巨大触手に襲われる生徒と教師

１、教室

愛する生徒を救うため

　化け物に脳までおかされて、西島に嫉妬の感情をいだいている場合ではない。これこそ化け物の思うツボだ。 
　化け物のターゲットが西島だと判明した今は、一秒でも早く、西島を追いかけ、追いつき、助けねばならない。
 　だが、身体が動かない……！
 　先ほどまで、巨大イカの触手に攻めたてられていた安田の身体は、ガクガクとして、すぐには動けなかった。
　立てない……ひざが、ガクガクする。全身が、しびれるようだ。さっきまで、こんなことはなかったのに。立ったまま、攻められていたのに。
 　だが、行かねばならない。愛する生徒を救うために、安田は行かねばならなかった。このままでは、西島があぶない。
 　こんな風に歩けなくなるなんて、やはり、あの巨大生物は危険だ。西島の言っていたように、あのまま攻め続けられていたならば、自分は死んでいたかもしれない。
 　その意味で、自分は、西島に助けられたのだ。命を救われたのだ。なんとしてでも、その命の恩人である西島を魔の手から救いださなければ。
 　安田は、ともすれば、倒れそうになる身体にむち打って、立ち上がった。歩ける。歩かねばならない。なんとしても。安田は、机に手をつきながら教室の出口まで進んだ。
 　廊下に出て、壁をつたって歩き始めた。
 　西島……どこにいるんだ……。あの怪物は、もう、西島をさがしあてただろうか。