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第5章「五ヶ国襲撃編」
第26話「女神の像」
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パトリーノが王位継承を宣言すると、パトリーノが存在するドームの外に3本の天から降りる太い光の柱が見えた。
大きな地鳴りの音が聞こえる。
セーヴはパトリーノ以外のその場の全員と共に像の前に転移した。
籠姫と愛の像は素材の柱は用意してもらい、それらを転移で運びセーヴ自身で空間能力を使い彫り上げたものだ。
その白い像の前に純白に輝くアタッシュケースが地面に落ちていた。
セーヴがケースに近づくと独りでにケースが開き光を纏いながら中の荷物が浮いていた。
「純白の、片手剣とビームライフル・・・。」
手に取ると光は消えたが素材のせいかどちらも輝いて見える。
ケースには籠姫と愛の名前がローマ字で記載されている。
2つの武器のステータスが表示される。
[白の想い(剣)]
鞘には細かい装飾が施されており、この世の物とは思えないほど美麗で白く輝いている。
装飾はまるで結婚式で見かけそうな天界っぽい雰囲気で自然の葉や枝が絡みついているようなデザインだ。
剣自体にはシンプルな装飾しか施されていないが鍔は荘厳さが伺える。
[白の愛(銃)]
ビームライフル。連射式とスナイパーライフルの切替えが可能。
無駄な装飾はないがこちらも全て純白に輝いている。
[共通項目]
●<素材> 不明
●<攻撃力> ステータスに依存
●<不壊、不汚>
●<セーヴ専用武器> セーヴ以外は効力を発揮しない。
●<スキル無効> 剣とビーム・銃本体に触れた部分のみ。
●<破邪> 持ち主を害する効果をはじく。同じく剣とビーム・銃本体に触れた部分のみ。
●<引き寄せ> 武器は所有者が命じれば手元に戻る。
●<分裂> 魔力を込めた分だけ分裂する。
●<サイズ変更> 魔力を込めた分だけ大きくしたり小さくしたりできる。
「セーヴ、その銃だけしばらく貸して頂くことは可能ですか?」
「僕以外には使えないようですがいいのですか?」
「構造的に私達の技術よりも遥か先を行っていると見受けられます、その一部分でも解析して私達の武器に取り入れたいのです。勝率は少しでも高いほうがいいですから。」
「わかりました。役立ててもらって大丈夫です。」
セーヴは銃を転送した後、剣を既存の市販製品のものから純白の剣に取り換えた。
「セーヴ様に金棒ですね!」
メディカが嬉しそうに話しかけてきた。
「いや、これを使っても神谷って奴には勝てないだろうね。」
セーヴは苦笑いして答えた。
「そうですか・・・。」
メディカは残念そうに、しゅんと俯いてしまった。
「パトリーノ様、もう敵はいつ来てもおかしくないのですよね?僕は至急兵の方々とレベリング島に行こうと思います。」
セーヴは像の間に見える、突然現れた島を見ながらそう言った。
「兵はすでに招集してあります。座標を送るのでそちらに向かってください。」
セーヴは仲間の方を向いた。
「ということだから僕は先にレベリング島に行くよ。本当はこんなこと言ったらダメなんだけど、殺されそうになったらボット族の島民を盾にしてでも生き延びてほしい。僕からしたら皆の命のほうが大事なんだ。」
「そんなこと誰もしないわよ。」
エレガンテコが苦笑しながら笑った。
「だろうね。」
「俺はいいんですかいボス。」
ジョナサンが意地悪な顔をしながらニヤニヤ笑っている。
「お前は駄目だ。けど島民を盾にするのは駄目だが逃げるのは良いよ。できれば誰かを助けた上で逃げることができれば満点だ。」
「了解だ。」
セーヴはメディカを抱きしめた。
