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四章
雷鳴
しおりを挟む天界での生活は、流文にとってはかなり退屈なものだった。
「貴方に、仕えさせていただけませんか」
そう言って清江に詰め寄ったのは、邸に身を寄せた日の夜だったのだが、申し出はあっさりと却下された。なぜなら、仕えるほどに仕事がないからだという。
その日のうちは、清江が遠慮して言うのだろうと思っていたのだが、次の日になって、どうもそれが正直なところであると気が付いた。
流文もそうだが、基本的に食べるという習慣がない。だから、食事を作る必要もなければ、片づけもいらない。
天界は清浄に保たれているので、掃除もあまり必要がない。庭の花さえ滅多に枯れないので、落ち葉も発生しないのである。せいぜい衣を洗濯する程度が、いわゆる家事にあたる用事で、それは流文が請け負うことになったのだが、他にすることと言えば、……残念ながら、これといって見当たらなかった。その唯一の洗濯も、これまで清江はどうしていたかと言えば、もともとが念で作られたものなので、新しくしたければ新しい衣を生み出せばいい、という生活だったようだ。そういえば清江の容姿や見た目にしては少し地味目な衣装だと思ってはいたが、どうも本人の好みであるらしい。しかし趣味は悪くない。
大昔はここには一人侍女がいたのだというが、やはり身を粉にして働くものではなく、話し相手と、せいぜい身の回りの整頓、来客の応対程度の役割だった。だから、何の理由でかは語られなかったが、それが出て行ってからは、清江一人で広大な邸で暮らしているのだが、まったく不自由はなかったということだ。
じゃあ、清江は普段何をして過ごしているのかと問えば、特に何も、と答える。
天上してすぐは、後から来た神を指導したり、天界の警護やなんやと言いつけられることがあったが、天界に神が多くなるにつれ、ただここにいて地上を見守る時間のほうが多くなったのだそうだ。暇ではないかと言ったが、神などそういうものだといって片づけられた。天界を支える天帝の力を支える神気を提供しているという役割もあるため、そこにいることが重要なのだという。
もちろん、刺激のない生活が嫌でしょっちゅう地上に降りる神もいるし、天界でも秘境に赴いて更なる修行をする神も多いが、古いだけで神気が増幅していく清江くらいになると、天地の平穏を守るごとく静かに暮らすだけでいいのだそうだ。
流文はそんな話を聞き、さすがにそれでは退屈に過ぎると思った。地上でも、一か所で修行に籠るのが我慢ならずに旅をしていたくらいだ。もしこのまま天界で過ごせるようになっても、やはり地上との行き来を絶やすことはできないと思うが、今はそれが自由にできないので、当面どうしたものかと頭を悩ませた。
自分でできるとは言われるものの、清江の身の回りの世話はする。着替えを手伝ったり、髪を結い上げたりだ。それが終わると途端に保ち無沙汰になり、流文は整いすぎた風情の庭を、とりあえず散歩することにした。
外に出ると、昨日と同じうららかな春の日差しが降り注ぎ、心地が良い。天界では季節はないがたまに雨が降ることはあるらしいので、それはいつになることだろうと、この変化の少ない環境でのんびりと思った。
頭上を、黄色い鳥がチイと鳴いて飛んで行った。一羽だけで一体どこに向かうのやらと思って見上げていると、門の辺りに誰かの気配がする。どうも、それに驚いて鳥は飛び立ったようだ。
「はーい!」
要らぬと言われながらも、一応仕えてはいるつもりの流文は、自分が応対するべく、その気配に向かって返事をした。
「あん? なんだ?」
返ってきたのは、そんな怪訝そうな声と、見たことのない青年の姿だった。
「あの、御用でしょうか」
