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プロローグ
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--求道者の末路は終わりなき渇望と虚無感の連鎖……
--君にその覚悟は本当にあるのかい?
時計は深夜を回った位だっただろうか
路地裏の一角でそれは起きた……
すでに息絶えているのかもしれない、腹を刺され横たわる男性の隣には、両手を真っ赤に染めて立ち尽くす男の姿があった。
男は震えながら肩で大きく息をして、その場を立ち去り、暗がりへと姿を消した。
「ハァ、ハァ、俺は何もやってない……」
人々のざわめきを遮るようにサイレンの音が鳴り響く……
男の名は『アラタ』今日は朝から頭痛に悩まされ1日寝込んでいたが、空腹に耐えきれず夜食を買いに出掛けた矢先の出来事だった。
ビルの間の小路から物音がしたので立ち止まり視線を向けると、うめき声をあげ必死に助けを求める人影を発見した。
辺りに人の姿はなく恐る恐る近づいてみると、おびただしい出血を目の当たりにし凍りついてしまった。
刺された男は、アラタの足にしがみつくように手を回して死にたくないと何度も涙ながらに訴えてきた。
男は仰向けになり刺さっていたナイフを引き抜こうとする。止めようとしたが一足遅く、もう手遅れかもしれないと絶望がアラタの頭をよぎった。
「すぐに救急車を呼ぶからしっかりしろ!」
立ちあがり震える手でスマホを取り出そうとした時、また強烈な頭痛に襲われ意識が遠のいてしまった--
気がついた時には人集りになり、パトカーのサイレンも聞こえてくる。この状況はどう考えても自分が犯したと思われてしまう、そう思うと怖くなりとっさに逃げ出してしまったのが今回の経緯だった。この選択肢がそもそもの間違いだったと気づいた時……
「止まれ!動けば打つ!」
銃口を向け凄む警官隊を前に、もはや抵抗は無意味と判断し逃走劇は幕を閉じる。
「俺はやってない!助けようとしただけなんだ話を聞いてくれ!」
「言い訳は署で聞こう……さっさと連行しろ」
間を割って入ってきたのは『黒田警部補』と呼ばれる男で独特な雰囲気を発し、後部座席からこちらを睨み付けている。
警官隊の一人が、黒田の隣に座るようアラタに指示し乗車させる。
『俺は無罪だ……ちゃんと捜査して真犯人を捕まえてくれるはずだ……』
祈る思いで瞳を閉じると、沈黙を破り黒田が口を開いた。
「--お前には感謝している、新しい贄よ、お前の絶望は格別だな」
「……なんだと?!どういう意味だ」
黒田に詰め寄ろうとした所で隣の警官が拳を振り上げ顔面を殴打する、2発、3発と。
--助けて……くれ……
薄れゆく意識の中で不敵に笑う悪魔達に漆黒へと突き落とされた……
--君にその覚悟は本当にあるのかい?
時計は深夜を回った位だっただろうか
路地裏の一角でそれは起きた……
すでに息絶えているのかもしれない、腹を刺され横たわる男性の隣には、両手を真っ赤に染めて立ち尽くす男の姿があった。
男は震えながら肩で大きく息をして、その場を立ち去り、暗がりへと姿を消した。
「ハァ、ハァ、俺は何もやってない……」
人々のざわめきを遮るようにサイレンの音が鳴り響く……
男の名は『アラタ』今日は朝から頭痛に悩まされ1日寝込んでいたが、空腹に耐えきれず夜食を買いに出掛けた矢先の出来事だった。
ビルの間の小路から物音がしたので立ち止まり視線を向けると、うめき声をあげ必死に助けを求める人影を発見した。
辺りに人の姿はなく恐る恐る近づいてみると、おびただしい出血を目の当たりにし凍りついてしまった。
刺された男は、アラタの足にしがみつくように手を回して死にたくないと何度も涙ながらに訴えてきた。
男は仰向けになり刺さっていたナイフを引き抜こうとする。止めようとしたが一足遅く、もう手遅れかもしれないと絶望がアラタの頭をよぎった。
「すぐに救急車を呼ぶからしっかりしろ!」
立ちあがり震える手でスマホを取り出そうとした時、また強烈な頭痛に襲われ意識が遠のいてしまった--
気がついた時には人集りになり、パトカーのサイレンも聞こえてくる。この状況はどう考えても自分が犯したと思われてしまう、そう思うと怖くなりとっさに逃げ出してしまったのが今回の経緯だった。この選択肢がそもそもの間違いだったと気づいた時……
「止まれ!動けば打つ!」
銃口を向け凄む警官隊を前に、もはや抵抗は無意味と判断し逃走劇は幕を閉じる。
「俺はやってない!助けようとしただけなんだ話を聞いてくれ!」
「言い訳は署で聞こう……さっさと連行しろ」
間を割って入ってきたのは『黒田警部補』と呼ばれる男で独特な雰囲気を発し、後部座席からこちらを睨み付けている。
警官隊の一人が、黒田の隣に座るようアラタに指示し乗車させる。
『俺は無罪だ……ちゃんと捜査して真犯人を捕まえてくれるはずだ……』
祈る思いで瞳を閉じると、沈黙を破り黒田が口を開いた。
「--お前には感謝している、新しい贄よ、お前の絶望は格別だな」
「……なんだと?!どういう意味だ」
黒田に詰め寄ろうとした所で隣の警官が拳を振り上げ顔面を殴打する、2発、3発と。
--助けて……くれ……
薄れゆく意識の中で不敵に笑う悪魔達に漆黒へと突き落とされた……
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