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一章
春龍節
しおりを挟む町が賑わっていた。人々は明るい顔で言葉を交わし、軽い小走りでいそいそと行き交っていた。荷車が車輪をきしませながら通り過ぎ、軒を連ねる店にはたくさんの人が足を止め、店主との交渉を楽しんでいる。そんな風景を、あちこちで見かけることができた。
まだ吹く風は冷たいながらも、今日は待ちわびた春の光が目に眩しく降り注いでいる。だから人の心も晴れるのだろうが、それにしても平常よりは幾分ざわめいて見える片田舎の小さな町の姿に、彼は気分を良くして足を止めた。
向流文(シャン ルーウェン)は、たった一人で旅を続けていた。優し気な印象をもつ麗しい容貌に絹の長い髪、真っ白い外套を翻す彼の様子は人目を引くほど瑞々しいものではあったが、彼の旅路はもう、かれこれ八十年余りにもなる。
彼は、いわゆる仙人である。齢二十歳ちょうどという、かなり若い頃に見事仙力を得た。ゆえにその時の容貌を持ち続け、本人の意とすることがなければ、老いることはない。仙人の中には山に籠り人との関りを断つうちに老人のように老いた風貌となる者もあるが、流文は旅をし人と接し続けるその刺激故か、はたまた彼自身の望みか、そうやって若々しい姿を保ったまま、世を渡り歩いているのだった。
旅の目的は、簡単に言えば徳を積むことである。その特別な仙力で人を助け、それでまた力を高め、行きつく先は神に一番近いといわれる天仙かというところだ。しかし別段、それを目的に据えているほどでもなく、そもそもが不老不死を手に入れたかったというほどでもなく。たまたま身寄りのなくなった流文を拾ったのが変わり者の仙人で、いわば生きるためにその元で無駄に厳しい修業に耐え、結果手に入れた仙力。せっかく頑張って手に入れたのならば持ち腐れるよりは人のために使おうという、それだけのことだった。あまり恵まれた半生を送ってきたのでもない割に無欲なこの青年は、特殊な力をもって何か悪事を働こうという気にはなれず、善良にして無害な一人の仙人としてつつましく生きている。
さて、仙人となれば、腹も空かない。たやすく疲れない。欲を断った状態でひとり黙々と修行を続けるのではあまりにも刺激が少なくつまらないから旅でもしようと思い立った。それで八十年だ。生来の自由を好む性格がそうさせたのだろう。まあ、ちょっと目を引く麗人というほかは割とどこにでもいそうな「兄ちゃん」にしか見えない彼を、すぐに仙人だと見破る人も少なく、気楽に普通の旅人に紛れて、文字通りの風来坊生活を楽しんでいる彼であった。
その途中、そろそろ足を休めたいと立ち寄った町だった。店は新しい幟を立ててものを売り、娘は着飾ってしゃなりと歩き、老人でさえも曲がった腰をしゃんと伸ばして歩いているようだ。それほど人の多い町にも見えないのに、ここまで元気がある人々の姿は部外者が見ていても楽しくなるというものだ。
こざっぱりとした茶店を適当に選んで席に着けば、早速中年の店主が注文を聞きにやってきた。日に焼けた顔をテカらせた笑顔がなかなか客目を引く。
「お茶と菓子をいただこう」
空腹でもないが食えぬ体でもないため、いつもどこに行ってもこんな注文だ。こういった飲食店で軽く注文をすれば、店の者に話を聞くきっかけになる。
どこでも値段は問わないので、特に好みを言わなければだいたいはその店の自慢の品が用意される。流文の旅姿は決して貧相なものではないので、ほどほどの名家の子息の気楽な一人旅くらいには見えるはずで、店にしては悪くない客であるはずだ。もちろん支払いも惜しまない。人を助けた礼にもらう金子銀子で、旅に必要な経費は贅沢に賄えている。
「でしたら、今日は餅菓子がおすすめですよ。うちの自慢でしてね」
店主のしゃがれた声が、少し機嫌よさげに弾んだ。
「なら、それを。何か特別なものなのかい?」
「ええ、春龍節ですんでね。毎年うちがたんとお供えするんです」
「へえ、春龍節。そうだね、二月の二日だ」
「よくご存じで」
「うん。まあね、聞いたことがある」
なるほど、だからこの賑わいなのだ。流文の知るところでは、簡単に言えば春祭りである。この風習を持つ地域はいくつかあって、どこも派手に祝うことくらいは、無駄に長く生きていれば聞き知っていた。しかし、実際にその日に祭りを見るのは初めてだった。なかなかに興味深い。
