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第十六章
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昴は、譲や潤と違って、父と折り合いが悪かった。
だから、父が溺愛している、末っ子で養子の潤のことをいまいましく思い、腰巾着などと罵ったのだろう。
昴は、幼少時は、譲の腰巾着だったらしい。
譲などがよく面白げに語っていた。
でも、昴の方では、その思い出をよく思っていないらしかった。
昴が、「その頃は、最悪だった」と言うのを、潤は聞いたことがあった。
つまり昴は、小さい時こそ、なんでも、一つ年上の兄、譲のいいなりでついてまわっていたが、長じてからは、譲ともあまりそりが合わなかった。
過去の、自分がなかったころの自分、幼さゆえに、全く違う個性のはずの人間なのに、それが尊重されることもなく、逆らえない目上の人間のいいなりにされていた自分やそれを放置した周囲への怒りと不満が、昴にあんな言葉を吐かせたのだろうと潤は思った。
(昴は、過去の自分を俺に投影して苛立っているのだ)
と潤は思って、理不尽な怒りをぶつけられる悔しさに耐えた。
いつもマイペースゆえに、三人兄弟の真ん中の昴は、家族の中では少し浮いていて、変人と思われていた。
昴と潤は、そこまで仲が悪いわけではなかった。
潤は、誰にでも好かれたし、誰とでも、そこそこうまくやっていけたからだ。
だから、父が溺愛している、末っ子で養子の潤のことをいまいましく思い、腰巾着などと罵ったのだろう。
昴は、幼少時は、譲の腰巾着だったらしい。
譲などがよく面白げに語っていた。
でも、昴の方では、その思い出をよく思っていないらしかった。
昴が、「その頃は、最悪だった」と言うのを、潤は聞いたことがあった。
つまり昴は、小さい時こそ、なんでも、一つ年上の兄、譲のいいなりでついてまわっていたが、長じてからは、譲ともあまりそりが合わなかった。
過去の、自分がなかったころの自分、幼さゆえに、全く違う個性のはずの人間なのに、それが尊重されることもなく、逆らえない目上の人間のいいなりにされていた自分やそれを放置した周囲への怒りと不満が、昴にあんな言葉を吐かせたのだろうと潤は思った。
(昴は、過去の自分を俺に投影して苛立っているのだ)
と潤は思って、理不尽な怒りをぶつけられる悔しさに耐えた。
いつもマイペースゆえに、三人兄弟の真ん中の昴は、家族の中では少し浮いていて、変人と思われていた。
昴と潤は、そこまで仲が悪いわけではなかった。
潤は、誰にでも好かれたし、誰とでも、そこそこうまくやっていけたからだ。
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