ホラー短編

こたろう

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赤ずきんちゃん

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テレビの電源がつく。
画面にはニュースアナウンサーが原稿を読み上げている。
「監視カメラの映像を見ると、犯行の瞬間が撮られています」
画面左端に赤いレインコートの女性が男性を馬乗りになり、包丁で背中を滅多刺しにしている映像が流れている。
「そして、犯人は監視カメラに向かい、不気味に笑っている姿を見せつけています」
「監視カメラの映像によると犯人の特徴は、白い顔、そして赤いレインコート」
赤いレインコートの女性は、顔は白く皺だらけ。そして返り血を浴びている。
「未だに犯人は逃走中とのこと」
「警視庁は赤レインコートの女性を連続殺人事件の容疑者として全国指名手配を発表しました」

田中が嬉しそうに長尾に話しかける。
長尾は新聞を読んでいる。
見出しには、「赤いレインコート連続殺人事件、指名手配」と書かれている。
「昨日のニュース見た?懸賞金、500万円らしいぜ。捕まえようぜ」
「こんなの捕まりこないぜ。指名手配を捕まえてお金貰ったやつ聞いたことないぜ?」
長尾はため息混じりで答える。
「はぁ?お前バカか?今までは見つかりにくい格好しているから、捕まらなかったんだ。今回は赤いレインコートだぜ?すぐに見つかる見つかる」
田中は生気が満ちた目で話す。しかし、長尾は呆れた様子。
「あっそう、勝手に探せば」
長尾、新聞のページを捲る。そこの右下に小さく「ホームレス死傷事件相次ぐ」と書かれている。
田中は眉間に皺を寄せる。
「はぁ?」

人々が賑わい、活気のある表通り。
そこを苛々しながら歩く田中。
「けっ、長尾のやつ、もし捕まえたって、ビタ一文も奢ったりしてやるかよ」
田中はビルの前で足を止める。
ビルの入り口には黄色い立入禁止テープが貼られている。
田中はビルを見上げる。
「犯人は犯行現場に戻るて言うもんな、我ながら頭いいぜ」
田中の不敵な笑いが行き交う人々に聞こえ、注目される。だが、そんなことは気にもしない様子。
そして、田中はビルの陰で隠れる。

田中、ホームレスの男性と肩が打つかる。
鬼の形相で男性を睨みつけ、胸倉を掴みかかる。
「いったいな…おい、俺は今最高にむしゃくしゃしてんだよ」
田中が男性を突き飛ばし、地面に転がり込む。
男性の横腹を何度も力強く蹴る。
「お前らみたいに暇じゃないだよ。お前らみたいのは隅の方でこそこそ生きてればいいんだよ」
何度も何度も蹴り続ける。
男性は血反吐を吐き、虫の息。
田中は息切れし、立ち去る。

エレベーターの階層ランプが点灯し、階数が1階に近づいている。
田中、自宅マンションのエレベーターの前で、煙草を吸い、苛々している。
「ちっ、今日は収穫なしか」
上ボタンを指で連打する。
「遅えな、早く来いよ」
エレベーターが到着する。そしてぎしぎしと軋みながら扉が開く。
そこには赤いレインコートの女性が乗っている。
田中は口に加えた煙草がポトンと落ちる。小さく不敵な笑いをし、エレベーターに乗り込む。
小声で「500万円が鴨が葱を背負って来やがった」と呟く。
5階のボタンを押し、扉が閉まる。後ろに俯いた赤いレインコートの女性が静かで不気味に佇んでいる。
エレベーターは轟音を鳴らし、動き出す。
田中は不敵な笑いをロープを上着の裏ポケットから取り出す。赤いレインコートの女性は俯いたまま。
エレベーターは登っていく。轟音が鳴り響くエレベーター内部。
エレベーターは止まり、扉が開く。
「ししし、悪く思うなよ」
田中が振り向こうとすると、動きが止まる。
「あ、あれ?身体が動かない」
赤いレインコートが顔を上げる。顔は白く皺だらけ、不気味に笑う。
レインコートの懐の中から包丁を取り出す。
田中、脂汗がだらだらと顔中を流れる。
「冗談だ、これはジョークさ、ははは」
赤いレインコートの女性は手に包丁を持ち、笑顔で田中に襲いかかる。

液晶モニターの電源がつく。
画面には赤いレインコートの女性が男性を馬乗りになり、包丁で背中を滅多刺しにしている映像が流れている。
そして、モニターに映る姿は、不気味に笑っている。
その顔は白く皺だらけ。そして返り血を浴びている。
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