「ここの祝いも賑やかなようだね。実に楽しそうだ」
よく見れば、店先に揃いの提灯が下げられ、それには龍の文様が描かれていた。
先ほどは大道芸人が派手に花吹雪を散らしていたが、それだけでなく、道を行く子供たちが手にした籠から、やはり色とりどりの花吹雪をまき風に飛ばしている姿が見られた。ただ紙の切れ端や古布を適当に切ったものだが、それがはらはらと風に舞う姿は実に華やかで、それを見るだけでもここに立ち寄った甲斐があったというものだ。先ほど通りがかった置屋では、妓女らが生の花弁を二階の窓から降らせていた。
「ええ。河の近くに大きな廟があって、昔から町の者の信仰を集めていましてね。特にこの祭は風情があって自慢なんですよ。ゆっくりご覧になって行ってください」
「うん。そうしよう。賑やかなのは嫌いじゃない」
仙人にしては享楽的な自分の性格はよく知っている。面白いものは好きだというつもりでの言葉だったが、店主のほうは意味ありげに笑ってこう言った。
「お客さんはまだお若いし、いい男だから、娘たちが放っておかないでしょうな」
「……そういうこと?」
「春の祭りっちゃ、半分は若者の楽しみでしょう」
店主は当然という口ぶりだ。
「……まあ、そうか。そういうつもりでいなきゃならないんだね。了解したよ」
「一夜の縁もまた旅の楽しみってね」
はははと笑い、陽気な店主は手拭いを振りながら厨房へと消えていった。それを、流文は苦笑いで眺めた。
「まあ、龍神の祭りだしね」
一人ごちたのを、聞く者はいない。他にも客はいるが、皆通りの賑わいに気を取られ、流文には意識を向けていなかった。どうしても衆目を集めがちな流文としては、ありがたいことだ。
長い冬を終え、ちょうど日差しに温かみが感じられるこのころ、主に河沿いの村や町で、この春龍節と呼ばれる祭を行うところがある。龍は春を司る神獣で雨水や河とも関わる神なので、祀る廟は水辺に建てられ、豊穣を祈願されるのが定番。併せて水害を防ぐための祈祷もなされるので、この祭は人々にとってはかなり重要だ。
同時に、龍は春……すなわち子孫繁栄にも繋がる神で、そういうところから、龍神祭は若い男女の出会いの場という役割も果たすことが多いようだ。だから、娘が着飾る。意中の相手がいるもいないもこぞって色めき立ち、男から見初められるのを楽しみに町を歩くわけだ。ふだん気弱な男も、この日だけは勇気を振り絞り、気に入った女に声をかける。そうして夜にはそこここに恋仲が誕生し、その何組かが縁を結ぶということだろう。これも大事な祭りの役割といえる。
ただ、この流文がそれに関わるつもりはもちろんない。笠を被ったままうつむいていれば、容姿を気に入られて声をかけられることもないだろう。むしろ素顔を晒してしまうと、こんな日だ、女だけでなく男からも色目を使われてしまいそうで、実に面倒。これでも仙の端くれなのだから、もうとっくに色恋とは縁を切ってしまっている……と言っては語弊がある……七つの歳からいかつい修行僧の元で鍛錬ばかりしてきて、適齢期にまんまと仙人になってしまった流文は、色恋に縁のないまま耳年増を極めて今に至る。見てくれはともかく、百の爺になった今更、ちやほやされたいとも思わないのである。
さて、やがて運ばれてきた爽やかな香りの白茶と、小麦粉を練って作ったらしい餅菓子は、なかなかに美味だった。それをのんびりと平らげ勘定を済ませた流文は、笠の顎紐を締めて立ち上がり、人の流れる方へと足を向けることにした。
店を出て、人の流れは右方向。やはり祭りとなると廟に参りに行く者が多いらしく、列をなすほどではないが、自然に人の集まる方向というのは見て取ることができた。
物見遊山の旅人風情で、流文もまた河辺に向かう道を行く。しかしその途中。
「お、姉ちゃん、可愛いね」
と、まあこんなふうに、目ざとい男に早速と声をかけられてしまった。
ここで「いや、姉ちゃんじゃないよ」と返すと、たいていは引き下がってくれるのだが、中には「へえ、その顔で兄ちゃんか。俺はそれでも気にしないぜ」などとしつこい者もいて、腕を掴まれたり物陰に連れ込まれそうになったりもする。そこで流文は仕方なく「お仕置き」をするわけだが、それもあまり気乗りするものではないので、できるだけ顔を見せないようにして歩くように気を使う。