「君はあらゆる手段を使ってでも生きてくれ。君がいなくなるのだけは許容できない。敵の標的リストには僕とメディカがメインに載っているらしい。わかってるよね。」
「皆さんもいるので大丈夫ですよ。助け合って何とかしますセーヴ様。」
そう、セーヴほどではないがメディカの身体スペックもボット族とはいえど10歳ではありえない数値。
今はまだイスト達ほどの脅威ではないが、未来の危険な種として見られている。
悠久の時を生きるイスト達と同じ伝説級にわずか10歳で到達しているので十分にイレギュラーな存在ではある。
しかしまだイスト達ほどの強さはない。
伝説級の最底辺といったところの強さだ。
「それじゃ皆、行ってくるよ。可能な限り早く戻る。」
仲間達が見送りの言葉を言ったあとセーヴはその場から消えた。
セーヴが指定された座標値に行くと、そこは軍事施設で飛行機型の戦闘機や陸用の虫型や恐竜型の戦闘機が動いていた。
予定通り1万程の兵がセーヴを待っていた。
「こんにちは。」
後ろから戦闘の装備を着た兵士に話しかけられた。
傍にさらに2人の男がいた。
「兵ナンバー15363のブライアン・ウィリアムズです。工兵でレックス型兵器の搭乗者をしています。今回セーヴ様の班として動くことになっている1人です。」
「敬語はお互い辞めよう。命懸けの場所にいくわけだし。僕もブライアンって呼ばせてもらう。」
「OK。わかったよセーヴ。それでこっちの二人が。」
「兵ナンバー119059。衛生兵のイアン・ルイス。」
「兵ナンバー67450。砲兵のカイル・コストナーだ。」
ボット族には上下関係がほとんどない。
あったとしても任務ごとに2,3段階一時的に分かれる程度で一般種のように15段階などには分かれていない。
伝達スピードが必要な時は脳内で通信ができてしまうし、総意や最適解もパトリーノ様の補助もあって意思決定が迅速だからだ。一般種のように出世欲に駆られて身分を取り合って争ったり、感情的になって長期的に関係悪化することもほぼ無い。
ブライアンは人型で黒人の容姿。
イアンはエルフ型で耳は長いが顔つきは日系アメリカ人のようだ。
カイルはドワーフ型で重たい装備をしているせいかかなりの筋肉質で身長はやや低めの160cm程度。
髭は密度が濃い剛毛だ。
「僕達3人とここの兵は皆じゃないがセーヴに昔救われたことがある奴が多いんだ。」
ブライアンが笑顔でセーヴの背中を少し叩いた。
「そうなの?悪いけど覚えてないな。」
「ほぼ会ってはいないからね。崖の下敷きになってしまった人やモンスターに殺されそうになったところで直接転移で飛ばされているから。」
「なるほど。戦争がなければ一緒にパーティーでもしたかったね。」
「ほんとに。ところで軍としての動き方は理解できてる?」
「あぁマニュアルなら既に頭にインストールしている。」
「これ、あんたの服だ。」
イアンが黒いスーツを渡してきた。
「お前さんは重装備や重機を利用して戦うタイプではないだろうから、最低限のインナースーツだけでいいと思っているが、それで合っているか?必要なら他の装備も用意するが。」
カイルが装備について提案してきた。
「いや、身軽な方がいいからこれだけでいいよ。ありがとう。」
セーヴは来ている服の下に黒いインナースーツを着た。
スーツは全身を覆っているのでパーカーや七分丈のゆったりしたパンツから一部見えているが、デザイン的には悪くない。
グローブやブーツはそのまま軍事行動に使えるレベルのものなのでそのまま使うとする。
全員の準備が完全に終わるまで待っていると通信が頭に入ってきた。
音声だけでなくバストアップの映像だ。
「今回ナビゲーターの代表を務めるチェリス・イグドラーシルよ。皆久しぶり、また会えて嬉しいわ。」
