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館の主は
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貴人の残り香が身体にまとわりついていた。情事の名残がけだるく甘く私の身体と脳を痺れさせていた。
文の主の住処は遠いところだった。しかし私は跳ぶように走った。
私はもともと脚力には自信があった。
それ故に遠く彼の人を訪ねることもできたのだ。
今は彼の人の願いを叶えるために暗闇の中をひたすらまっすぐに走った。
私は大きな館にたどり着いた。
門の前で案内の者に文を渡すと、ややあって館の内に招き入れられた。
「どうぞこちらへ」
と几帳の奥に招かれる。
館の主は白い顔の女人だった。
女人は、
「文は読みました」
と言いひっそりと微笑んだ。
「では」
と私は立ち去ろうとした。すると、
「どこへ行くのです」
と私を引き留める。
「私の主人が私の帰りを待っているのです」
私は言い訳した。
「何をそのようなことが。貴方はここで私の伽をしなければなりません。文にはそう書いてありました」
「なんと」
私は慌てふためいた。
先ほど愛しい人と愛を交わしたばかりだというのになんと殺生な。
「さあ褥(しとね)の用意はできております。どうぞ几帳の内へ」
私はなんとか断ろうとした。だが女人の香りに私はくらくらして理性を失った。
女人は先ほどの貴人によく似ていた。
妙なる白い衣の裾を引いていた。
「さあこちらへ」
白い手が招く。
ああ何ということだ。
文の主の住処は遠いところだった。しかし私は跳ぶように走った。
私はもともと脚力には自信があった。
それ故に遠く彼の人を訪ねることもできたのだ。
今は彼の人の願いを叶えるために暗闇の中をひたすらまっすぐに走った。
私は大きな館にたどり着いた。
門の前で案内の者に文を渡すと、ややあって館の内に招き入れられた。
「どうぞこちらへ」
と几帳の奥に招かれる。
館の主は白い顔の女人だった。
女人は、
「文は読みました」
と言いひっそりと微笑んだ。
「では」
と私は立ち去ろうとした。すると、
「どこへ行くのです」
と私を引き留める。
「私の主人が私の帰りを待っているのです」
私は言い訳した。
「何をそのようなことが。貴方はここで私の伽をしなければなりません。文にはそう書いてありました」
「なんと」
私は慌てふためいた。
先ほど愛しい人と愛を交わしたばかりだというのになんと殺生な。
「さあ褥(しとね)の用意はできております。どうぞ几帳の内へ」
私はなんとか断ろうとした。だが女人の香りに私はくらくらして理性を失った。
女人は先ほどの貴人によく似ていた。
妙なる白い衣の裾を引いていた。
「さあこちらへ」
白い手が招く。
ああ何ということだ。
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