ちなみに、今回は流文を男と知って、去り際に尻を撫でてきた不届き者がいたので、骨が折れぬ程度に脛を蹴り飛ばしてやった。
気を取り直して足を進めると、町から一本すらりと脇道が伸びており、そこがどうやら廟につながる道と見えた。おそらく普段はほとんど人の通らない小道だろうが、今日は草も刈られ、小ぎれいに整えられている。両側に提灯が飾られ、参道を示してくれていた。そこを辿ることしばし、どしりと大きな灯篭が立てられたその向こうに、確かに立派な廟の姿がお目見えした。
町の者がずっと世話をしてきたのだろう、古そうではあるが痛んだところの見当たらない、堂々とそびえる廟だった。ここの神には名がないのか、「龍神殿」とだけ掲げられた門をくぐると、中には何人かの若い娘が線香を立てて手を合わせていた。ここの神はちゃんとご利益があるのだろうか、その祈り方が熱心に見えたが、彼女らから話を聞くのは気が引けた。流文自身が早速そのご利益だと思われてしまってはいけないからだ。
神前では笠をかぶっているわけにはいかないため、流文は娘たちが出ていくのを待ち、入れ替わりに中に入った。
廟内は花や飾り物で賑わい、祭壇にはたくさんの供物がひしめいていた。中には先ほどの茶店で食べたのと同じ餅もあり、あの店主が必要以上に商売上手なのでもないらしいことを知る。あの味なら神も喜ぶことだろう。今も愛され続けている神だということが、供え物を見ているだけでもじゅうぶんに伝わってくる。廟の古さを見れば、長年そうであったこともまたしかりだ。
ここには本物の神がおわす。そう思うと、人がいくらか仙力を得ただけの自分のような存在がとても拙く、それでも只人からは多少なり崇められる対象であることが、あまりにもおこがましいような気がしてくる。
自分たちは、決して神ではないし、神にはなりえない。こんな自分を「貴方」はどのように見ておられるのか。そう問うように流文はそっと顔を上げ、神の姿と向き合った。
「……!」
振り仰ぐと、煙る線香の煙の向こう、すっと立ち上がりこちらを見下ろす龍神の木像と、目が合った気がした。その瞬間、なにかに触れたようにドキリと鼓動が跳ねた。
意外だったのは、それが龍の姿を彫り起こしたものだったからだ。よくあるのは擬人化された神を像にしたものだが、ここは違う。長い髭をなびかせ、しなやかな体に鱗を湛えたあの龍そのものの姿で、祀られていた。
美しい龍神だと、流文は思った。よく描かれる龍と言えば、雷雲を体に巻いて、爛々と目を光らせ、牙をむいて口を開ける姿だと思うが、ここのはとても穏やかだ。大きく威厳のあるたたずまいではあるが、静かな目でこちらを見守るような、そういう落ち着きがあった。
この先に流れる河は、氾濫などを起こしたことがないのかもしれない。ただ人々に豊満な水を分け与え、周囲の生命をはぐくむ穏やかな河なのかもしれないと、この龍神の姿を見ながら流文は思った。この廟の中を満たす空気はとても柔らかく、静かに澄んでそして心地が良い。
せっかくだから、ご神体に会いに行こうか。
実際にこの目で河の姿も確かめたい思いが浮かんだ。まだ日の高い時間なら危ないこともないだろう。まあ、多少の事からは身を守れる力があるので危険はさほどないのだが、なんとなくだ。自衛のためとはいえ、あまり人の近くで力を使いたくはないものだから。
龍神像に手を合わせ、買い求めてきた線香を立てる。一度瞑目し、この土地の民の安寧を、そして自分の旅路の安全を祈願し、流文は早くも廟を辞した。後から、足を引きずった老婆と、その体を支えて歩く老人が、数段の低い階段を苦労して上る姿とすれ違った。
外に出ると、廟の裏手に、また細い道がある。これはもう人の手は入っておらず、木々に阻まれ多少足が鈍ったが、踏み込んでみればすぐに河原にたどり着くことができた。とたんに雄大な景色が眼前に広がり、無意識に「ほう」っと嘆息が漏れた。
春めいた日差しも少し傾き、さすがに河辺の風にはツンとした冷たさを感じる。はためく外套の襟を少し寄せ、軽く身をすくめた流文だったが、ここで暫く時間が潰せるだろうかと砂利地の上に座り、はるか対岸まで続く水面にぼんやりと目をやった。