脳内の通信インターフェースの画面では左にチェリス、右上に自分のバストアップの映像が映っている。
他のメンバーも同様だろう。
周囲では歓迎の声や指笛の音が鳴り響く。親しい兵達も多いようだ。
「そして見習いでセーヴ様の組織の1人であるティナ・ビブリーノちゃんが今日からナビゲートの人員として増員されたわ。一般種だけどいい子だから皆恐い顔して脅したりしたら駄目よ。」
周囲からは笑い声や、よろしくな、という声が聞こえる。
特に問題はなさそうだ。
「チェリスさんの手がいっぱいなときとかにフォローという形でお手伝いすることになると思います。よろしくお願いしましゅ!」
緊張しているせいか強く噛んでいる。
大丈夫かよとか、結婚してくれとか、アナウンサー目指せとか意味不明な言葉が笑いながら飛んでいる。
ティナはボット族ではないので頭に通信機器を装備している。
「セーヴ、全員の細かいのも含め準備が整ったよ。」
ブライアンが転移の準備が整ったことを教えてくれた。
「陸軍がほとんどで海軍や空軍の兵と設備は少な目って感じかな。」
「今回は島の調査が任務だから海と空から最初見たりはしても最終的には陸に上がるからな。あと事前に陸、海、空それぞれからドローンを飛ばしたが正体不明の何かに全部潰されている。虫サイズのドローン何なんだがな。確認できたのは羽毛が生えていることと鉤爪があることのみだ。恐らく鳥型のモンスターか何かかもな。」
イアンが最新の情報をくれた。
「あとは行ってみないとわからないか。」
セーヴは軍全てを視界に捉え、転移を行う。
【5カ国連合軍 待機場所】
連合軍は現在空と海からの通常の移動でコンチリアント王国に向かう者達と転移で一気に奇襲をかける者たちで分かれている。
この連合軍待機所では各国の王や軍の責任者などが勢揃いしていた。
「今回の戦、大国スパレクト真聖王国と転移者集団国家のプレイフォルテが組んでくれるとなれば圧勝でしょうな。」
キーウ共和国の代表ラフルゾが真顔で呟く。
「うちとプレイフォルテがやや取り分を多くもらえるとのことであるし、こちらとしても儂の花嫁を攫った愚かな国を放置しておくつもりはないんでなぁ。ここまでの連合が組めるとなれば話にも乗ろう。」
大国スパレクト真聖王国の教皇猊下アーチーは片手に酒、片手に美女の乳を揉みながら侍らせている。
「俺らのところだけでも十分な気がするがまぁ時短かねぇ。なぁ神谷?」
プレイフォルテの代表、大沼誠二。
最近なったばかりだが階級は幻想級にまで上り詰めた。
神谷はプレイフォルテで一番強いが人材管理などは面倒という理由で階級は一般兵。
大沼は代表なのでボスクラス。
つまり大沼に殺された場合は蘇生がNPCであってもできない。
蛇足だがプレイフォルテでは生前の名前に改名している者や産んでくれたNPCを殺害しているものが多い。
「それいうたらわいだけでも十分やん。神話級他におらんのやろ?範囲攻撃苦手やから目の前の山切るくらいまでしかできんけどGPツールやら科学やらで抵抗されても3,4か月くらいあればソロでもいけるで。」
トビーよりもさらに強めの関西弁なのがこの神谷将継である。
「それだと旦那方からしたら長いんだってよ。食い物とかの持久力も向こうのが上みたいだからな。それにそういう見積もりも絶対じゃないだろ、スキルとかある世界だとよ。」
「へーい。まぁ楽しませてもらいます。」
神谷はどうということはない仕事、といった風だ。
各々軽く会話していると一人の兵が連絡をしてきた。
報告を受けたド・ボラン連邦共和国の軍務委員代表のジフォーが口を開く。
ジフォーは今回キーウ国とツエハ国を含めた3カ国の総指揮も任されている。
