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第十三章 潤の記憶
やめられない
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潤が白昼夢から、現実のテラスに戻ってきた。
譲が潤を見つめて微笑んでいた。
「でも潤とコウとどっちかとれって言われたら、俺は潤を取るよ」
「コウさんにも、そう言ってるんでしょ」
潤は譲の言葉を信用しなかった。
「俺は弟だからでしょ?」
潤は言った。
「俺をとるとか言わなくていいよ」
譲は潤に、おべっかを使っているのだろう。
「潤、俺がお前のことを好きだから、って言ったらどうする?」
譲が真剣な顔をして聞いてきた。そんなことで騙されないぞ、譲は、俺を自分のものにしていたいだけなんだ、と潤は思った。譲は、潤の態度を見てあきらめたように、ため息をついて言った。
「他の人と何してもいいけど、俺の親とするのは、やめてくれ」
「へえ。やっと人間の倫理観が芽生えてきたんだ」
結局、譲が気になっているのは、そのことか。
「最近、親父が俺に、潤との関係を見せつけるようになってきただろう? 前は、曲がりなりにも隠していたのに」
譲は言いにくそうに言った。
「親父が、いろいろ、潤をそそのかしてるんだろう? 母さんのことも」
「そうだけど」
潤は答えた。
「やっぱり。あいつの言うことを聞くのは、やめろ。結果を見れば、わかるだろう? どれだけ人の道に反してるか」
「譲から、そんな道徳的お説教を聞けるとは、思わなかったよ。譲も、瑤に感化されたの?」
潤は瑤を、ちらりと見た。瑤は、まだ無心にパスタを食べていた。
「ヨウ君、おいしい?」
譲が聞いた。
「あっ、はい」
瑤が顔をあげて、
「譲さんの料理、おいしいです」
と言った。
「瑤、気をつけて。譲に、また食われるよ?」
潤は、警告した。
「股を食われる?」
瑤が聞き返したので、譲が笑った。
「股どころか、骨までしゃぶられるぞ」
潤が答えた。
「で、その骨を潤のお尻の穴に突っ込むんだ?」
譲が揶揄した。
「残虐怪奇小説じゃないんだから、気持ち悪いこと言うなよ」
潤は抗議した。
潤は、食卓に飾ってあるミントをちぎって、グラスに浮かべた。緑のミントの葉を嗅ぎながら、潤は譲に聞いた。
「コウさんと俺とだったら俺を取るとか言い出すなんて、兄さん、コウさんと、うまくいってないとか?」
「別に」
「うまくいってなくても、俺には、そうとは言わないだろうけどさ」
「お前だけに言わないわけじゃなくて、俺は、誰にも言わないんだよ」
潤は、譲とコウが別れるのなら、自分にもチャンスが巡ってくると思った。
「ははぁん。やっぱり、うまくいってないんだ? コウさんには、洋輔さんがいて、勝てそうもないから、だから俺に乗り換えようとしてるんだな。でも、俺には、叔父様がいるからなあ」
潤は、もったいぶった笑みを浮かべた。
「潤、親父との関係は、いいかげん、やめろよ。さっきから忠告してるだろ?」
譲が、イライラしたように言った。
「俺からは、やめられないんだ」
「向こうは、墓場まで連れてくって言ってたからな」
「一人になりたくないし」
「一人? 笑わせるなよ。お前、今、何人と付き合ってると思ってる? 数くらい数えられるだろ」
「叔父様と、譲と、瑤だけだよ?」
「だいぶ省略したな。仮に三人としても、三人も、だぞ?」
「叔父様と譲は家族でしょ。だから、瑤だけだよ」
潤は、瑤に、にっこりしてみせた。
瑤は、口の端から葉っぱをはみ出させながら、潤を見た。譲が言った。
「その家族枠は、俺だけにしとけって言ってるんだよ。従兄と付き合う方が叔父と付き合うより、まだまともだ」
「従兄っていうけど、兄だろ?」
潤が指摘すると
「それ言ったら、お前、叔父様って言ってるけど……」
譲がいいかけた。
「あー、それは、言わないで」
潤は、慌ててさえぎった。
「言われたくなければ、関係するなよ」
「やめられないって、言ってるだろ」
「そんなにいいのか? 俺と何が違う?」
「譲も、いいんだけどさ」
「年齢?」
「わからない」
「鞭?」
「やめてよ」
潤は、鞭と聞いただけで、反射的に、鞭の鳴る音、ぴしゃりと己の尻を打つ響き、瞬間の痛みと苦痛、あとからじわじわくる快感を感じた。
「感じちゃうから……」
潤は、ローブの襟の間から手を入れて、そっと、自分の乳首を触った。
「ん……」
少し尖った乳首に触れると、吐息が漏れた。
「食事中に自慰禁止」
譲が言った。
「もう、食べ終わったもん」
潤が言うと、