確かに、穏やかな河だ。蛇行もこのあたりは緩やかで、流れは速くない。上流の雪解け水が流れ込んで、いくらかはふだんよりも水量が多くても不思議ではない時期だが、岸辺以外は波もほとんど立たず、静かに澄んだ水が滔々と流れていく。
上流がどれほど向こうなのかはわからないが、流域も広そうだ。この河を祀る廟はここだけなのだろうか、それともまだいくつかの場所で今日の祭りが繰り広げられているのだろうかと、そんなことを徒然に考えているうちに、町で感じた心躍るような心持も収まり、胸が凪いだようにゆったりと静まっていくのを感じた。
さて、今日はどうしたものだろうか。野宿が辛い身でもないが、せっかく町にいるのだし、できるならば心地よい寝台で眠りたいところ。空いている宿はあるだろうか。こういうときは満室だったりするのだろうかとつまらないことも考え、成り行きに任せるしかないのかと、浅いため息をついた。
やにわにざっと風が吹き、束ねずに流している後ろ髪が巻き上がった。
不思議と、これまで感じてきた冷たい風ではないことに、流文は気が付いた。
こんな時間に春風は吹くはずがない。では何だ? 妖か何かの悪戯だろうかと辺りを見渡した時、本日二度目に、鼓動が強く胸を打った。
「貴方は……」
こういうとき、声を出すのはあまり賢い行動ではない。相手が悪しき者であった場合、こちらに気づかれると、それだけで危険だからだ。
しかし、万事に詰めの甘い自分を自覚している流文は、やはりその驚きを声に出して呟いてしまった。仕方ないだろう、驚いたんだから、と、後から誰に言い訳したものか。
そこに、ひとりのひとの姿があったのだ。いわずもがな、先ほどまでここには流文しか居なかった。しかし、あの不思議な風の後、突然そこに、ひとが現れたのだ。もちろん、人である確証はないほうが強い。
ならばこれが悪しきものかと言えば、とてもそのような疑いをかけることのできない相手だと流文は感じ取っていた。むしろ、これは……。
思い至り、急にまた鼓動が速まった。自分の勘が確かなら、ここで自分がこうしていることはとんでもなく無礼に当たるはずだともわかるが、とても体が動かない。呪縛にかかったのではなく、自らが動けずにいるのだ。相手の存在の大きさ深さを感じ、気圧されおののいているばかりに。
その、姿。美丈夫とは、このようなことを言うのだと思った。
決して女性的ではないが、造形が桁違いに美しい。長身に均整のとれた体躯。それを包むのは青灰の衣に、光沢ある青緑の上衣は凝った刺繍が施され、優雅に裾を広げている。その上から薄衣をまとう肩には漆黒の豊かで長い髪がゆったりとかかっている。白い肌、切長の目に鼻筋は通り、薄赤い唇はひきしめられていた。これが微笑めばさぞ見栄えがするだろうに、残念ながら彼の表情は薄くひんやりとしており、神々しさだけではない近寄りがたさを感じさせた。
あまりにも美しい男神。つまりは、あの廟の主その方なのだろうと、確信した。浮世離れした存在というのは、無駄な説明を必要とはせぬようだ。見ればそうとわかる。
彼は、こちらがひたと寄せる視線にゆっくりと応えるように少し首を傾けてから、体をこちらに向けた。
さら、と長い髪が揺れ、また袖の翻るさまが雅やかだった。
視線同士がしっかりと合い、互いの存在を認め合う。
「私が見えるか」
唇を少しだけ開いて、彼は問うた。低く、落ち着きのある響きの美声だった。
それに答えるには一呼吸の余裕が必要で、流文は大きく息を吐いて、そのあとゆっくりと吸い込んでから、やっと口を開いた。
「はい」
自分の声が微かに震えたことを聞き取り、それが恥じられた。
「そうか、同類であるようだ。天仙か」
彼が同類と称したのは、互いが所謂「神」と人から呼ばれる存在であるからだろう。しかし、実際はふたりをひとくくりになどできようもないと、流文は思った。それは、廟で感じたものと同じ、あまりにも相手が尊過ぎることへの畏怖だった。
自分は本当は、神などと呼ばれ、このひとと同じ顔をしていてもいい存在ではない。このひとの前では自分など只人と同じ。彼こそが、そう名乗るべく資質を持ち合わせた、真正の神なのだと。
しかし、その思いを、ここで話したところであまり意味がないような気がした。流文が感じているふたりの違いを、相手が感じていないはずがないからだ。