スパレクトとプレイフォルテは行動を共にしたとしても独自の指揮系統を持つ。
「コンチリアント王国のすぐ傍にさらに小さな島が急遽現れ、幻想級の子供と兵約1万はそちらに向かったようです。」
「では対幻想級で組んだ専門の大部隊はそちらに向かうということですな。スパレクトとプレイフォルテの皆様は。」
ツエハ共和国の軍務委員代表ファントが確認をとる。
「あぁ俺達プレイフォルテとスパレクト国は先に国落としを進めておく。幻想級がいないなら更に楽になるだろうよ。」
「・・・・・・・。奴らは平均ランクが2,3上だ。総合的な人数は少ないとはいえ俺達にしぼって囲んで来たら厄介だぞ。」
スパレクト真聖王国の将軍ブレンダ・J・アンソニー。
伝説級。
後ろ髪は三つ編みで茶色に近い金髪。天族だが翼はないタイプだ。
今もアーチーに胸やお尻を触られたり舐められたりしているが、嫌がる気配はまったくない。
彼女は妹が病気の時に国家のポイントを大量に消費し妹を救ってくれたアーチーに恩を感じ、妹は兵ではなく一般職だが妹と共に兵としても愛人としても仕えている。
「あんたも伝説級なんだ。問題ねぇよ。っていうかアーチーの旦那。ペロペロ舐めるのは俺らがいないときにお願いしますよ。こっちはこれから戦場なんでね。目に毒ってやつなんですよ。」
大沼がやれやれといった風に呆れている。
「そりゃ悪なんだ。ブレンダ、戦の前に一発儂の相手をせよ。」
「はい。喜んで。」
強襲のタイミングはまだ少しばかりずれそうだ。
【レベリング島 島の端の海岸近くの草原】
犬のようにお腹を見せて降参のポーズをとっている一匹のヒヨコが大勢の兵士に武器を向けられている所だった。
------------------------------------------------------------
次回 レベリング島
今回の話はブレンダちゃんとヒヨコちゃんがキモでしたね。ペロペロ。
大きな地鳴りの音が聞こえる。
セーヴはパトリーノ以外のその場の全員と共に像の前に転移した。
籠姫と愛の像は素材の柱は用意してもらい、それらを転移で運びセーヴ自身で空間能力を使い彫り上げたものだ。
その白い像の前に純白に輝くアタッシュケースが地面に落ちていた。
セーヴがケースに近づくと独りでにケースが開き光を纏いながら中の荷物が浮いていた。
「純白の、片手剣とビームライフル・・・。」
手に取ると光は消えたが素材のせいかどちらも輝いて見える。
ケースには籠姫と愛の名前がローマ字で記載されている。
2つの武器のステータスが表示される。
[白の想い(剣)]
鞘には細かい装飾が施されており、この世の物とは思えないほど美麗で白く輝いている。
装飾はまるで結婚式で見かけそうな天界っぽい雰囲気で自然の葉や枝が絡みついているようなデザインだ。
剣自体にはシンプルな装飾しか施されていないが鍔は荘厳さが伺える。
[白の愛(銃)]
ビームライフル。連射式とスナイパーライフルの切替えが可能。
無駄な装飾はないがこちらも全て純白に輝いている。
[共通項目]
●<素材> 不明
●<攻撃力> ステータスに依存
●<不壊、不汚>
●<セーヴ専用武器> セーヴ以外は効力を発揮しない。
●<スキル無効> 剣とビーム・銃本体に触れた部分のみ。
●<破邪> 持ち主を害する効果をはじく。同じく剣とビーム・銃本体に触れた部分のみ。
●<引き寄せ> 武器は所有者が命じれば手元に戻る。
●<分裂> 魔力を込めた分だけ分裂する。
●<サイズ変更> 魔力を込めた分だけ大きくしたり小さくしたりできる。
「セーヴ、その銃だけしばらく貸して頂くことは可能ですか?」
「僕以外には使えないようですがいいのですか?」