流文は問いかけたが、目を丸くしてから観察するように流文を眺める青年は、返答する気はないらしい。
どうだろう、年頃は清江に似たくらいの男である。袖口の引き締まった服に、ごつい皮の帯をしめているが、武器は伴っていないようだ。身に着けているものが質の良いものだということは見てすぐにわかる。豪快な雰囲気をまとい、腕組みで値踏みするように流文を見てくる、これもまた神だろうか。
「主に御用ですか」
重ねて問うと、男はガハハと口を開けて笑った。これもまた美形の類ではあるが、清江の持つしっとりとした上品さはなく、男ぶりがよく人懐っこさを感じる。まあ、ちょっと遠慮はなさそうだ。
「お前、なんでここに居る? あいつ、小姓なんて抱え始めたのか?」
あいつ、がここでは清江を指すのは確実だろう。問題は、彼を「あいつ」扱いするこの男は何者かということだ。物静かな清江があまり好みそうな相手ではないように思う。招かれざる客ならば、自分が追い払うべきかと考えた。その間も、やはり男は物珍しそうに流文を見つめ、眺めしている。
「私は、故あって当面の間だけ、ここに住まわせていただいている者です。あなたは、ここの主とはどういったご関係の方でしょうか。それがわかるまでお通しすることはできかねます」
威嚇するつもりはないが、どこか棘のある言い方をしてしまった。この手合いには強気で行く方がいいというのは、長年人の世で培った経験による見解だ。
「まあまあ姉ちゃん、そう警戒すんな。俺はあいつの昔馴染みだ。どうせ俺が来たのだって気づいているくせに出迎えもしねえ、それくらいの仲だよ。取って食いにきたんじゃあない」
「そう、でしたか。失礼を申し上げました」
姉ちゃんとあっさり言われてしまったことには、今は目をつむることにする。清江の知り合いならば間違いなく神だ。しかも、古い。ぞんざいに扱うわけにはいかない相手ということである。
「では……」
清江を呼ぼうかと言いかけて、本人が邸内から出てきたのが見えた。
苦い表情に、どうもあまり好ましい状況ではないのだということだけは分かった。
「流文。ご苦労だった。しかしこれはわざわざ応対するほどの相手ではない。君は散歩でもしてきなさい」
「いえ、お客様ならお茶でもお淹れしましょう」
「その必要は……」
「いただこうか!」
清江との会話に、男は嬉々として割って入る。どうやらこれは、清江を困らせるためにやっているようだ。
「貴様……」
清江の渋顔が濃くなった。せっかくの白い眉間に皺が刻まれる。しかも、この清江の口から、「貴様」。
「せっかくおもしれえネタがあるんだ。詳しく聞かせてもらわねえとな。姉ちゃん、茶菓子はあるか?」
しつこいようだが、神もものを食すことはできる。必ずしも必要ではないというだけだ。だが、まだここに来たすぐの流文には適当な菓子があるかまでは把握できておらず、少々焦ったが、急いで厨に向かおうとした流文を清江が止めた。
「なければないでいい。いつもは茶など出さん」
「え、それどうなんです?」
「まあ、いいから。お茶だけでいい。準備をしてくれるか」
門前払いにしないということは、やはり男が言うように、親しい仲ではあるらしい。やっとできた自分の仕事に、流文もひそかに気を良くした。
流文は二人を置いて小走りに厨に飛び込むと、ほとんど物のない棚の真ん中に、申し訳なさそうに置かれた茶筒を見つけた。菓子は、やはりどこにもなさそうだ。あまりにも物がないので探すまでもない。
竈で湯を沸かし、一揃えだけの茶器に葉を入れ、蓋をすると、しばらくの間に上品な香りが立ち上った。
それを盆にのせて応接間に運ぶと、もう二人は席に着き、ほぼ一方的に男が清江に話しかけていた。
「で、どうした蛇。久しぶりに来てみたら、珍しいものを飼ってるじゃねえか」