格が違いすぎる。
「……そのようなものです。ですが、……出来損ないで、まだ一度しか天上しておらず……」
自分が天仙と呼ばれる分類のものだということは、認めることにした。しかし、それもまた不十分であることは、流文の一つの悩みでもあった。
数いる仙人にも格付けがある。未熟な者は人が少し変わった力を得た程度なのだが、飛翔できるほどになれば、上位の仙と言えた。それが更に天上まで上る力を持つと、人からは「神」と呼ばれ、実際に天界への行き来が叶うものとなる。この流文、天仙ほどの力を持ちながら、一度天上を果たしたきり、二度目を成功させたためしがない。しかもその唯一でさえ、瞬く間に地上に引き戻されたのだ。
だから、自分は出来損ないなのだと自称している。目の前の、生粋の神の目からは一体どのように見られているのだろうかとは思うが、問うてみる気もしない。あまりにも自分の小ささが恥じられて、答えを聞くのも甚だ情けなさが過ぎる。
「ならば、見覚えのないのは致し方あるまいな」
無感動に、彼はそう言った。どうやら、しかと天上を果たすことができれば、こういった神々の目にも触れ、顔を知られることにもなるようだ。
流文は少しだけ、自らの衣の袖を握った。胸に湧き上がった苦いような苦しいような思いが、自分に一度失望したかつての日を、久方ぶりに思い出させたせいだ。
それでも、やっと納得がいったような気分にもなっていた。やはり自分などでは足りない。天に相応しきは、やはりこの方のような、本物の神であるに違いない。
「貴方は、ここの、龍神であらせられますか」
くっと顔を上げ、流文は尋ねた。そもそも河辺まで来たのはご神体を拝むためだったのだ。水をたたえる河がそれのつもりでいたが、こうして人の姿で現れ、言葉を交わしてくれているこの機会を、すぐに終わらせてしまうのは勿体ない。雲の通い路なるものを閉ざしてしまわれる前にもう少し、その姿を見ていたいと思った。
「いかにも」
嫌がりもせず、彼は答えた。
「龍神を呼ぶ祭りというのは、本当なのですね」
「人に望まれねば存在できぬ身ゆえな」
「祭りにはこうしてお出ましに?」
「そうだ。人は信じぬやもしれぬが、こうして地上に降り、恵を与えている」
言って、彼は自身ともいえる河を眺めた。それだけで、さっと何か特別な気が辺りに広がり、水面を渡っていったように感じられた。
人がどれだけ本心から神の存在を信じているかは、不明だ。ただ心の拠り所として祀られているというのが、正直なところだろう。実際に神仙による力を目にしたり感じたりできる人間など、一握り。むしろ、どれだけ神に祈りを捧げても、戦や天災により簡単に命を失くしていく、非力な者たちだ。
それでも、確かに神仙は存在する。特に仙は自分がそうであるために、実在を証明できる。しかし神は、神の存在は、天上の叶わぬ自分にはまだどこか信じ切れぬところがあったのだが、今初めてその力を目にし、やっと実感することができた。
「やはり、神はいらっしゃるのですね」
「そなた、天仙ならば知っておろう」
「ですから、出来損ないなのです。私は天仙に見えますか」
「私の姿が見えるならば間違いではなかろう。なぜ出来損ないなどと言う?」
「……」
神に問われ、嘘も隠し立ても無駄だと悟ることも、流文には百年生きて初めての経験だ。どれだけつまらなく情けない身の上話でも、話さないわけにはいくまい。仕方なく流文は、初めて天に引き上げられた時のこと、しかしすぐにまた何かの力によって弾かれたように地上へ落とされたことを話した。
「その後何度も試しましたが、一度も叶いません。まだ、私には早かったのでしょうね。地仙止まりということでしょう」
最後の口ぶりは、もはや拗ねたようなものになった。これでは見てくれの通りの若輩者だ。
「なるほど」
彼……龍神は、そう呟いて何か考えるように黙った。
「だが、私が見え、一度は天上できたのだから、力は十分なはず。何か他に障りがあるとも思えぬがな」
「徳が、足りぬのでしょう」
「いや……」
また、龍神は考える表情で首をかしげる。その様子を見ていると、尊い神にこのようなちっぽけな自分の取るに足りぬ悩みを取り上げてもらうことが、申し訳ないような気がしてきた。
