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第5章「五ヶ国襲撃編」

第25話「開戦」

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「セーヴ。数日後には戦争が始まります。」
 セーヴはBBQメンバーとチュートリアルメンバー、つまり組織の全社員とパトリーノ様がいる施設に来ていた。
「戦争・・・ですか。」
 俺を含めて戦争を経験していないメンバーは驚きと戸惑いがうかがえる。

「今回はセーヴがいるから余裕だろ。」
 エンヴィオは余裕そうな態度だ。
「いえ、今回は相手に神話級がいることが諜報員の調べで明らかになりました。兵の数も過去最大規模です。」

「神話級!?本当にそんな者がおるんですかい。」
 トビーとイザベラも招集されてこの場にいる。
 メンバーの一員としてここに招集されたとき二人は胃薬を飲んできたのは言うまでもない。

「名を神谷将継かみやまさつぐ。この世界で最強国家を名乗るプレイフォルテという国の一人とのことです。強いにも関わらずボスクラスではありませんので国への帰属意識は低いと考えられます。個人で傭兵のようなことをしているようです。その他戦力などの総合的な情報を表示します。」
 パトリーノがそういうと目の前に情報が表示された。
 ボット族であれば脳内にデータを送信するだけでいいのだが、一般種族のメンバーもいるのでその配慮だ。


【五ヶ国連合軍】
◆参加国
◇キーウ共和国
◇ツエハ共和国
◇ド・ポラン連邦共和国
◇大国スパレクト真聖王国(途中から参加表明)
◇プレイフォルテ
 転生者のみの国。転生者の強さが上位約100名のみ帰属。
◆保有軍
 キーウ共和国、ツエハ共和国、ド・ポラン連邦共和国は各国約100万の正規軍人。(計300万)
 大国スパレクト真聖王国から200万人。
 各国の一般市民も大勢参加しており合計約750万人。
 対してコンチリアント王国、約20万。


「あのキモオヤジ・・・。」
 責任を感じているのだろう。ジュリアがデータを睨み見る。
「ここまでの戦力差は過去一度もないわね。」
 チェリスの発言に他の英雄のメンバーも頷く。

「ランクがたった一つ違うだけでどういう結果になるかは、セーヴ、あなたならよくわかっていますね。」
 セーヴの握りこぶしがギリギリと音を出す。
 イストと戦った時の真逆だ。
 相手が攻撃は一部禁止、移動範囲の制限などの大きな枷をいくつかつけた上で、こちらの攻撃を見切られる前に早期決戦。
 そういう状況でないとこちらは瞬殺されるレベルということだ。

「人数は大きく負けていますが、一般種とボット族との平均ランク差は上等級と元帥級で3つもあり、科学力もこちらが大きく勝っています。
 ただし転生者のみのプレイフォルテは五大暦の始まりから存在するとされ、連合軍はこちらにはない大量のGPポイントおよびGPツールを保有しています。
 神話級の神谷に関しては範囲攻撃特化型ではなく、1対1に特化した者らしいので、かなりの期間粘ることはできますが、何度シミュレーションをしても勝率は1~2割。
 勝つパターンとしては全国民で連合軍をほぼ早期に壊滅させ、神話級やプレイフォルテのメンバーに対しては生き残った国民全員の総攻撃で何とか数百名生き残れればと言ったものです。」

「大量破壊兵器は、どうなのでしょうか?コンチリアント王国にはそういった物があると聞いたことがありますが。」
 ジェンマ共和国代表の息子らしくこういった情報も見知っているマシューが聞いてきた。
「すでに各国の首都に向けて兵器を使用しました。
 しかしこちらは平和主義で大量の死人がでることを嫌い、過去の戦争から首都以外には攻撃しないと見透かされており、すでにどこの首都ももぬけの殻です。
 首都は捨てたにも関わらず侵攻軍は本来国を守るはずのGPツールでのシールドを所持しており数は減っていません。」
「嫌な信頼感ね。」
「ね~。」 
 セクサがおでこに指を当ててやれやれといった風だ。
 マミーも呆れている。

「敵国たちは一般市民も大勢参加しているのはなぜですか?」
 セーヴが冷静にデータを見て聞いた。
「この戦争を企画した3国はこの約10年。
 この国と戦うことを理由に長年圧政や洗脳を施してきた影響ですね。
 国民の生活が苦しくなったのも全てコンチリアント王国のせいだと、そしてこの勝てる見込みが大きい戦争に参加すれば奪ったものは好きにしてもよいし、奴隷確保も自由と謳っているせいでしょう。
 ボット族一人に対して最低でもGPツールで強化した50人以上の兵士でかかり生け捕りにすればそれをさらに自分達の戦力として同士討ちさせる。
 こちらも正規軍人だけでは足りないため一般人も戦闘に参加することになるでしょう。」