「飼ってはおらん」
愛想なく返す清江の声は、低い。しかも、冷たいながらどこか苛立ちを感じさせるものだ。これは今までに聞いたことがない。
「人間だろ、あれ」
あれ、と言われた流文は、話の邪魔にならぬように気を付けながら、二人に茶を差し出した。
それに、清江は一度手を伸ばしたが器が熱かったのかまた卓の上に戻したが、男はアチチと言いながら指でつまんで口元に運び、ずっとすするように飲んだ。何をするにも豪快な男だ。
「天仙だ」
清江の説明は、ごく短い。寡黙なのもあるが、たぶん男の相手をめんどくさがっている。
「んなもん、またなんで飼い始めた? 気が変わったのか」
「飼ってはおらんと言っている」
「じゃあ、なんだ」
「彼の方に事情があるんだ。少し協力している」
「へー。小姓か」
「話を聞いていたか? 小姓などではない」
「囲ってやってんだろ? ずいぶん可愛い小姓じゃねえか。前よりは大人しそうだ。あんたにはそれくらいがちょうどいいんじゃないか」
「余計なことを言うな!」
男の言葉には、いろんな「前提」があるようだ。おかげで流文にはさっぱり話が理解できない。しかしよくよく聞きかじってみると、少しだけその前提が整理されてくる。
流文の前にも、ここには誰かがいた。多分すでに聞き知っている侍女とは別の、少年か青年。それを、この男が「小姓」と呼び、それを含めて清江は否定している、というところだろうか。
小姓というものの扱いは、幅広い。しかしだいたいは、年上の主人に仕えて身の回りの世話をし、夜の相手にもなる。さて、清江はもちろんそういう意味も含めて流文がそれではないと否定してくれたわけだが、なぜ男はわざわざそういう言い方にこだわったのか。
当然、気にならないわけがなかった。しかし、もちろん流文が口を挟むことはできない。
「小姓じゃなきゃ、何なんだよ? ここ千年の珍事だぜ、あんたが誰かを抱え込むなんてさ」
千年の珍事、誰かを抱え込む。男の口ぶりでは、ことごとく「そっち」に話を持って行きたいらしい。しかも、さっきから清江を蛇呼ばわりである。
もう、この先を聞かずに席を外すという選択は好奇心に勝るはずもなく、流文はおよそ清江には似つかわしくない言葉の数々の飛び交うこの場を、離れることができなくなった。
「煩い黙れ。お前が口を開くとろくな事がない」
「喜んでんだよ。既知としてはな。もう千年一人だったろ、あんた。やっとちょっとは成長したみたいだな」
「黙れと言っている!」
「照れてんのかよ、柄じゃねえな!」
徐々に口調を荒げ、最後はほぼ怒鳴るほどの清江に、男は可笑しそうに派手に笑うだけだ。こういう性格は、清江のような繊細そうな者には合わないのだろうが、この類になぜか好かれがちなのも、確かなのだろう。それは人も神も同じ。
ハアと、聞こえるように清江がため息をつく。その後、どうにもきまり悪げな顔で、彼は流文を見た。助けを求めているのでもなさそうだが、もう降参だと音を上げたのであるらしい。
「えっと、……この方は?」
ここで、流文がそれを問うのは間違っていなかったと思う。なにせ、男が盛大に清江をからかっている、その餌が流文なのである。
「同じ日に天上した、昔馴染みだ。雷神で、天鳴という。こんな男だが、私と同格の神だ」
「こんなとは失礼だな」
雷神と紹介された男は、すかさずの突っ込みである。この迅速さ、さすがと言っていいだろう。水神に雷神とは、思えば苦労するのが清江なのは自然の理であるようだ。
「んで、この姉ちゃんは?」
さも楽し気に、天鳴が言った。ずいと身を乗り出し、食いついてきそうだ。
「向流文。天上してきた、天仙だ。事情があってここに住まわせている。決して、小姓ではない」
わざわざそこを強調するから、なんだか可笑しい。ふっと笑いかけたが、そこに天鳴が直接流文に問いかけてきた。
