラン様の陽気さが少し崩れる。
「あの、そういえば」
なんとなく重くなってしまった空気を払拭するために、わたしはできるだけ明るい声で質問した。
「これって、結構大切なことですよね?もっと早くお母様とかが教えてくれたりしないんですかね?わたし、もっと早く知りたかったです」
魔法っていう、わくわくすること。
そんな力がわたしの中にもあるなんて、すごいことだもん。
「……普通は、もっと早くに知っていることだよ。タトゥーや魔法についての最低限の知識は、両親から教えてもらえることになっているからね」
普通は?
「不思議に思ったことはないか?多くの貴族がいるのに、なぜフレデリックの婚約者はエリザベートなのか。なぜ、第二王子のフレデリックが王位継承権第一位なのか」
あはは……そういう小難しいことは苦手なもので。
わたしは、ゆっくりとローズを振り返る。
ローズなら、わたしの親から何か聞いているかもしれない。
だが、そこには全くわからないのだろう、遠くを見つめる無表情美女の姿があった。
これに、何か意味があったなんて考えたこともなかった。
物心ついたときからそこにあったのだから。
いくら好奇心旺盛な子供でも、「なぜ自分に手があるのか」なんてことは考えない。生まれたときからそういうものだと受け入れているからだ。
だから、わたしはこのタトゥーに何の疑問も抱いていなかった。
「タトゥーについて詳しいことを話そうとすれば、この世界の歴史やらなんやらを掘り起こさないといけない。それくらい深くて面倒くさいものだ。二人が知らないのも無理はないけど、このタトゥー、平民にはついていないんだよ」
これが?
下町に住んでいる人達には、これがないのか……。
「下流貴族以上はタトゥーがついている……これは、『魔力を持っている証』だからね。平民には魔力がない」
ふぅん。
いまいちピンとこないけど、そういうものなのかな。
こっそりとフレデリックの横顔を伺うと、なにやら考え込んでいた。
いつも考えなしの彼らしくない。
「魔法学校では、魔力の扱い方を教わるんだ」
魔力の扱い方、ねぇ。
「兄様」
黙りこんでいたフレデリックが急に口を開いた。
「俺は、魔法を使っている人を見たことがありません。どうしてですか?扱い方を習うんですよね?」
それに、ベルトラン様は困った顔になる。
「扱い方、というか。魔力をできるだけ使わない方法を習うんだよ。そーゆーことは、魔法学校で聞きなさい」
あまり答えたくないことなのかもしれない。
ベルトラン様の陽気さが少し崩れる。
「あの、そういえば」
なんとなく重くなってしまった空気を払拭するために、わたしはできるだけ明るい声で質問した。
「これって、結構大切なことですよね?もっと早くお母様とかが教えてくれたりしないんですかね?わたし、もっと早く知りたかったです」
魔法っていう、わくわくすること。
そんな力がわたしの中にもあるなんて、すごいことだもん。
「……普通は、もっと早くに知っていることだよ。タトゥーや魔法についての最低限の知識は、両親から教えてもらえることになっているからね」
普通は?
「不思議に思ったことはないか?多くの貴族がいるのに、なぜフレデリックの婚約者はエリザベートなのか。なぜ、第二王子のフレデリックが王位継承権第一位なのか」
あはは……そういう小難しいことは苦手なもので。
わたしは、ゆっくりとローズを振り返る。
ローズなら、わたしの親から何か聞いているかもしれない。
だが、そこには全くわからないのだろう、遠くを見つめる無表情美女の姿があった。
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