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続・婚約破棄から始まる農業王国作り22
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「アイリーン」
グラッツが、わたしの肩に手を置いた。
そのぬくもりに、わたしは笑ってしまう。
そのぬくもりがどれほどありがたいものか、知っているから。
「……」
ペトラは、何も言わなかった。だけど、笑っている。無理矢理笑っていることはわかっている。足が震えているのだ。勇気のある子ではあるが、それでも怖いものは怖いのだろう。
「……あの、アイリーン様」
ペトラは、震えた声でわたしの名前を呼んだ。話す余裕があるとは、思ったよりも勇気がある。
「この無茶苦茶な計画でなければわたしも怖くないのですが……どうにかなりませんか?」
ふむ。
「わたしだって、もうちょっとマシな計画を思い付きます。せめて……」
「ありがとう、ペトラ。でも、大丈夫よ。わたしには、グラッツがいる。ペトラがいる。なんだって怖くないわ」
「いえ、アイリーン様が怖くなかろうとわたしが怖いのです」
そういうものかね……。
よくわからんな。
「心配するな。例えアイリーンが盛大に失敗したとしても、後片付けする人が存在する」
失敗する可能性、そんなに高いかなぁ……。
「その後片付けをする人って、わたしたちじゃないですか」
ペトラのため息が痛い。
グラッツはそれを否定しない。
うう……。
ひどいなぁ。
「でも、俺は信じてるんだぜ」
きゅっとグラッツがわたしのほうを見て目を細めた。
「信用してるんですね……」
ペトラが感心したように目を見開いた。
「信用じゃない。信頼してるんだ……家族だからな」
家族。
その言葉に、わたしはどれだけ助けられただろう。
そして、今も。
助けられている。
「……家族、ですか」
わたしは、二人の顔を交互に見た。
「じゃあ、作戦スタート!」
きっと、その作戦は何よりも幼稚で。
笑ってしまうほど、バカなもので。
そんなもので戦争を止められるのなら、誰もが実行するよ、と否定したくなるようなもので。
平和を甘くみているのか。
戦争を甘くみているのか。
でも、もしもこの作戦が成功したら。
それは、わたしの手柄ではない。きっと、ペトラやグラッツだけじゃなくて。敵味方全員の手柄なのだろう。こんなにもバカらしい計画にのってくれてありがとう。
心からそう言いたいほどに。
まだ、わたしは知らない。
自分がどれほど無知なのかーー。
グラッツが、わたしの肩に手を置いた。
そのぬくもりに、わたしは笑ってしまう。
そのぬくもりがどれほどありがたいものか、知っているから。
「……」
ペトラは、何も言わなかった。だけど、笑っている。無理矢理笑っていることはわかっている。足が震えているのだ。勇気のある子ではあるが、それでも怖いものは怖いのだろう。
「……あの、アイリーン様」
ペトラは、震えた声でわたしの名前を呼んだ。話す余裕があるとは、思ったよりも勇気がある。
「この無茶苦茶な計画でなければわたしも怖くないのですが……どうにかなりませんか?」
ふむ。
「わたしだって、もうちょっとマシな計画を思い付きます。せめて……」
「ありがとう、ペトラ。でも、大丈夫よ。わたしには、グラッツがいる。ペトラがいる。なんだって怖くないわ」
「いえ、アイリーン様が怖くなかろうとわたしが怖いのです」
そういうものかね……。
よくわからんな。
「心配するな。例えアイリーンが盛大に失敗したとしても、後片付けする人が存在する」
失敗する可能性、そんなに高いかなぁ……。
「その後片付けをする人って、わたしたちじゃないですか」
ペトラのため息が痛い。
グラッツはそれを否定しない。
うう……。
ひどいなぁ。
「でも、俺は信じてるんだぜ」
きゅっとグラッツがわたしのほうを見て目を細めた。
「信用してるんですね……」
ペトラが感心したように目を見開いた。
「信用じゃない。信頼してるんだ……家族だからな」
家族。
その言葉に、わたしはどれだけ助けられただろう。
そして、今も。
助けられている。
「……家族、ですか」
わたしは、二人の顔を交互に見た。
「じゃあ、作戦スタート!」
きっと、その作戦は何よりも幼稚で。
笑ってしまうほど、バカなもので。
そんなもので戦争を止められるのなら、誰もが実行するよ、と否定したくなるようなもので。
平和を甘くみているのか。
戦争を甘くみているのか。
でも、もしもこの作戦が成功したら。
それは、わたしの手柄ではない。きっと、ペトラやグラッツだけじゃなくて。敵味方全員の手柄なのだろう。こんなにもバカらしい計画にのってくれてありがとう。
心からそう言いたいほどに。
まだ、わたしは知らない。
自分がどれほど無知なのかーー。
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