「構造的に私達の技術よりも遥か先を行っていると見受けられます、その一部分でも解析して私達の武器に取り入れたいのです。勝率は少しでも高いほうがいいですから。」
「わかりました。役立ててもらって大丈夫です。」
セーヴは銃を転送した後、剣を既存の市販製品のものから純白の剣に取り換えた。
「セーヴ様に金棒ですね!」
メディカが嬉しそうに話しかけてきた。
「いや、これを使っても神谷って奴には勝てないだろうね。」
セーヴは苦笑いして答えた。
「そうですか・・・。」
メディカは残念そうに、しゅんと俯いてしまった。
「パトリーノ様、もう敵はいつ来てもおかしくないのですよね?僕は至急兵の方々とレベリング島に行こうと思います。」
セーヴは像の間に見える、突然現れた島を見ながらそう言った。
「兵はすでに招集してあります。座標を送るのでそちらに向かってください。」
セーヴは仲間の方を向いた。
「ということだから僕は先にレベリング島に行くよ。本当はこんなこと言ったらダメなんだけど、殺されそうになったらボット族の島民を盾にしてでも生き延びてほしい。僕からしたら皆の命のほうが大事なんだ。」
「そんなこと誰もしないわよ。」
エレガンテコが苦笑しながら笑った。
「だろうね。」
「俺はいいんですかいボス。」
ジョナサンが意地悪な顔をしながらニヤニヤ笑っている。
「お前は駄目だ。けど島民を盾にするのは駄目だが逃げるのは良いよ。できれば誰かを助けた上で逃げることができれば満点だ。」
「了解だ。」
セーヴはメディカを抱きしめた。
「君はあらゆる手段を使ってでも生きてくれ。君がいなくなるのだけは許容できない。敵の標的リストには僕とメディカがメインに載っているらしい。わかってるよね。」
「皆さんもいるので大丈夫ですよ。助け合って何とかしますセーヴ様。」
そう、セーヴほどではないがメディカの身体スペックもボット族とはいえど10歳ではありえない数値。
今はまだイスト達ほどの脅威ではないが、未来の危険な種として見られている。
悠久の時を生きるイスト達と同じ伝説級にわずか10歳で到達しているので十分にイレギュラーな存在ではある。
しかしまだイスト達ほどの強さはない。
伝説級の最底辺といったところの強さだ。
「それじゃ皆、行ってくるよ。可能な限り早く戻る。」
仲間達が見送りの言葉を言ったあとセーヴはその場から消えた。
セーヴが指定された座標値に行くと、そこは軍事施設で飛行機型の戦闘機や陸用の虫型や恐竜型の戦闘機が動いていた。
予定通り1万程の兵がセーヴを待っていた。
「こんにちは。」
後ろから戦闘の装備を着た兵士に話しかけられた。
傍にさらに2人の男がいた。
「兵ナンバー15363のブライアン・ウィリアムズです。工兵でレックス型兵器の搭乗者をしています。今回セーヴ様の班として動くことになっている1人です。」
「敬語はお互い辞めよう。命懸けの場所にいくわけだし。僕もブライアンって呼ばせてもらう。」
「OK。わかったよセーヴ。それでこっちの二人が。」
「兵ナンバー119059。衛生兵のイアン・ルイス。」
「兵ナンバー67450。砲兵のカイル・コストナーだ。」
ボット族には上下関係がほとんどない。
あったとしても任務ごとに2,3段階一時的に分かれる程度で一般種のように15段階などには分かれていない。
伝達スピードが必要な時は脳内で通信ができてしまうし、総意や最適解もパトリーノ様の補助もあって意思決定が迅速だからだ。一般種のように出世欲に駆られて身分を取り合って争ったり、感情的になって長期的に関係悪化することもほぼ無い。
ブライアンは人型で黒人の容姿。
イアンはエルフ型で耳は長いが顔つきは日系アメリカ人のようだ。
カイルはドワーフ型で重たい装備をしているせいかかなりの筋肉質で身長はやや低めの160cm程度。