「本物の神の前で、情けない限りです。所詮人上がりの仙など、半端なものなのでしょう」
そう片づけて話を切り上げようとしたが、龍神はそこでふと顔をあげた。
「必要ならば手を貸そう」
「え」
意外過ぎる申し出に、一瞬我が耳を疑った。
「そんな、滅相もありません。あなたほどの方のお手を煩わせるほどの価値はありませんので!」
ふるふると首を振り、流文は言ったが、そこはあっさりと無視された。
「私が再び天上する時、共に来ると良い。それまで数日待てるか」
「待つのは構いませんが、でも……!」
「何か」
「いえ、その、恐れ多くて、ですね……」
カッと顔が熱くなった。一気に頭に巡った様々な思いを、どう話していいのかがわからない。
「どうした」
「私は……、」
「天上を望むなら今一度試してみよ。それで叶わぬならば、生憎だが」
「……」
もう、あまりの恥ずかしさに、流文は赤面を隠して俯くしかできなかった。
この方と、行くのか。それが嬉しくないはずはない。が、もしまた弾かれたら、大恥をかくことになる。この方はなんとも思わないだろうが、自分が恥ずかしいのだ。その後二度と会うはずもない相手だとしても、この方の前で見せる失態を、自分が許せる気がしない。もう二度と、仙と名乗って胸を張ることができなくなるのではないかと思った。
「ここに、三日ほどは留まる。その間に気が向くようなら言いなさい」
なかなか厚意を受け取らない流文を、龍神は自身が一歩引くことで許した。
気の短い神ならば立腹してもおかしくないところだろうが、この神はやはり穏やかで、そのことに助けられたと思った。
「ありがとうございます。あなたはお優しい方ですね」
勇気を出して顔を上げ、流文は言った。少しだがなんとか笑みを添えられたのは上出来だろう。本来ならば手を合わせ跪くところだろうが、そういう空気では、もうなくなってしまった。
「……大したことではない」
すっと、逸らすように顔を背け、龍神は小さく言った。その横顔が、微かに照れたのではないかと見え、流文もやはり、小さく言った。
「感謝します」
◇◇◇
神の生まれるには、いくつか条件がある。
ひとつは、人が徳と修行を積み、仙から天仙となるもの。
なにか偉業を成した人が、死して後人々から崇められ神格化するもの。
自然現象や自然そのものが人から畏れられ、神格化するもの。
人の強い願いや概念が信仰そのものとなるもの。
あとは、伝説上のものや、世界を作ったといわれる原始の神。
かの龍神は、三つ目の神にあたるようだ。信仰対象としては、かなり格が高いと言える。おそらくあの河ができた頃から人の信仰を集めて生まれたものだろうと思われた。とても、流文などが同じ目線で対峙していいような神ではないことは確かだ。
天界のことは、地上にいる限りよくわからない。言い伝えられている話はあるが、それが本当かどうかは実際に目にしてみなければ信じられないし、これまでにその機会は失われてきた。
しかしここにきて、それらの真相を知る機会が巡ってこようとしているらしい。やってみなければうまく行くものかはわからないが、可能性は一つ開かれた。神との遭遇という稀有なきっかけが、更なる奇跡を呼ぶのかもしれない。そう思うと、流文の心も平静ではいられなかった。
龍神は、今夜は廟の像に身を移し、人々を迎えるそうだ。ぽつぽつと来る参拝者に、空っぽの形代を崇めよと言うのは気が引けるとのことだ。呼び出された日くらいはそこにいて、寄せられる願いや祈りに耳を傾けたいという。なかなかに律儀な神だと思ったが、口にはしなかった。やはり、恐れ多いからだ。
流文は、龍神が地上に留まる間は、廟の片隅で寝泊まりすることにした。断られなかったので勝手をさせてもらうことにした。今日明日くらいまでは参拝者もありそうで、それらを見守る龍神を見ていたいと思ったのだ。神とはどのようなものか、この際だから少し身近なものとして知りたい。自分がそうなれるとはもはや望みもしないが、神の恩恵を受けていく人たちの表情が一様に穏やかであり、それを見ているとどこか満たされる気分になった。
夜になると、外はずいぶん冷えていた。しかし、本祭の今夜は廟を照らす灯は絶やされず、夜になってから参る人の姿もちらほらある。流文はその者たちの邪魔にならぬよう、像の裏手に身を隠していた。ちょうど参拝者用に長椅子が置かれていたので、寝る場所にも困らずにいられそうだと、そんな事を思いながら。