「ヨウ君が、食べてるだろ?」
と譲に言われた。
「すいません、遅くて」
瑤が謝った。
譲が潤を見つめて微笑んでいた。
「でも潤とコウとどっちかとれって言われたら、俺は潤を取るよ」
「コウさんにも、そう言ってるんでしょ」
潤は譲の言葉を信用しなかった。
「俺は弟だからでしょ?」
潤は言った。
「俺をとるとか言わなくていいよ」
譲は潤に、おべっかを使っているのだろう。
「潤、俺がお前のことを好きだから、って言ったらどうする?」
譲が真剣な顔をして聞いてきた。そんなことで騙されないぞ、譲は、俺を自分のものにしていたいだけなんだ、と潤は思った。譲は、潤の態度を見てあきらめたように、ため息をついて言った。
「他の人と何してもいいけど、俺の親とするのは、やめてくれ」
「へえ。やっと人間の倫理観が芽生えてきたんだ」
結局、譲が気になっているのは、そのことか。
「最近、親父が俺に、潤との関係を見せつけるようになってきただろう? 前は、曲がりなりにも隠していたのに」
譲は言いにくそうに言った。
「親父が、いろいろ、潤をそそのかしてるんだろう? 母さんのことも」
「そうだけど」
潤は答えた。
「やっぱり。あいつの言うことを聞くのは、やめろ。結果を見れば、わかるだろう? どれだけ人の道に反してるか」
「譲から、そんな道徳的お説教を聞けるとは、思わなかったよ。譲も、瑤に感化されたの?」
潤は瑤を、ちらりと見た。瑤は、まだ無心にパスタを食べていた。
「ヨウ君、おいしい?」
譲が聞いた。
「あっ、はい」
瑤が顔をあげて、
「譲さんの料理、おいしいです」
と言った。
「瑤、気をつけて。譲に、また食われるよ?」
潤は、警告した。
「股を食われる?」
瑤が聞き返したので、譲が笑った。
「股どころか、骨までしゃぶられるぞ」
潤が答えた。
「で、その骨を潤のお尻の穴に突っ込むんだ?」
譲が揶揄した。
「残虐怪奇小説じゃないんだから、気持ち悪いこと言うなよ」
潤は抗議した。
潤は、食卓に飾ってあるミントをちぎって、グラスに浮かべた。緑のミントの葉を嗅ぎながら、潤は譲に聞いた。
「コウさんと俺とだったら俺を取るとか言い出すなんて、兄さん、コウさんと、うまくいってないとか?」
「別に」
「うまくいってなくても、俺には、そうとは言わないだろうけどさ」
「お前だけに言わないわけじゃなくて、俺は、誰にも言わないんだよ」
潤は、譲とコウが別れるのなら、自分にもチャンスが巡ってくると思った。
「ははぁん。やっぱり、うまくいってないんだ? コウさんには、洋輔さんがいて、勝てそうもないから、だから俺に乗り換えようとしてるんだな。でも、俺には、叔父様がいるからなあ」
潤は、もったいぶった笑みを浮かべた。
「潤、親父との関係は、いいかげん、やめろよ。さっきから忠告してるだろ?」
譲が、イライラしたように言った。
「俺からは、やめられないんだ」
「向こうは、墓場まで連れてくって言ってたからな」
「一人になりたくないし」
「一人? 笑わせるなよ。お前、今、何人と付き合ってると思ってる? 数くらい数えられるだろ」
「叔父様と、譲と、瑤だけだよ?」
「だいぶ省略したな。仮に三人としても、三人も、だぞ?」
「叔父様と譲は家族でしょ。だから、瑤だけだよ」
潤は、瑤に、にっこりしてみせた。
瑤は、口の端から葉っぱをはみ出させながら、潤を見た。譲が言った。
「その家族枠は、俺だけにしとけって言ってるんだよ。従兄と付き合う方が叔父と付き合うより、まだまともだ」
「従兄っていうけど、兄だろ?」
潤が指摘すると
「それ言ったら、お前、叔父様って言ってるけど……」
譲がいいかけた。
「あー、それは、言わないで」
潤は、慌ててさえぎった。
「言われたくなければ、関係するなよ」
「やめられないって、言ってるだろ」
「そんなにいいのか? 俺と何が違う?」
「譲も、いいんだけどさ」
「年齢?」
「わからない」
「鞭?」
「やめてよ」
潤は、鞭と聞いただけで、反射的に、鞭の鳴る音、ぴしゃりと己の尻を打つ響き、瞬間の痛みと苦痛、あとからじわじわくる快感を感じた。
「感じちゃうから……」
潤は、ローブの襟の間から手を入れて、そっと、自分の乳首を触った。
「ん……」
少し尖った乳首に触れると、吐息が漏れた。
「食事中に自慰禁止」
譲が言った。
「もう、食べ終わったもん」
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瑤が謝った。
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