髭は密度が濃い剛毛だ。
「僕達3人とここの兵は皆じゃないがセーヴに昔救われたことがある奴が多いんだ。」
ブライアンが笑顔でセーヴの背中を少し叩いた。
「そうなの?悪いけど覚えてないな。」
「ほぼ会ってはいないからね。崖の下敷きになってしまった人やモンスターに殺されそうになったところで直接転移で飛ばされているから。」
「なるほど。戦争がなければ一緒にパーティーでもしたかったね。」
「ほんとに。ところで軍としての動き方は理解できてる?」
「あぁマニュアルなら既に頭にインストールしている。」
「これ、あんたの服だ。」
イアンが黒いスーツを渡してきた。
「お前さんは重装備や重機を利用して戦うタイプではないだろうから、最低限のインナースーツだけでいいと思っているが、それで合っているか?必要なら他の装備も用意するが。」
カイルが装備について提案してきた。
「いや、身軽な方がいいからこれだけでいいよ。ありがとう。」
セーヴは来ている服の下に黒いインナースーツを着た。
スーツは全身を覆っているのでパーカーや七分丈のゆったりしたパンツから一部見えているが、デザイン的には悪くない。
グローブやブーツはそのまま軍事行動に使えるレベルのものなのでそのまま使うとする。
全員の準備が完全に終わるまで待っていると通信が頭に入ってきた。
音声だけでなくバストアップの映像だ。
「今回ナビゲーターの代表を務めるチェリス・イグドラーシルよ。皆久しぶり、また会えて嬉しいわ。」
脳内の通信インターフェースの画面では左にチェリス、右上に自分のバストアップの映像が映っている。
他のメンバーも同様だろう。
周囲では歓迎の声や指笛の音が鳴り響く。親しい兵達も多いようだ。
「そして見習いでセーヴ様の組織の1人であるティナ・ビブリーノちゃんが今日からナビゲートの人員として増員されたわ。一般種だけどいい子だから皆恐い顔して脅したりしたら駄目よ。」
周囲からは笑い声や、よろしくな、という声が聞こえる。
特に問題はなさそうだ。
「チェリスさんの手がいっぱいなときとかにフォローという形でお手伝いすることになると思います。よろしくお願いしましゅ!」
緊張しているせいか強く噛んでいる。
大丈夫かよとか、結婚してくれとか、アナウンサー目指せとか意味不明な言葉が笑いながら飛んでいる。
ティナはボット族ではないので頭に通信機器を装備している。
「セーヴ、全員の細かいのも含め準備が整ったよ。」
ブライアンが転移の準備が整ったことを教えてくれた。
「陸軍がほとんどで海軍や空軍の兵と設備は少な目って感じかな。」
「今回は島の調査が任務だから海と空から最初見たりはしても最終的には陸に上がるからな。あと事前に陸、海、空それぞれからドローンを飛ばしたが正体不明の何かに全部潰されている。虫サイズのドローン何なんだがな。確認できたのは羽毛が生えていることと鉤爪があることのみだ。恐らく鳥型のモンスターか何かかもな。」
イアンが最新の情報をくれた。
「あとは行ってみないとわからないか。」
セーヴは軍全てを視界に捉え、転移を行う。
【5カ国連合軍 待機場所】
連合軍は現在空と海からの通常の移動でコンチリアント王国に向かう者達と転移で一気に奇襲をかける者たちで分かれている。
この連合軍待機所では各国の王や軍の責任者などが勢揃いしていた。
「今回の戦、大国スパレクト真聖王国と転移者集団国家のプレイフォルテが組んでくれるとなれば圧勝でしょうな。」
キーウ共和国の代表ラフルゾが真顔で呟く。
「うちとプレイフォルテがやや取り分を多くもらえるとのことであるし、こちらとしても儂の花嫁を攫った愚かな国を放置しておくつもりはないんでなぁ。ここまでの連合が組めるとなれば話にも乗ろう。」