「龍神様……?」
人が途切れた時に、流文は龍神に話しかける。無視されることもあるが、今は返事があった。
「なにか」
返答はかなり短く、そっけない。あまり話したがらない性格のようで、それがかえって親しみを感じさせた。
「貴方は眠らないのですか?」
実に馬鹿馬鹿しい質問だったと、後から思った。どうも、話がしたかっただけで声をかけてしまったらしい自分に気が付く。恐れ多いと思う心が、すこしずつ解けてきてしまっているようだ。
「……必要ない」
「ずっと寝ないのですか?」
「数日程ではその必要がないということだ」
「なるほど。天界にお住まいが? 龍神様はそこで暮らしておられるのですか」
「……」
龍神の、少ない言葉がここで途切れてしまった。まずいことを聞いてしまったのかと、つい焦ってしまう。
「あ、差し障るようでしたら答えていただかなくとも」
「……河伯」
「はい?」
「河伯、と呼ばれる」
「ああ、お名前ですね! すみません。固有名があおりとは知らず」
「これも、名ではないが。龍神といえばほかにごまんといるからな。それに、私は龍そのものではない」
「龍は神獣ですものね。いろいろと混同されているのですね」
もともと、河の神は蛇から龍へと連想され、神として祀られることが多いわけだが、この神はその姿ではないということだろうか。というような質問をすると、神は律儀に説明をくれた。
彼は、ここの河を司る神。生まれた頃は蛇の姿、やがて龍の姿になったのは、人々がそのように偶像化したからだという。彼は龍の姿で天上し、天帝に神と認められた時にひとの姿を賜った。この姿を人が見れば、像も人型で作られるのだろうが、まだ見られたことがないので龍のままなのだと、本人が語った。
「面白いものですね。つまり、先ほどのお姿を拝見したのは、私が初めてですか?」
嬉々として流文が言うと、あっさり「違う」と返された。
「天上した神仙は、あの姿を見ることになる」
「ああ、天上できない者としては、私が初めてと、そういうことですね。理解しました」
自分で、これはまた大人げない言い方になったなとしっかり後悔していると、龍神が微かに笑った気配がした。
「拗ねるな。連れて行ってやる」
「ありがとうございます。……えっと、河伯様」
そして、まだ言い慣れない名で呼びかけ、そうしながらふいに浮かんだ考えを口にしてみる。
「私の記憶が確かなら、河伯と呼ばれる水神は、ものすごく古い神ではありませんでしょうか」
水神といえば、というような存在であるはずの神だ。いわば河の神の総称のようでもあるその名を、わりと当然のように流文も聞き知っていた。
神というものも、時代と共にいろいろと形や呼び名を変え、他と融合したり混同されたりするものなので、それと認識していいのかを、このさい本人に確かめたかったのだが。
「それに違いないだろうよ。天上してからでも二千年は経つはずだ」
「……」
あっさりと返され、言葉が詰まった。
やはりそうなのか。そういうことか。わかった。わかったが、わかったからといってすぐに心が落ち着くものではなく、流文はとりあえずここまでの自分の言動に致命的な失敗がなかったかを振り返り、しかしそもそもが緊張のさなかのことであってはっきりと覚えているはずもなく、一度冷や汗をかいてそれからまた恥ずかしさに打ちひしがれ、ちょっと一度頭が白くなってから、深呼吸を二回。とりあえずは、謝るかと結論が出た。
「どうした」
不審なものを見る目で見られているのは承知していた。今河伯が人の姿で目の前にいるのでなくてよかったと無意味なことを思う。
「数々の無礼をお許しください。ものを知らぬゆえ……」
「良い。ただ古いだけだ」
「ですが……」
古代神といえば、原始の神を除いては、天帝に次ぐ格の高い神のはず。つまり、だからこそ流文を天界に引き上げることができるということか。そういうことなのだ。
しかし河伯を祀る廟などそれこそごまんとあるはず。それが今日この日に同時に春龍節を行っているということになる。だとすれば、今流文と話している河伯神は、本体ではなく、分身というか、ちりばめられた意識の一筋でしかないと、そういうことなのかもしれない。
