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第3章「救出国外編(10歳時)」

第15話「鬼気森然」

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 拠点3に着いたセーヴ達は、すんなり入って行った。
 敵はそこら中で倒れているが、歩きやすいようにセーヴは全ての死体を処理していった。
 死体が消えていく様を後ろの10人は驚いて見ていた。
 ある部屋の目の前でメディカとトビー、イザベラ、そして3人が助けた人々がいた。
 人々の視線もセーヴに集まる。

 メディカは一瞬で満面の笑みになったが、すぐに不思議そうな顔をした。
「セーヴ様、お怒りになられてます?あ、服に血が!お怪我をされたのですか!?」
 メディカは心配そうな顔で見つめてくる。
「怒る?そうかもしれない。少し俺にもの変化があってね。ゴミはやっぱゴミだなって思ってさ。血は、返り血が少し次元鎧解除されたときに付着しただけだよ。」
「そうですか、なら後でお着替しましょう。」
 メディカは安心した顔になる。
「ああ、頼む。」

 セーヴの足音がカツンカツンと静かに廊下に響く。
「こりゃあまた、えらい頼もしぃようになってしもうて。」
「ははっ。ほんとにね。でも何事もなく無事でよかったよ。」
 口調は軽い二人。
 しかし、手の震えが止まらない。
 汗が止まらない。

 この彼の。
 セーヴの目が。
 髪はブルーブラックで目の色は青色のはずの彼の目が髪よりも深い黒に見えたからだ。
 しばらくすれば機嫌は直るかもしれないが、今は

「お~~~~~~~い!メディカちゃ~~~~~~~んお話しようぜぇ~~~~~~。」
 近くの部屋の向こうからポップなノリの声が聞こえてきた。

 トビーとイザベラはセーヴの後ろについてきたイケオジ達を見て目を見開いた。
 生きていたのですか!イスト様!

 周囲の空間に重い空気がズンッとのしかかった。
 助けた人達も苦しそうだ。
 メディカとイケオジ連中は苦しんでいる者たちに比べると平静を保っている。
 トビーとイザベラは片膝をついている。

 セーヴが口を開いた。
「おい。トビー。あのバカそうな声は敵か?救出した奴か?敵ならなぜ殺してない?お前でも手古摺てこずる奴だったのか?」
 呼び捨てにされたことなどどうでもいい。
 ため口で話されていることもどうでもいい。
 とにかくキレないでくれと二人は願った。

「きゅ、救出した奴です。」
「解放するべきか否か悩んだから俺とも話合ってから決めようと判断した。ということでいいのか?イザベラ。」
「は、はい。セーヴ様の仰る通りです。」
 二人は生きている心地がしないながらも何とか返答した。
 パトリーノ様に今回のお給料は10倍にしてもらおうと心に決めた二人。
 危険手当は別途だ。
 絶対だ。


 セーヴは部屋に入っていく。
「俺の女に何か用か?」
 セーヴは真顔で悪魔族の男に問いかける。
 空気がさらに重くなる。
 男は思わず、独り言を呟いた。

「こりゃあ、やばいのに手を出しちまった・・・。」
「セーヴ様私のために・・・。」
 メディカは空気も読まずかなり歓喜している。
 それを嫉妬の目で見つめる者が多数救助者の中にはいたが今はそれどころではない。

 セーヴはまるで椅子に座ったようなポーズになり、空中に浮いた。
 片足を立てて座っている。
 見えない空間を作りそこに座り浮かばせたのだ。
 男の首輪は外れ、背中の十字架は急に破壊された。
「ありがとうよ。」

 男は礼を言った。
 しかし体が動かない。
 空中に浮いたままだ。
 男の体はぐいっとセーヴの前に引力で引き寄せられた。

もう一度だけ聞く。俺の女に何か用か?」
 最後にという言葉が全員に重くのしかかる。
 命の重みだ。

「メ、メディカちゃ、さんがあまりにも魅力的だったからよ、つい何度も声を掛けちまった。男がいるのは知らなかった。すまねぇ、許してくれボス。」
 男は冷や汗をかきながら謝罪をしている。
 口は悪いが男にとって精一杯の謝罪だった。

「嘘です!私は何度もセーヴ様を愛していると言いました!」
「・・・・・・・・・。」
 全員が思った。
 それ今言うなや、と。

 まず右手の指が消えた。
 次に手、前腕、肘、肩。
 周囲の者、特にトビーとイザベラは戦々恐々とした。
 まさかあの優しく礼儀正しいセーヴがこんな簡単に拷問をするとは思わなかったというのもあるだろう。
 肩からは血が吹き出ている。

「今後、二度と俺に嘘を吐くな。誤魔化しも含める。」
「イエス、ボス。」

「なぜ、この世界に来た?」
 トビーは驚いた。
 鑑定でもプレイヤーかどうかはわからない。
 しかしセーヴは確信を持って聞いている。

「俺は、元の世界で人を殺して女を犯したりしたかった。けど犯罪は向こうではしなかった。それでこっちに来た。来ました。こっちでは殺しても犯しても問題ないような連中がいっぱいいると思っていたが、予想以上に多かった。こっちに来てから手を出したのは死んでも困らないような連中とその女だけだ。善人には手を出してねぇ。つまり俺はいいことをしたんだ。」

「トビー、今こいつがいったことに嘘はないか?」
「ないです。嘘は言ってません。」

「死んでも困らない連中はともかく、ワルの女で何も知らず付き合っていた場合もあるんじゃないのか?」
「確認はしていませんが、あったかもしれない。しれません。」
「今後、クズと付き合っているクズな奴だけに手を出すと誓えるか?」
「誓いますボス。」
「俺の下に着く気はあるか?お前の獲物がいたら分けてやるぞ。」
「ぜひお願いしたい。」
「トビー。」
「はい。嘘はないです。」

 名前を呼ばれただけで即座に対応した。
 自分は今、人間ではない。
 嘘発見器なのだと自分に言い聞かせた。

「最後の質問だ。これでお前がどうなるかを決めよう。」
「今までの悪事は全て単独犯か?」
「イエス。ボス。」

 セーヴは人魚の血の瓶をトビーに投げた。
「治療してやれ。」

 男の腕はみるみる治っていく。
 セーヴの重圧は消えて全員が安堵した。
 続いてセーヴは拠点3の救出者に笑顔で声をかけた。
 その時、一番先頭にいた妖精族の双子の頭に両手を載せた。

「恐い思いをさせてしまってごめんね。無事で何より。ボット族の救命士をしているセーヴ・アップワーズです。今回の救出計画を立てた者だよ。ひとまず皆で休める所に移動しよう。」
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