潤 閉ざされた楽園

リリーブルー

文字の大きさ
上 下
15 / 366
第一章 学校と洋講堂にて

公園へ

しおりを挟む
 僕は上級生と別れた後、教室前の廊下で、級友たちから、
「瑤、三年生と何を話してたんだよ?」
と興味しんしんのようすで口ぐちに聞かれた。
「あの人、お兄さんにしたい人ランキング、No.1なんだよね」
「へえ」
「知らないの? 去年、文化祭の委員をしていたじゃないか」
「そうだっけ?」
僕は、全然興味がなかった。
「てっきり、誘われてるのかと思ったんだけど。違うの?」
「うん、まあ、そんな話しだったけど」
僕が、おずおずと答えると、みなは、
「えーっ!」
「すげー」
「やっぱり瑶、かわいいからなあ」
みんなは、勝手なことを言って盛り上がっていた。
「そんなんじゃないよ。あの三年生とは、今日初めて話したばっかりなんだから」
僕は言った。潤と洋講堂であったことは、まだ誰も知らない。瑶と潤だけの秘密だ。
 潤が学校でつれないのは寂しいけど、でも、こんな風に秘密を共有してる感じもいいな。早くみんなに自慢したい気もするけれど、当分は、邪魔されないように秘密にしておいて正解かも。
 あの三年生は勘付いたから、僕と潤の仲を裂こうとしに来たんだろうな。そんな誘惑に僕が引っかかるわけないのに。でも気をつけよう。

 放課後、潤が帰り支度をして教室を出るのを見計らって、僕もあとから、教室を出た。
 潤は、僕の前を歩いていた。今日は、誰にも声をかけられないですんでいるようだった。

 校門を出ると、潤が振り返った。潤は振り向いたまま、僕が追いつくのを待ってから言った。
「瑶、昼休み、三年生に話しかけられてただろう?」
「うん。昨日の人」
僕が潤の追求の視線を避けようとすると、
「何言われてたんだ?」
潤は、僕の肩を抱いて聞いてきた。まるで恋人同士みたいだ。
「『潤との仲をとりもってくれ』って」
「なんだ、そんなことか」
潤は、つまらなそうに、僕の肩から手をはずした。
 僕は、潤の関心を失いたくなかったので、続けて言った。
「と思ったけど、やっぱり僕と付き合いたいって」
「え?」
潤は、びっくりしたようだった。
「で、瑤は、なんて答えたんだ?」
僕は、わざと、もったいぶってやった。
「いや、別に、何も」
日の光で透きとおったダークブラウンの瞳が、僕の目を覗き込んだ。僕は見つめられて、たじろいだ。潤は、くすりと笑った。

「だいぶよくない症状だね。昨日のこと思い出して、見つめられただけで感じちゃったの?」
「ちがうよ……」
「悪い病だね」
確かに、そうかもしれない。僕は、最近、潤のことばかり考えていた。
「どうしたら治るの?」
僕は聞いてみた。
「根本治療はない。ただ少し楽になる方法があるだけ」 
「楽になる方法って?」
潤は、にやりとした。
「セックスだよ。気持ちのいいセックス。それだけが、つらい症状をやわらげてくれるんだ」
退廃的な潤の言葉が、僕の健全な心を蝕んでいくようだった。
「したことない、よな?」
潤は僕に聞いた。
「うん……」
僕は答えた。
「してみたい?」
「楽になるの?」
僕は、ここ数日、いや、もっと前から胸をざわつかせているものを鎮めたかった。
「少しだけね。その時だけは。終わると虚しくなる。でもいいんだ。またすればいい」
そんなの、まるで依存症者じゃないか。脳内麻薬の薬物依存。性依存。恋愛依存。
「それで、潤は、次から次へと……してるんだ?」
「ん? 誰かからそんなこと聞いたの? 今日の昼休みの上級生?」
潤は眉をひそめた。

「あ、ああん」
ベッドの上で喘いでいる潤の姿が脳裏に浮かんだ。

「あ」
「どうしたの?」
潤が、ぼうっとした僕に声をかけた。白昼夢を見るなんて、潤の魔力に違いない。

「いけないね。歩ける?」
潤は、再び、僕の肩を抱いてきた。
「うん、なんとか」
僕はどぎまぎしながら答えた。

 潤は、
「薬だよ」
と言って、僕の耳穴にキスをした。
「あっ、あんっ!」
「すごい、感じるんだね」
潤は、クスリと笑った。

「もう、だめ」
僕は、へなへなと崩れ落ちそうだった。
「なに?  その辺でやっちゃいたい?」
潤は、クスクス笑った。
「んっ、あ」
おかしくなった僕を、潤は、道路脇を入ったところにある公園のベンチに連れて行った。

 僕をベンチに寝かせると、僕の脚を潤の膝に載せた。
「ん、んん」
「どうしたの?  ここでしちゃいたい?」
潤の手が、僕の股間に伸びた。
「どう?」
潤は、優しく手で撫でながら言った。
「これから、俺とする気になった?」
潤の手は、股の間に差し込まれて、僕の後ろのあたりまで撫でていた。
「はあっ」
潤の手が股全体を服の上から優しく撫でていた。
「ああん、潤。もういっちゃう!」
「薬が効いたみたいだね」
潤は余裕で微笑んでいる。
「潤、潤、キスしたい」
僕は必死で呼んだ。
「ふふ、可愛いね、瑤」
「ねえ、キスして」
僕は、潤に手を伸ばして、ねだった。
「こんなところで?」
確かに、ひと気のないとは言え、ここは公園だった。しかも、男同士。僕はどうかしていた。
「ハッテン場じゃないんだから、ここでは無理だな」
そういいつつも、潤は僕の股間をいじっていた。まるで、わざと焦らしているみたいに。
「ん、んっ」
目をつぶり、必死で抑えようとしているのに、声が出てしまいそうになる。
「ふふっ、そんなに感じたりして、瑤ってほんとに弄りがいがあるな」
潤は笑った。
「弄りがい?」
僕は目を開けて問い返した。
「だめ?  弄るだけじゃご不満?」
潤の目が僕を見つめた。
「愛されたい」
僕は答えた。
しおりを挟む
kindle版『BL赤ずきんちゃん』kindle版『Ωの教師』大人のBLkindle版『教授と僕と教授』♂BL至上主義♂
B L ♂ U N I O N
感想 3

あなたにおすすめの小説

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

処理中です...