上 下
10 / 26
第2章「転生後5歳編」

第10話「暗躍」

しおりを挟む
「パトリーノ様、セーヴ・アップワーズが参りました。」
「硬い態度は不要ですよ、セーヴ。生活はどうですか?」
「友達もたくさんできたし、仕事もかなりうまく行っているので順調です。」
「それは何よりです。ここに来たということは前の話の続きですね。」
 パトリーノは話を切り出した。

「はい、まずはレベリング島の話です。王の権限については一時的に僕に頂く形をとり、レベリング島が出現次第、すぐさま権限をパトリーノ様にお返しする、というものです。」
「あなたから害意や虚偽の反応はまったくありませんので、一時の権限移譲は心配しておりません。問題はタイミングですね。レベリング島確保に大量に軍人を配置する場合、西大陸および東大陸の敵国や、今はまだ不干渉の国からでも攻撃を受けるとかなり痛手です。何せただでさえ人数が我が国は少ないですから。」
 大国だと一国で10億人、この国の100倍の人口だ。
 いくら個々のステータスが高かったり、文明が高いとはいえ、守りが薄い時、一気にここに攻め込まれるとどうなるかわからない。
 パトリーノは話を続けた。

「そしてもう一つの話である、特殊な場所であるチュートリアル地域に赴き、レベリング島以外の大量GPの入手方法を探るというもの。この国は結界が作動していますが、常にスキル攻撃は受けています。それだけ気になっている者達が多いということ。ゆえに外に出ればあなたの存在は知られると思っておいた方がいいでしょう。」
「もし私の存在が知られた場合はどうなることが考えられますか?」

「まずステータスの特異性や幻想級という階級ゆえに、あなたが幼いうちに排除しようとする可能性が一番高いでしょう。私達も滅多なことではやられないと思いますが、世界のどこかには転生者だけの集団、国のようなものも存在しているらしいですし、真偽は不明ですがそれとは別に終末級に近い存在もいるといいます。もしそんなものがいれば五大神よりも強いということなので眉唾物ですが、ありえないと完全に切り捨てのもまたどうかと思っています。」

「いくらボット族で幻想級でも今の僕は5歳ですし、確実に賛同が得られる時期がいいですね。レベリング島に関しては、開放できたとしても、予定通りのモンスターでさえ国には有益ですが、僕が求めるGPには何年あっても遠く及びません。それよりも外の世界での情報収集の方が大事なので、成人に近い10歳頃はどうでしょう。」
 
 パトリーノはこの少年がGPさえあれば、R10の枠に入らないスキルを入手できる術を持っているのだと推察している。
 通常は危険視するが、信頼と、長年の分析による信用でそれらは許容している。
「確かに丁度いい頃ですね。では島の外へ出るのは10歳、レベリング島の開放は成人以降としましょう。」
 もうしばらくは、この島で穏やかに暮らすことになった。

***

【5年前、セーヴが誕生する頃。】
 いつものように複数の軍服を着た男たちがコンチリアント王国の監視を複数人で行っていた。
 魂感知、感覚共有、高速鑑定など特殊なスキルを持つものが連携を取り、常にボット族の周囲を監視している。
 すると一人の男が、叫びだした!
「た、大変です。隊長!これを見てください!」
 部下に言われて男は紙に目を通す。

「幻想・・・級!」
 魂が土地に降りる際、ほんの一瞬だがコンチリアント王国のということになる。
 ボット族に攻撃をしかけている国の一つであるキーウ共和国は、戦闘力が高いボット族にどんなものが産まれるのか常に気にかけている。
 そもそもボット族は寿命が永遠に近いほど長いらしく滅多に子供を作らない。
 今日も暇な仕事だと高を括っていたらこんなことが起きるとは。

「何かの間違いではないのか?」
「スキルによる計測ですよ?それに見てくださいスキルランクの記載がありませんし、空間能力というわけのわからないスキル名です。通常は空間です。その空間魔法も珍しいというのに、極めつけはこの女神の祝福と呪い。意味がわからない記載です。ステータスは確かに高いですがボット族の枠をでません。むしろステータスならこちらの鬼型の赤子のほうがよっぽど異常です。」

「今年はどうなっているのだ。産まれた段階で五大神レベルの存在など許しておけば、子供の気まぐれで世界が終わるぞ。友好国である二国と早急に話し合わねばならん。代表にまずは連絡する。」
「ボット族と真正面から戦うとなれば連合軍になりますね。」
 ボット族との戦争は聞いた話でしかないが、相手一人に対してこちらは数十人前後で当たるのが基本らしい。
 想像するだけで気が重くなる兵士だった。