「そうなのか?」
反応を見るのが目的だろう。清江が否定しても、ここで流文が微妙な態度をとれば、また天鳴を喜ばせてしまうに違いない。
「……ええ。そういうのとは違います。あまり清江に不名誉なことは仰らないで差し上げてください」
「おっしゃらないで差し上げてって、舌噛みそうなことよく喋れるな」
「まあ、私など足元にも及ばない方ですから。つまり貴方様もですよね」
「まあな。これでも年寄りではある。その年寄りが言うんだけどな、蛇が誰かを傍に置くのは千年ぶりだぞ。けっこう貴重だ。天仙なんぞがまたなんで、こんな奴の世話になってる? 悪いが居心地は俺んとこのほうがいいぞ、たぶん」
「えっと、……」
この三行ほどの台詞に詰め込まれた情報が多すぎて、どこにどう相槌を打って良いのかもわからない。
「天鳴。流文を困らせるな。ひとには事情というものがある。貴様は無神経に過ぎるんだ、何事にも」
「その事情ってのが気になるじゃないか。なにせ、お前みたいな陰気な蛇神に、こんな可愛い仙人だぜ? しかも小姓じゃないと来た。興味持つなってほうが無理だろう」
「だから……」
うんざりと口を開いた清江の言葉を、流文がすくい上げて後を継いだ。
「私、天仙なのだそうなんですが、自力で天上できないでいるんです。そこを、清江が天帝に口添えをしてくださって、原因というか理由を調べてもらっています。本当ならまだ天界にはいられない身の上なのですが、詳しいことがわかるまで、清江の神気をお借りして、ここにいさせていただいているというわけです」
「正直に言わずとも」
「はっきり分かった方がいいじゃないですか。あなたも、私を気に入って小姓にしているみたいに思われてはお困りでしょうし」
「……」
天鳴の相手は多少なり流文の方がうまいとようやく悟ったらしい清江は、ここでいくぶん抵抗を諦めたようだった。ふうと息をつき、後は任せたとばかりのばつの悪そうな視線を投げかけてきた。
「なるほどな。こいつ、変に律儀だから、放っておけなくなったんだな。しかも、可愛いし」
「あのですね。可愛い可愛いと仰いますが、私など神々に比べれば凡庸な顔ですし、一応男です」
「あ、わかんねえ? 小姓になら俺が欲しいって言ってんだけど」
「はい?」
「天鳴! 虐めるな」
あまりに気になるやり取りには、清江は口を出すようだ。またもや三人での応酬に戻ってしまった。
「へいへい。今のは冗談だ。俺は女の方がいい。あんたせっかく俺好みなのに、男だもんな。女に変化させるのもかわいそうだし」
「それはご勘弁を」
「天鳴。それくらいにしておけ。貴様と馴染みというだけで、私の品格が疑われる」
「そうか? 俺と似たり寄ったりか、それ以上だろ? 龍神様?」
「お前を滝壺に叩き落してやりたい」
「できるもんならやってみな」
「……で、何をしに来た。用があったんじゃないのか」
「いんや。暇つぶし」
「直ちに帰れ」
「と、一個だけ」
「何だ」
「あんたがこの子の世話をしてるから話は来ないかもしれんが、気になることを聞いたんでな」
「早く言え!」
ここまでくると、神も仙も人も同じだ。そう流文は思った。清江はともかく、この絶妙な呼吸で繰り広げられる会話を、天鳴も流文も楽しんでしまっている。もちろん、なんだかんだで清江の反応が面白いからである。
だが一息がついて、天鳴が急に真面目な話を持ち掛けてきたことは、流文にもわかった。
「最近、風が暴れてんだとさ。地上で」
「……」
「新しい神が生まれるんじゃないかって噂。竜巻なんかあったら土地が荒れるからな。風神はどこに現れるか分からんし、お前んとこの流域にも影響あるかもな場所だ」
「そうか。覚えておこう」
すっと、清江のまとう気が冷えたような気配がした。それを、天鳴も感じ取ったらしい。