大国スパレクト真聖王国の教皇猊下アーチーは片手に酒、片手に美女の乳を揉みながら侍らせている。
「俺らのところだけでも十分な気がするがまぁ時短かねぇ。なぁ神谷?」
プレイフォルテの代表、大沼誠二。
最近なったばかりだが階級は幻想級にまで上り詰めた。
神谷はプレイフォルテで一番強いが人材管理などは面倒という理由で階級は一般兵。
大沼は代表なのでボスクラス。
つまり大沼に殺された場合は蘇生がNPCであってもできない。
蛇足だがプレイフォルテでは生前の名前に改名している者や産んでくれたNPCを殺害しているものが多い。
「それいうたらわいだけでも十分やん。神話級他におらんのやろ?範囲攻撃苦手やから目の前の山切るくらいまでしかできんけどGPツールやら科学やらで抵抗されても3,4か月くらいあればソロでもいけるで。」
トビーよりもさらに強めの関西弁なのがこの神谷将継である。
「それだと旦那方からしたら長いんだってよ。食い物とかの持久力も向こうのが上みたいだからな。それにそういう見積もりも絶対じゃないだろ、スキルとかある世界だとよ。」
「へーい。まぁ楽しませてもらいます。」
神谷はどうということはない仕事、といった風だ。
各々軽く会話していると一人の兵が連絡をしてきた。
報告を受けたド・ボラン連邦共和国の軍務委員代表のジフォーが口を開く。
ジフォーは今回キーウ国とツエハ国を含めた3カ国の総指揮も任されている。
スパレクトとプレイフォルテは行動を共にしたとしても独自の指揮系統を持つ。
「コンチリアント王国のすぐ傍にさらに小さな島が急遽現れ、幻想級の子供と兵約1万はそちらに向かったようです。」
「では対幻想級で組んだ専門の大部隊はそちらに向かうということですな。スパレクトとプレイフォルテの皆様は。」
ツエハ共和国の軍務委員代表ファントが確認をとる。
「あぁ俺達プレイフォルテとスパレクト国は先に国落としを進めておく。幻想級がいないなら更に楽になるだろうよ。」
「・・・・・・・。奴らは平均ランクが2,3上だ。総合的な人数は少ないとはいえ俺達にしぼって囲んで来たら厄介だぞ。」
スパレクト真聖王国の将軍ブレンダ・J・アンソニー。
伝説級。
後ろ髪は三つ編みで茶色に近い金髪。天族だが翼はないタイプだ。
今もアーチーに胸やお尻を触られたり舐められたりしているが、嫌がる気配はまったくない。
彼女は妹が病気の時に国家のポイントを大量に消費し妹を救ってくれたアーチーに恩を感じ、妹は兵ではなく一般職だが妹と共に兵としても愛人としても仕えている。
「あんたも伝説級なんだ。問題ねぇよ。っていうかアーチーの旦那。ペロペロ舐めるのは俺らがいないときにお願いしますよ。こっちはこれから戦場なんでね。目に毒ってやつなんですよ。」
大沼がやれやれといった風に呆れている。
「そりゃ悪なんだ。ブレンダ、戦の前に一発儂の相手をせよ。」
「はい。喜んで。」
強襲のタイミングはまだ少しばかりずれそうだ。
【レベリング島 島の端の海岸近くの草原】
犬のようにお腹を見せて降参のポーズをとっている一匹のヒヨコが大勢の兵士に武器を向けられている所だった。
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次回 レベリング島
今回の話はブレンダちゃんとヒヨコちゃんがキモでしたね。ペロペロ。
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僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
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