潤 閉ざされた楽園

リリーブルー

文字の大きさ
80 / 439
第十一章 午前の庭にて

境界部

しおりを挟む
 しかし、そのように頭で考えてはいたのだが、眼前に繰り広げられる艶かしい光景は、瑶の健全で冷静な正義感を、侵食し、崩壊させていくのだった。嫌悪感と、甘い官能の交錯。せめぎ合い。
 潤は眠そうな目で、おじ様の膝に手を置いた。
「どうした?  潤、眠いのか?」
「うん、眠気が……」
「少し、お休み」
おじ様が言うと、潤は、叔父の腿にしなだれかかった。おじ様は、脚を伸ばした。潤の頭が滑り落ちて、おじ様の股間に顔が向いた。
「ふふっ」
おじ様が、含み笑いをした。潤が、反射のように、おじ様のペニスを口に含んだ。ぴちゃぴちゃ、水音だけが響く。
 どこかで鳥の声がする。幻惑されるような風景。麻薬のような光景。瑶の理性は侵されていく。
 瑶は、自分の股間に触れた。そこは、瑶の理性に違い、絶望的なまでに力を持ち始めていた。先の方が、うるおっていた。瑶は、指先で、先を摘まんでは、竿の方になすりつけた。気持ちいい。
 瑶の自慰に、二人は、気づかない。画面の向こうの映像のように、彼らは二人の世界に入っていた。息が荒くなる。瑶も、されたい。潤と、おじ様と、睦み合いたい。官能に溺れたい。何もかも忘れて。何もかも、うち捨てて。この快楽の園の住人になって、憩いたい。ここから、出られなくてもいい。ここに、捕らわれたい。
 おじ様が、潤の頭を、優しく撫でていた。潤は、おしゃぶりのように、ぴちゃぴちゃ、握った、おじ様の、ふにゃふにゃの柔らかいモノを舐めていた。さっき潤に、歯を立てられたから、沁みて、立たないんだな。と思った。時折、おじ様は、ペニスの傷に潤の舌が触れて痛むのか、
「あっ」
と小さく言って、顔をしかめた。
 青い空と緑の樹木と五月の微風を背景に、緑と赤や白のクローバーの絨毯の上で、美少年に身体を舐めさせる中年の美しい男。男は、顔を仰向けて、少し苦しそうに口を開けた。彼の、思わず、あげた声。彼の肉体のうち、最も敏感な部分に、最愛の者からつけられた、小さな傷。傷つきやすい、無防備な粘膜に立てられた、最愛の者の歯。
 何一つ武器を持たない潤が、白い前歯で、無意識に、己を迫害する者に、復讐の牙を向けたともとれた。甘い復讐の刃で傷つけられた、男の、柔らかい部分。
 外部と内部が交差する、不安定で、聖なる境界部が、二人を痛みと傷と官能の境地に運び去っていくようだった。
 目に見えない密やかな傷の痛みに喘ぐ男。人に見えないところにつけられた傷。二人だけの甘い傷。戯れでできた傷。微細な、繊細な、見えないほどの傷。けれど、敏感な部分の感覚は、その微小な擦過傷を、大の男を喘がせるほどの痛みに拡大させている。その傷を舐められて、もっと喘げばいい。
 傷口は身体の境界だ。危険な境界。聖と俗との、あちらとこちらの、自己と他の、内と外の。
 境界を侵犯していく危険な粘液。粘膜は、いつも危険にさらされている。
「あぁっ」
おじ様が、また低く呻いた。
 おじ様と潤の情事を盗み見ていた瑶の手の動きが加速した。
 ああ、気持ちいい。おじ様、瑶こそ、変態です。友達の父で興奮するなんて。でも、我慢できないんです。瑶も、あなたに、抱かれたい。
 瑶は、おかしな欲望に侵食されていった。
「潤、傷が痛むから、あっ」
「叔父様、でも感じてる」
おじ様は、潤の口から解放されて、肩で息をした。
「変態だね、叔父様」
潤が、起き上がって、おじ様の裸の肩に抱きついた。
「んーっ」
二人は、吸い付くように唇を合わせた。
「ああ、潤が変態なら、私もそうだね。そんな潤に育てたのは、この私なのだから」
「うーん、もっと、触って。気持ちいいこと、して?」
潤は、おじ様の膝の上で、くねくねと媚びを売った。
そんな潤に、おじ様は、言った。
「愛してるよ潤。可愛いね。思い切り突いてやりたいところだが、今日は、やめておこう」
「ああん、我慢できない。潤、もっと、したい」
また潤は、自称が自分の名になっていて、甘えた子ども口調で言った。
「我慢も、快楽の内だよ。だから我慢しなさい。いやらしい汁を垂れ流しながら」
「いやっ、意地悪、おじ様がもうしてくださらないなら、潤は、今週、浮気をします」
潤は、可愛い浮気宣言をした。
「ああ、そう? したらいいじゃないか。後で報告するんだよ? 誰とするんだい? また書店の人たちかい? それとも学校の先輩におねだりするのかい?」
おじ様は、潤の素行を、全部把握しているようだった。
 それでいて、潤を野放しに、放置しているようだった。
「どうしようかな。まだわからないけど」
潤が、本心で浮気宣言をしたわけではないのがみえみえだった。潤は、媚びるように、気を引くように、おじ様の顔色をうかがった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

隣の親父

むちむちボディ
BL
隣に住んでいる中年親父との出来事です。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...