***

 各国の元首と軍務委員会代表の面々が集まった会議。

●キーウ共和国代表ラフルゾ・ベスト48歳狸族、耳と尾以外は人である。
●同国、軍務委員会代表リロゴ・ポテンソ56歳大猿族、ゴリラ顔だが体は人に近い。
●ツエハ共和国代表ヴルポ・ソルキャード41歳狐族。顔も狐そのものである。
●同国、軍務委員会代表、ファントディスプ52歳像族。顔もしっぽも像である。
●ド・ポラン連邦共和国グラティ・カート57歳猫族、猫耳としっぽだけ猫である。
●同国軍務委員会代表ジフォー・エドパ47歳麒麟族。顔もしっぽも麒麟である。

 6人の中年のおっさんが向かい合って話し合うのは当然幻想級の赤子のことだ。
「三国で兵は300万というところか。」
「私が思うに準備に最短で5年。現実的なのは10年でしょうか。」
 ラフルゾとリロゴが話を切り出す。

「空間魔法おそらくR10相当でスキル名の通り能力扱いなら連射が可能。考えたくもないわい。」
「軍で話し合った結果。逃がさないようにするための人質を用意。転移対策で感知役、一撃で仕留めるための火力役、状態異常、呪い、封印などの絡め手役、高起動の陽動、錯乱役、確実に必要なのはスキル無効化役か道具、これら+アルファの役割を作りチームを組ませて襲うのが現実的かと。もちろん捨て駒にもなる覚悟で。あとはこの者が一人の時を狙い、同時にコンチリアント王国も強襲ですな。」

「ははっ!口で言うだけならできそうな気がしてくるの!」
 ヴルポ、ファントは現実的な提案を持ってきていた。

「遅くても10年後の10歳ならまだ成人前で年数的にそこまで他に強いスキルもないだろう。国のポイントを与えてもR7スキルを追加といったところか。」
「あの国は得体が知れません。あと、念には念をいれるなら大量のお金とGPを差し出すことになるでしょうが、転生者の神話級の彼でしょう。探すところから始めねばなりませんが。」
 グラティ、ジフォーもヴルポ達の案を補強していく。

「投資は国が傾くほど大きいが、あの国の者や仕組みを手に入れれば大黒字よ。奴らは見た目が男も女もいいでなぁ。知識も豊富。滅多に手に入りはしないが。」
「幻想級などふざけたものが産まれた以上は今のうちにやるしかありません。この三国が手を合わせれば世界最大国家の規模も超えているのですから。」

 6人はその後も長時間すり合わせを行い、幻想級討伐の準備に入った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

二度目の勇者の美醜逆転世界ハーレムルート

猫丸
恋愛
全人類の悲願である魔王討伐を果たした地球の勇者。 彼を待っていたのは富でも名誉でもなく、ただ使い捨てられたという現実と別の次元への強制転移だった。 地球でもなく、勇者として召喚された世界でもない世界。 そこは美醜の価値観が逆転した歪な世界だった。 そうして少年と少女は出会い―――物語は始まる。 他のサイトでも投稿しているものに手を加えたものになります。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う

月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

男女貞操逆転世界で、自己肯定感低めのお人好し男が、自分も周りも幸せにするお話

カムラ
ファンタジー
※下の方に感想を送る際の注意事項などがございます! お気に入り登録は積極的にしていただけると嬉しいです! ーーーーーーーーーーーーーーーーーー あらすじ    学生時代、冤罪によってセクハラの罪を着せられ、肩身の狭い人生を送ってきた30歳の男、大野真人(おおのまさと)。  ある日仕事を終え、1人暮らしのアパートに戻り眠りについた。  そこで不思議な夢を見たと思ったら、目を覚ますと全く知らない場所だった。  混乱していると部屋の扉が開き、そこには目を見張るほどの美女がいて…!?  これは自己肯定感が低いお人好し男が、転生した男女貞操逆転世界で幸せになるお話。 ※本番はまぁまぁ先ですが、#6くらいから結構Hな描写が増えます。 割とガッツリ性描写は書いてますので、苦手な方は気をつけて! ♡つきの話は性描写ありです! ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 誤字報告、明らかな矛盾点、良かったよ!、続きが気になる! みたいな感想は大歓迎です! どんどん送ってください! 逆に、否定的な感想は書かないようにお願いします。 受け取り手によって変わりそうな箇所などは報告しなくて大丈夫です!(言い回しとか、言葉の意味の違いとか) 作者のモチベを上げてくれるような感想お待ちしております!

処理中です...