「そこまでして奪いたいであるか。」
「科学力、美貌、島の立地。まとめて手に入るなら長い目で見ればプラスになるってか?どうせ勝って山分けしてもまた奪い合うだろうに。」
 改めてボット族の戦争というものを感じていくトゥルノと、珍しく憂いのある表情で呟くジェレミー。
 武力重視の帝国出身とはいえ、思うところがあるようだ。

「ジュリアとプリノ以外の一般種の皆は帰国するべきだ。」
 セーヴは冷静に判断した。
 一般種のメンバーではいくら短期集中で鍛えたとはいえ、この戦争では役に立たない。
 この発言に思わずダグはほっとした表情を浮かべた。

「今からでも私が帰国すれば!」
 ジュリアが提案する。
「それは意味がないよ。今さら止まらない。多大なコストを出して進軍や準備をしているだろうし。」

「わ、私はここに残ります!」
 ティナが強く発言した。
 ダグは「えっ。」という表情に変わった。

「ここでセーヴ様たち見捨てたらうちらひどい女じゃん。」
「ねぇー。邪魔にならないようにシェルターとかにはいるつもりだけどボット族の子供守るくらいはするしぃ。」
 エファとエフォも残ることを宣言する。

「父には連絡をさせて頂きたいですが私もそのつもりですわ。」
「カレピッピ残して逃げるとかまじありえないから。」
 ステファニアとクラウディアも同様だ。
 ダグは下唇を噛みしめて涙をボロボロ流して泣いている。
 感動しているからではない。
 戦争とは無縁の場所に逃げれると思ったのに、できないと悟ったからだ。
 彼は今後もずっとず~~~~と流される人生である。

 マシューとジェレミーもお互いの顔を見た後、元婚約者のステファニアとクラウディアの方を見た。
 二人の心境としてもダグ程ではないにしても正直逃げ出したかった。

 全世界の歴史をかえりみてもここまでの連合軍でこんな小国を襲うなんてものは見たことがない。
 こういった時強いのはやはり女性である。
 冷静に論理的に考える傾向が強い男性ほど自分の想像に屈してしまう。
 しかし好きな女に背とお尻を見せて逃げ出すわけにもいかない。
 彼女達の心を射止めたくてここにいるのだから。
 信頼を損なうことはできない。

「俺も残るぜ・・・。」
「私も残りましょう、お二人を危険に晒すわけにはいきません・・・。」
 ふいっと女性達から顔を逸らす二人。
 そこにはダグを含めた泣きべその3人がいた。
 ほぼ3人とも同じ顔をしており、まるで小さい頃から一緒の兄弟のようだ。

 強がり3兄弟、戦争に、推して参る。ででん!とテレビならここで効果音が入る所だ。

「主のために微力ながら力を尽くします。」
「悪い奴いっぱいいるならよぉ~。犯し放題じゃねぇか。」
 ジョバンニとジョナサン。
 名前は似ているが性格の傾向は真逆であり、ジョナサンは楽しみにしている節さえある。

「パトリーノ様。僕が各国の重鎮を暗殺して指揮系統を乱すというのはどうでしょうか?」
「悪くはない提案です。しかし相手側に神話級がいますし、こちらが全滅する可能性の方が高いですね。何より空間魔法の対策もGPツールである程度はとられているでしょう。それにまだあれを試していません。勝率が高くても2割に満たないのであれば、シミュレーションにも組み込んでいないそれらに賭けてみた方がいいでしょう。」

「女神の像と、レベリング島・・・。」
「そうです。国民の総意もとれています。勝っても負けても失うものが大きくなりすぎる戦争です。賭けられるものがあるならば賭けましょう。本来であれば島の調査と戦争は分けて行いたかったですが仕方ありません。」


 それから俺達は細かいことについて話し合った。
 レベリング島に行くのは俺と正規軍1万人。
 戦闘力が高いメディカや英雄組は守りに絶対にいるので付いてくることはできない。
 島の調査に人手がいるとはいえ国の戦力の20分の1も貸してもらうことに申し訳なさがある。
 しかしその分早めに調査を行い、結果を持ち帰って来て欲しいという考えの裏返しでもあるので責任は重大だ。


「それではこれより国民の総意を持って、セーヴ・アップワーズをコンチリアント王国の国王に任命します。」


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次話「女神の像」
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