上 下
20 / 26
第3章「救出国外編(10歳時)」

第20話「ジュリアとプリモの移住について」+作者あとがき

しおりを挟む
 一同、残った大国スパレクト真聖王国教皇猊下のアーチーと大聖女ジュリアを見る。

「大聖女はやらんぞ。そいつは丁度今年、儂の花嫁とするつもりでおったのでな。」
 ジュリアは悍ましいと言わんばかりに身震いした。

「であれば、こちらとしては不干渉でチュートリアル地域に放置ですかね。」
「あぁこちらも戻り次第転移ですぐに迎えに行くとしよう。お前はこの大国を敵に回したくなければ、大聖女を放置予定の場所で見張っておれ。」
 つまり逃がしはしないと言うわけだ。

「お断りします。そこまでする義理はない。」
 頭の中で大国を敵に回すかもしれない可能性についてパトリーノ様に謝った。
「構いません。こういった輩は歴史上、幾度となく攻め入ってきました。また返り討ちにするだけの話です。今回の件がなくても強欲に我らの土地や民を奪いに来るでしょう。」

 セーヴが断ると大聖女が口を開いた。
「私にそこまで拘る理由もないはずです。聖女や大聖女など、どこの国もただの肩書。国から多くのポイントを支給され、回復魔法や光魔法を多く収めているだけの宗教上の神輿であり、現実はただの一般人です。特別な才があるわけでもないではありませんか。」

「だからこそだろう。そこまで国の税の一種であるGPをくれてやったのだから、このまま国の神輿として、希望として教皇である儂の嫁となるべきである。」
「古い考えですね。そもそもジュリアは望んで聖女になったの?」
 セーヴはジュリアに聖女になった経緯を聞いた。

「転生してしばらくしてからすぐに両親を亡くしました。以来、孤児院で過ごしているうち、いつの間にか何度も役職を昇格されることがありました。そして花嫁の話がでたときに私はプリモと一緒に逃げました。」
 話し方は聖女のままだが、セーヴを見つめるその眼は現実世界の怯える一般女性のそれだった。
「そうか。」

「手引きしたお前は罪人共の慰み者として送ってやろうかのぅ。」
 そういってアーチーはプリモの方を見た。
 プリモの表情は戦慄している。

「ただ、見逃してやってもいい。聖女と騎士を見逃す代わりにお前の横に座っている女2人をよこせ。ボット族は見た目もよく、頑丈で長生き、知識も豊富。国が買えるほどの奴隷もいるという。それならば見逃してやってもよい。」

「豚に劣る劣等種が烏滸おこがましい 。」
「下等民族は野犬とでも犯ってろ。」
 チェリスとフェーロは鬼気迫る顔だ。

 セーヴは話を終わらせることにした。
「話は終わりにしましょう。それぞれ元の場所にお返しします。」


 帰国するメンバーだけになった時、ジュリアとプリモが不安そうにこちらを見てきた。
「そんな顔するなよ。ちゃんとコンチリアント王国に送るよ。転生してこんな扱いは可哀想すぎるしね。」
「しかし大国が敵に。」
国と戦うよ。幻想級らしいし。」

 ジュリアとプリモが抱き着いてきた。
 その光景を見たマシューとジェレミーはその光景をじっと見つめた。
 自分一人でも国と戦う。
 いくら幻想級と言えど、絶対の勝利はないのに。
 そう言えてしまう部分に嫉妬を覚えた。


【帰省してからの約半年後】

「セーヴ。数日後には戦争が始まります。」
 パトリーノ様から呼び出された俺は、ボット族は狙われる一族だということを再認識する。
 そして俺はこの長い長い地獄の始まりから、大事なものをいくつも失うことになる。



-------------------------------------------------

[あとがき]
どうも、作者です。
いつも読んでいただきありがとうございます!

第3章も終わり、
次はとても短い第4章、
とても長い第5章が待っています!

この度メインPCが修理から戻ってきたので
イラスト、BGMも制作できたらと思います!

今後もお気に入り、コメント、Twitterフォロー、
作品の拡散お願い致します!!

-------------------------------------------------
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性転換マッサージ

廣瀬純一
SF
性転換マッサージに通う人々の話

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

異世界でスローライフを満喫

美鈴
ファンタジー
タイトル通り異世界に行った主人公が異世界でスローライフを満喫…。出来たらいいなというお話です! ※カクヨム様にも投稿しております ※イラストはAIアートイラストを使用

社長の奴隷

星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)

処理中です...