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第十三章 潤の記憶
瑶との仲 2
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譲が、潤の方を見て、必死で、
「中身、中身」
と口つきでサインを送っていた。
「あ、ええと、瑶の審美眼とか、俺、好きだよ? 瑶と趣味あうかなあとか思うし。瑶といっしょにいるの楽しいよ? ご飯食べたり、いろんなきれいなものに囲まれてるの、瑶、好きそうだし。だから、友達でいてよ。もちろん、エッチもしてくれたら、すごく嬉しいけど、無理強いはしないよ?」
「わかった。エッチもする。僕もエッチ好きだもん」
瑶が、決意したように言った。
「相当怒ってるでしょ? 瑶が、そんなこと言うなんて」
潤は、瑶の発言に驚いてたずねた。
「怒ってるけど、それは本当。可愛いとか言われるけど、僕だって、人並みにエッチなんだよっ」
と瑶が、振り向いて言った、その顔は、真っ赤だった。潤は、瑶の近くに歩み寄った。
「瑶、怒らせちゃって、ごめんね。傷つけるつもりじゃなかったんだ。友達で、いたいんだよ。あの、本当に、嬉しかったんだよ、洋講堂まで入ってきて、側に来てくれた時。嬉しかった」
「本当?」
瑶が、聞いた。
「本当だよ」
潤は、一生懸命言った。
「誰も、あんなふうに本当に近づいてきてくれなかったから。みんな噂するだけで。硝子戸の向こうから遠巻きに見てるだけで。本当に、硝子戸を開けて入ってきて、俺の側に来て、手をつないでくれる人、いなかったんだよ」
潤は、一生懸命言っていたら涙が出てきてしまった。
「だから、嬉しかったんだ」
潤は、言って、少しは伝わったかな? と思って、一息ついた。
「うん、わかった」
瑶が言ってくれた。
「俺も、可愛い瑶といっしょにいられるのが嬉しかったし。みんな、瑶が相手だったら、あきらめてくれると思ったし」
譲が、「それ以上、余計なことは、言うな」とサインを送っていた。
「ということで、よろしくね?」
と潤は、キラースマイルを作った。
瑶は、案の定、打ち砕かれたようだった。潤は、ほっとした。機嫌を直してくれて、よかった、と思った。
「ヨウ君、ゆっくり食べてていいからね?」
譲は、そういいながら、食べ終わった食器を下げた。
「はい」
瑶は、涙の跡をつけたまま、また黙々と食べはじめた。きっと残りも全部平らげるつもりだろう。
「潤も、もっと食べろよ」
譲が、キッチンから戻って、残りの食器を集めながら言った。
「いい」
「大きくなれないぞ」
「食べた」
譲は、また、キッチンに消えた。
昼の日射しがテラスの上に影を作っていた。強いコントラストは、もう初夏の光だった。陽射しが庭の薔薇の葉の上に照り輝いていた。昼の薔薇の花は、明るい陽光に、すっかり蕊を見せて開ききっていた。朝の薔薇は、羞じらい深く、匂い初めていたのに。あっという間に香りを空中に放って、咲ききってしまおうと生き急いでいた。上へ上へと光を求めて、競うように、そろって蕾が首を伸ばしていた。緑の深い陰影。蜜蜂の羽音。甘い香り。
潤は、また一人、記憶の中に落ちていった。
「中身、中身」
と口つきでサインを送っていた。
「あ、ええと、瑶の審美眼とか、俺、好きだよ? 瑶と趣味あうかなあとか思うし。瑶といっしょにいるの楽しいよ? ご飯食べたり、いろんなきれいなものに囲まれてるの、瑶、好きそうだし。だから、友達でいてよ。もちろん、エッチもしてくれたら、すごく嬉しいけど、無理強いはしないよ?」
「わかった。エッチもする。僕もエッチ好きだもん」
瑶が、決意したように言った。
「相当怒ってるでしょ? 瑶が、そんなこと言うなんて」
潤は、瑶の発言に驚いてたずねた。
「怒ってるけど、それは本当。可愛いとか言われるけど、僕だって、人並みにエッチなんだよっ」
と瑶が、振り向いて言った、その顔は、真っ赤だった。潤は、瑶の近くに歩み寄った。
「瑶、怒らせちゃって、ごめんね。傷つけるつもりじゃなかったんだ。友達で、いたいんだよ。あの、本当に、嬉しかったんだよ、洋講堂まで入ってきて、側に来てくれた時。嬉しかった」
「本当?」
瑶が、聞いた。
「本当だよ」
潤は、一生懸命言った。
「誰も、あんなふうに本当に近づいてきてくれなかったから。みんな噂するだけで。硝子戸の向こうから遠巻きに見てるだけで。本当に、硝子戸を開けて入ってきて、俺の側に来て、手をつないでくれる人、いなかったんだよ」
潤は、一生懸命言っていたら涙が出てきてしまった。
「だから、嬉しかったんだ」
潤は、言って、少しは伝わったかな? と思って、一息ついた。
「うん、わかった」
瑶が言ってくれた。
「俺も、可愛い瑶といっしょにいられるのが嬉しかったし。みんな、瑶が相手だったら、あきらめてくれると思ったし」
譲が、「それ以上、余計なことは、言うな」とサインを送っていた。
「ということで、よろしくね?」
と潤は、キラースマイルを作った。
瑶は、案の定、打ち砕かれたようだった。潤は、ほっとした。機嫌を直してくれて、よかった、と思った。
「ヨウ君、ゆっくり食べてていいからね?」
譲は、そういいながら、食べ終わった食器を下げた。
「はい」
瑶は、涙の跡をつけたまま、また黙々と食べはじめた。きっと残りも全部平らげるつもりだろう。
「潤も、もっと食べろよ」
譲が、キッチンから戻って、残りの食器を集めながら言った。
「いい」
「大きくなれないぞ」
「食べた」
譲は、また、キッチンに消えた。
昼の日射しがテラスの上に影を作っていた。強いコントラストは、もう初夏の光だった。陽射しが庭の薔薇の葉の上に照り輝いていた。昼の薔薇の花は、明るい陽光に、すっかり蕊を見せて開ききっていた。朝の薔薇は、羞じらい深く、匂い初めていたのに。あっという間に香りを空中に放って、咲ききってしまおうと生き急いでいた。上へ上へと光を求めて、競うように、そろって蕾が首を伸ばしていた。緑の深い陰影。蜜蜂の羽音。甘い香り。
潤は、また一人、記憶の中に落ちていった。
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