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3話 『巌窟王』~King of the caves~
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自分を呼んでいた人物はこの青年だという事はすぐに察知出来た。
敵意は感じられないが、なるべくならリスクは避けたいと一定の距離を取るアラタに対し青年はクスクスと笑いながらこう言った。
「そんなに警戒しなくてもいいよ、自己紹介がまだだったね、僕の名前はダンテス、通り名は巌窟王さ」
不敵な笑みを浮かべる青年は自らを『巌窟王』と名乗った。
その人物像とは、無実の罪で投獄された正義の復讐者その上、かなりのキレ者で剣や銃の扱いも超一流というのがアラタの知る巌窟王の印象だったのだが……
「実在するはずがない、それは人の手によって創られた物語の主人公のはずだ」
アラタがそう言い放つとダンテスは首を横に振り、長テーブルの椅子へと腰掛けた。
「--君も同じさ、エンミティの目的の為に創られた物語の主人公じゃないか?」
アラタには返す言葉がなかった。確かに実在する世界では、その存在すら抹消されようとしていた。
藁にもすがる思いでエンミティの申し出を承諾し、その代償を得る為ここにいる。
あらかじめ用意されたレールの上を歩かされているように感じてならなかったのだ。
「--求道者の末路は悪魔を狩る事への渇望と虚無感の連鎖に囚われる……君にその覚悟は本当にあるのかい?」
向かい合わせの席へゆっくりと腰を下ろしたアラタに対し、ダンテスは覗き込むように上目遣いで会話を続ける。
「理不尽に奪われる位なら俺は奪う側に回り奴等を根絶やしにする。それにエンミティが描いたシナリオで巌窟王が二人いるなら違う結末になる可能性だってあるじゃないか?」
予想だにしなかった返答だったのだろう、ダンテスは最初キョトンとした目をしていたが、思い出すかのように腹でクスクスと笑いだした。
「--その発想はなかったなぁ、それに僕達は相性が良さそうだし君が気に入ったよ!いいだろう力を貸そう」
どうやら『違う結末になる可能性』という言葉が巌窟王を動かす決定打となった事をアラタは知る由もなかった。
「--どうやら新しい物語が動き出したようだね一旦意識を君に返すから目覚めたら瞑想で僕を呼ぶんだ」
現実世界で何か動きがあったらしい、ダンテスは背後からアラタの背中をポンっと軽く叩きこう言い残したのだ。
「--そうそう、これはもう要らないね君を縛るものは何もないよ」
ダンテスは両手を前に出すよう指示しアラタの手の甲にそっと触れた。なんだか両手が軽くなったような気がする。
「--僕らに干渉してきた事を後悔させてやろう、これから始まるのは僕達の反逆だ」
敵意は感じられないが、なるべくならリスクは避けたいと一定の距離を取るアラタに対し青年はクスクスと笑いながらこう言った。
「そんなに警戒しなくてもいいよ、自己紹介がまだだったね、僕の名前はダンテス、通り名は巌窟王さ」
不敵な笑みを浮かべる青年は自らを『巌窟王』と名乗った。
その人物像とは、無実の罪で投獄された正義の復讐者その上、かなりのキレ者で剣や銃の扱いも超一流というのがアラタの知る巌窟王の印象だったのだが……
「実在するはずがない、それは人の手によって創られた物語の主人公のはずだ」
アラタがそう言い放つとダンテスは首を横に振り、長テーブルの椅子へと腰掛けた。
「--君も同じさ、エンミティの目的の為に創られた物語の主人公じゃないか?」
アラタには返す言葉がなかった。確かに実在する世界では、その存在すら抹消されようとしていた。
藁にもすがる思いでエンミティの申し出を承諾し、その代償を得る為ここにいる。
あらかじめ用意されたレールの上を歩かされているように感じてならなかったのだ。
「--求道者の末路は悪魔を狩る事への渇望と虚無感の連鎖に囚われる……君にその覚悟は本当にあるのかい?」
向かい合わせの席へゆっくりと腰を下ろしたアラタに対し、ダンテスは覗き込むように上目遣いで会話を続ける。
「理不尽に奪われる位なら俺は奪う側に回り奴等を根絶やしにする。それにエンミティが描いたシナリオで巌窟王が二人いるなら違う結末になる可能性だってあるじゃないか?」
予想だにしなかった返答だったのだろう、ダンテスは最初キョトンとした目をしていたが、思い出すかのように腹でクスクスと笑いだした。
「--その発想はなかったなぁ、それに僕達は相性が良さそうだし君が気に入ったよ!いいだろう力を貸そう」
どうやら『違う結末になる可能性』という言葉が巌窟王を動かす決定打となった事をアラタは知る由もなかった。
「--どうやら新しい物語が動き出したようだね一旦意識を君に返すから目覚めたら瞑想で僕を呼ぶんだ」
現実世界で何か動きがあったらしい、ダンテスは背後からアラタの背中をポンっと軽く叩きこう言い残したのだ。
「--そうそう、これはもう要らないね君を縛るものは何もないよ」
ダンテスは両手を前に出すよう指示しアラタの手の甲にそっと触れた。なんだか両手が軽くなったような気がする。
「--僕らに干渉してきた事を後悔させてやろう、これから始まるのは僕達の反逆だ」
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