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続・婚約破棄から始まる農業王国作り2

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「というわけだから、アルバート王国に潜入するのを手伝ってくれないかしら」

 ででーん。

「いやいやいや。さっきの説明でこれっぽっちも理解できなかったんだが」

「あら、口答えするのかしらグラッツ。このわたしに向かって!」

 わたしがどんっと胸を張ると、グラッツは呆れたようにため息をついた。

「お前アイリーン……妃になった途端に偉ぶりやがって」

 妃になる前からグラッツより偉かったんだけどね、わたし。ついでに、グラッツの命の恩人みたいなものでもあるんだよ?わたしをさらったグラッツを庇ってあげたんだから。

「で、どこが理解できなかったの?貴方みたいに脳みそが人より足りない人に説明しなくちゃいけないというのはわたしも災難だわ……」

「オレは、この意味不明な妃と出会ってしまった世界で一番可哀想な奴だという自覚があるな」

 えー。
 ひどいなー。
 アイリーン傷ついちゃうー。

「農業の危機なのよ」

「いや、さっきの説明だと農業というより国の危機だったけどな」

 そうとも言う。

「わかってるんじゃない」

「いや、理解できなかったのは、そのあとだ。どうしてオレが、お前のアルバート王国潜入を手伝わなきゃいけないんだ?」

 そりゃあ。

「実は、わたしグラッツ以外に友達がいないの」

「オレはお前のこと友達だと思ったことないからな!?」

 あらいやだ。グラッツったら照れちゃって。(本音です)

「まぁ、それもあるのだけど」

「あるのかよ!?」

 あるんです。わたしはぼっちなのでした。

「とにかく、グラッツっていったら幼女誘拐、幼女誘拐といったらグラッツと言われるグラッツなら、兵士の目をくぐり抜けるのは得意でしょ」

「そんなことは言われたことないし、幼女限定で誘拐していたわけではない」

 あれ。そうだったっけ。

「で、協力してくれるの?」

「嫌だと言ったら?」

「農業の正義のため、えっと……でこぴんしてあげる」

 思い付かん。
 罰なんて思い付かん。

「あはは……ほんと可愛いなお前」

「うえっ……変態に可愛いって言われた」

「おい」

 あははー。

「一人で行かせるよりマシか……お前のおかげで、貴族や王族ってのも、嫌な奴ばかりじゃないんだってわかったしな。いいぜ、協力してやる」

 グラッツは、ニヤリと笑った。

 青い空の下、わたしたちは農業のために戦うことを誓った……。
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