僕たち、結婚することになりました

リリーブルー

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俺と結婚している場合ではない。

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「ちょっと、お疲れのようですね。休憩しましょうか」
やっと、スタッフが言ってくれる。
「まあ、よくあることですよ」
麦茶を持ってきてくれながら、スタッフは、俺たちをなぐさめる。

「愛しあって結婚を決めたお二人でも、迷いのでることは」
冷たい麦茶をいれた小さなグラスが汗をかいている。

「いや、別に、愛しあってないから」
俺は小さくつぶやく。
「先輩!」
後輩が、俺のタキシードの裾をつかんで引っ張る。
「あんまりやる気ないと、スタッフさんに失礼ですよ」
後輩が小声でささやく。
 こいつは、いつもそうだ。周りを気にする気配り人間。
 ゆえにモテる。
 俺と結婚している場合ではない。

 こいつが、結婚すると言っただけで、翌日、仕事の欠席者が十名ほど出た。その場で卒倒した者、一名。あとで、気分が悪くなったと早退したもの二名。翌日、合計十名だ。

 同じ課の欠席者は五名。おかげで、電話に出る者にも事欠く始末。仕事は三倍。こんな状態で、結婚なんか、してられっか!

 まだ結婚相手は知られていないが、俺だとバレたらどうなるのだろう。

「先輩ったら、結婚相手が、スタッフさんみたいな女性だったらいいのになあなんて言うんですよ」
こ、い、つ、死ねよ。俺は結婚相手に、軽い殺意を覚える。
「あらあぁ」
年増の女性スタッフは、喜んでいる。
「おい、死ねよ」
俺は、後輩の耳もとで殺意を表明する。
「いいじゃないですか、それくらい。リップサービスですよ」
こいつは、そういうやつだ。それで、女性上司にもウケがいい。
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