もちろん、そんなことをできるのも、偉大な神の御業ということだろう。恐れ入った。
「怯んだか?」
龍神像から聞こえる河伯からの声が、またどこか笑みを含ませたように聞こえた。
「そりゃ、そうでしょう。私など、あなたのお言葉を拝聴するにもおこがましい」
「聞かねば、聞けぬ。聞けば、聞こえる声もあるやもしれぬぞ」
「……」
「あまり、神を遠ざけるな。望んでくれねば叶えようもない」
今度は、少しだけもの寂しそうな声。それがすっと、流文の心に届いた。
彼の言うことは、わかる気がした。時代と共に人の心も移り変わる。神にでも縋らねば生きる希望を失うような時ならば、神は引っ張りだこだろう。しかし平穏な時代には、神はあまり必要なくなる。このふたつの波を繰り返しながら人が生きていく中で、河伯が生まれた頃よりはずっと、人々の自然神に対する信仰は薄れているのだろうと思われた。かくいう流文とて、自然の力の強大さには畏怖の念を持っているが、そこに信仰心が篤いかと言えばそうとも言えず。仙の多くが求めるのも「神のような超人的な」力なのであって、神そのものになろうというのとは、少し違う者が多いと思っている。
「私が言うのも妙なのですが、私は今日、神を信じるようになりましたよ」
「……なによりだ」
また河伯の気配が揺れ、照れたのではないかと思った。だが、今は彼の顔は見えない。変わらず涼し気な顔をしているのは、龍の木像でしかないのだ。
「少し、外の井戸で水を汲んできます」
いつの間にか、喉の渇きを感じていた。流文は荷物の中か竹筒を手に取って立ち上がり、人が見えないのを確認してから廟を出た。
もう、周りはとっぷりと暮れている。灯篭の明かりだけが温もりといえそうな寒々しさだ。さすがにそろそろ人は来ないだろうと、気にせず井戸に向かうと、傍らの草がガサリと音を立てた。そして「きゃっ」という若い女の声。
どうやら流文が彼女を驚かせてしまったようだ。しかし、こんな夜更けに娘がこんな暗い所にいていいのかと思った矢先、
「気にするな。今日は俺たちみたいなのがいるんだよ、他にも」
娘に応える、若者の声だ。その言葉から、流文は事情を理解し、そして苦笑した。この寒空に、お盛んなことだ。
まあ、この廟のお陰で風だけはしのげる場所だ。服を着てさえいれば、なんとか我慢できる寒さなのだろう。つまりは、逢引きの場と化しているのだ、この周辺が。
なんともしょっぱい気分に、密かなため息が出る。できるだけ音を立てずに水を汲むと、流文はさっさと廟の中に入ることにした。外で長居していては目に毒なだけだろう。
そして、なんだか当てられたような変な気分を、河伯についぶつけてしまった。
「河伯様、いいんですか、廟の周りに不埒物がわんさかおりますよ」
ぷんすかと言った流文に、河伯は淡々と答えた。
「……承知している」
「罰当たりじゃないですか。まあ、今日はそういう日かもしれませんけど、宿とかですればいいじゃないですか。茶屋もその先の町にはあるんでしょ。いっぱいなんでしょうか。それとも金のない者たちでしょうか」
「……」
「あ、すみません、つい」
「妬いておるのか」
「いいえ。もうそんな歳ではありません。が、神の前であまりにも不謹慎では」
昨日までの流文なら、このようなことに立腹はしなかったことだろう。しかしこうして神と関わってみて、やはり人によるあのような行為がここで繰り広げられるのには、違和感を覚えるようになった。
あんな、……欲深い行為を、この方の膝元で。
「龍神だそうだから、仕方あるまいよ。毎年の事だ。今更追い払う気はない」
それもまた人の営みだからと、河伯は達観したように言った。彼にとっては流文の憤りもまたささいなことであるようだ。
「お優しいですね」
何もかもを許すほどに、心が広く柔軟で深い、そういうものにならねば、神とは呼べぬのだろう
「そうでもないさ」
河伯は呟くように言ったが、それに流文は言葉を返すことができなかった。
彼がどういうつもりで言ったものだとしても、それを突き止めたとしても、自分との隔たりを感じることになるだけであると思った。
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