からすうり〜廃屋の美青年〜

リリーブルー

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笛の音

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するとどこからか笛の音が聞こえてきた。

家の内に誰かいるようだ。

他に人がいるならば、その人にことづけてもおこうか。

私はそう思って笛の音をたどった。

隣の部屋にその人はいた。

白い顔の貴人だ。

彼の人にそっくりだ。兄弟だろうか。

「あなたは兄が親しくしていた方ですか」

やはり彼の人の弟らしい。

「隣の部屋にいるのは貴方様のお兄様なのですね」

「はい、そうです。兄は今朝早く息を引き取りました」

「ええっ」

私は愕然とした。

私はその場にがっくりと膝をついた。

「生きていてくれさえすれば、それでよかったのに」

私はまた会えるとのみ信じていた。

だがたとえ会うことがかなわなくても生きていてくれさえすれば。

「仕方のないことです。もとより私たち兄弟の命は短いのです。かように嘆きなさいますな」

彼の人の弟ぎみは私の傍らへきて優しく説いた。

「私の命も短いのです。どうか私とも契ってくださいませんか」

弟ぎみは泣き崩れる私を優しく誘った。

「どうしてそのような。兄上様のむくろの隣で、そのような行為に及ぶなど」

私は非道をなじった。

「命の短い私たちには仕方のないことなのです。こうしてあなたが訪れてくださったことが私には嬉しいのです。一生誰とも交わることができずに生を終える者も多いのです。そんな中、兄は果報者だったのです。さあ私の蜜も吸ってくださいませぬか」

「ひどい、あなたたちはひどい」

泣きじゃくる私の涙を弟君の白い指が拭った。

「時間がないのです。さあ」

私は弟君の寝屋に引きこまれた。

泣いている私を弟君は優しく抱きしめた。

「さあ、甘い蜜をお飲みなさい。思う存分」

弟君は妖しく微笑んだ。

その微笑みと甘い匂いに私はくらくらした。
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