「そんな暗い顔すんなよ。風神なんてどこにでもいるだろ。古今東西な」
「わかっている」
ふと見せた清江の顔と、それを揶揄うではなく気遣うように見た天鳴の一瞬の表情が気になった。しかし、そこに気を向けていられなかったのは、天鳴が急に流文の腕を掴んで引き寄せたせいだった。
「なにを……!」
するのだと言った流文に天鳴が顔を近づけたので、頬に口づけられるのではと身構えたが、違った。
「なんかあったら言え」
そう、声にもならないような囁きを耳に注がれ、違う意味で流文は戸惑った。
今のは……。
「あいつに襲われたら、どんな具合だったかも教えろよ」
「ちょ……!」
「おい、いい加減にしろ」
あからさまに清江が怒って、天鳴は手を離した。
「だってよ、この子かわいいんだもんよ」
ふざけたように言った声は、今耳打ちした硬い声とは全く違って、それが意図されたものだということがわかった。
なにか……。それが何を指すのかはわかるはずもない。ただ、明らかにそれは
一つの警告だった。たぶん、清江に関わる、なにかがある。
そのまま天鳴は席を立ち、あっさりと帰って行った。雷という彼の天性のままの有様に、残された方はあっけなさと妙な疲れが残った。
さすがの清江も、長く重いため息を流文に聞かせ、唸るように言った。
「見たままの男だ。説明は要らんだろう。またそのうち来るだろうが、なんとかしのいでくれ」
そんな言い方になるのも無理はない。とても常人に扱える御仁ではなさそうだ。
神とはその性質も極端に強いのだろう。清江がまだ普通に見えるのは、やはり水という比較的穏やかな性質を持つ神であるからであるらしい。
「あなたは、天鳴殿の前では普通の人のようですね。仲が良い」
「いいように見えるか? 不本意だ」
一方的に遊ばれ揶揄われされている清江にしてみれば、多少困った相手ではあるのだろうが、決して心から嫌がっているのではないことは見ていて自然に分かった。長い年月付き合ってきた者同士の遠慮のないやり取りの仲に、互いへの理解と信頼さえも交わされている。
おそらく、この清江をああもやり込めてしまえるのは、ただ一人なのだろう。そんな、わちゃわちゃしたやり取りと、やられっぱなしの姿を流文に見られ、照れくさいので拗ねている。しかも、そのことを流文が面白がっていることにももちろん気が付いているが、打つ手がない。今はそういう状態らしい。
「ふふふ」
「笑うな」
「はい。ふふふ」
呆れ顔で見られるのがくすぐったい。
「……小姓などとは思っていない」
「わかってますよ」
「なら、いい」
「昔、いい人がいたんですか? 龍神様?」
思い切って図に乗り、けしかけてみる。認めたくなければ認めないだろう。天鳴がほのめかしたことは気になるが、それも清江が隠したいならば、あまり深入りするつもりはない。ただ、清江の秘密に触れてしまったことが、流文の中の清江との距離を少しだけ変えたのだった。
「……そういうんでもないさ。千年も昔のことだ。忘れたよ」
全否定ではなかったことは、少なくとも流文を驚かせた。けれども、それ以上関わることは、はっきりと拒まれたようだ。
二千年、このひとはいったいどんなふうに生き、どんな時を過ごしてきたのだろう。それはあまりにも果てのない遠い話で、今更流文に語られることはない。そういうことだ。
構わないと、流文は思った。誰にでも過去はあり、良きにつけ悪きにつけ、ひとに話せるものばかりではない。たとえ興味があっても、それにまで手を伸ばしてしまってはいけない領域なのだ。
そこに「それ」があるとだけ知ることができた。たったひとつでも、このひとを知ることができた。十分じゃないか。
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