潤 閉ざされた楽園

リリーブルー

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第一章 学校と洋講堂にて

公園へ

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 僕は上級生と別れた後、教室前の廊下で、級友たちから、
「瑤、三年生と何を話してたんだよ?」
と興味しんしんのようすで口ぐちに聞かれた。
「あの人、お兄さんにしたい人ランキング、No.1なんだよね」
「へえ」
「知らないの? 去年、文化祭の委員をしていたじゃないか」
「そうだっけ?」
僕は、全然興味がなかった。
「てっきり、誘われてるのかと思ったんだけど。違うの?」
「うん、まあ、そんな話しだったけど」
僕が、おずおずと答えると、みなは、
「えーっ!」
「すげー」
「やっぱり瑶、かわいいからなあ」
みんなは、勝手なことを言って盛り上がっていた。
「そんなんじゃないよ。あの三年生とは、今日初めて話したばっかりなんだから」
僕は言った。潤と洋講堂であったことは、まだ誰も知らない。瑶と潤だけの秘密だ。
 潤が学校でつれないのは寂しいけど、でも、こんな風に秘密を共有してる感じもいいな。早くみんなに自慢したい気もするけれど、当分は、邪魔されないように秘密にしておいて正解かも。
 あの三年生は勘付いたから、僕と潤の仲を裂こうとしに来たんだろうな。そんな誘惑に僕が引っかかるわけないのに。でも気をつけよう。

 放課後、潤が帰り支度をして教室を出るのを見計らって、僕もあとから、教室を出た。
 潤は、僕の前を歩いていた。今日は、誰にも声をかけられないですんでいるようだった。

 校門を出ると、潤が振り返った。潤は振り向いたまま、僕が追いつくのを待ってから言った。
「瑶、昼休み、三年生に話しかけられてただろう?」
「うん。昨日の人」
僕が潤の追求の視線を避けようとすると、
「何言われてたんだ?」
潤は、僕の肩を抱いて聞いてきた。まるで恋人同士みたいだ。
「『潤との仲をとりもってくれ』って」
「なんだ、そんなことか」
潤は、つまらなそうに、僕の肩から手をはずした。
 僕は、潤の関心を失いたくなかったので、続けて言った。
「と思ったけど、やっぱり僕と付き合いたいって」
「え?」
潤は、びっくりしたようだった。
「で、瑤は、なんて答えたんだ?」
僕は、わざと、もったいぶってやった。
「いや、別に、何も」
日の光で透きとおったダークブラウンの瞳が、僕の目を覗き込んだ。僕は見つめられて、たじろいだ。潤は、くすりと笑った。

「だいぶよくない症状だね。昨日のこと思い出して、見つめられただけで感じちゃったの?」
「ちがうよ……」
「悪い病だね」
確かに、そうかもしれない。僕は、最近、潤のことばかり考えていた。
「どうしたら治るの?」
僕は聞いてみた。
「根本治療はない。ただ少し楽になる方法があるだけ」 
「楽になる方法って?」
潤は、にやりとした。
「セックスだよ。気持ちのいいセックス。それだけが、つらい症状をやわらげてくれるんだ」
退廃的な潤の言葉が、僕の健全な心を蝕んでいくようだった。
「したことない、よな?」
潤は僕に聞いた。
「うん……」
僕は答えた。
「してみたい?」
「楽になるの?」
僕は、ここ数日、いや、もっと前から胸をざわつかせているものを鎮めたかった。
「少しだけね。その時だけは。終わると虚しくなる。でもいいんだ。またすればいい」
そんなの、まるで依存症者じゃないか。脳内麻薬の薬物依存。性依存。恋愛依存。
「それで、潤は、次から次へと……してるんだ?」
「ん? 誰かからそんなこと聞いたの? 今日の昼休みの上級生?」
潤は眉をひそめた。

「あ、ああん」
ベッドの上で喘いでいる潤の姿が脳裏に浮かんだ。

「あ」
「どうしたの?」
潤が、ぼうっとした僕に声をかけた。白昼夢を見るなんて、潤の魔力に違いない。

「いけないね。歩ける?」
潤は、再び、僕の肩を抱いてきた。
「うん、なんとか」
僕はどぎまぎしながら答えた。

 潤は、
「薬だよ」
と言って、僕の耳穴にキスをした。
「あっ、あんっ!」
「すごい、感じるんだね」
潤は、クスリと笑った。

「もう、だめ」
僕は、へなへなと崩れ落ちそうだった。
「なに?  その辺でやっちゃいたい?」
潤は、クスクス笑った。
「んっ、あ」
おかしくなった僕を、潤は、道路脇を入ったところにある公園のベンチに連れて行った。

 僕をベンチに寝かせると、僕の脚を潤の膝に載せた。
「ん、んん」
「どうしたの?  ここでしちゃいたい?」
潤の手が、僕の股間に伸びた。
「どう?」
潤は、優しく手で撫でながら言った。
「これから、俺とする気になった?」
潤の手は、股の間に差し込まれて、僕の後ろのあたりまで撫でていた。
「はあっ」
潤の手が股全体を服の上から優しく撫でていた。
「ああん、潤。もういっちゃう!」
「薬が効いたみたいだね」
潤は余裕で微笑んでいる。
「潤、潤、キスしたい」
僕は必死で呼んだ。
「ふふ、可愛いね、瑤」
「ねえ、キスして」
僕は、潤に手を伸ばして、ねだった。
「こんなところで?」
確かに、ひと気のないとは言え、ここは公園だった。しかも、男同士。僕はどうかしていた。
「ハッテン場じゃないんだから、ここでは無理だな」
そういいつつも、潤は僕の股間をいじっていた。まるで、わざと焦らしているみたいに。
「ん、んっ」
目をつぶり、必死で抑えようとしているのに、声が出てしまいそうになる。
「ふふっ、そんなに感じたりして、瑤ってほんとに弄りがいがあるな」
潤は笑った。
「弄りがい?」
僕は目を開けて問い返した。
「だめ?  弄るだけじゃご不満?」
潤の目が僕を見つめた。
「愛されたい」
僕は答えた。
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