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チェンバロ

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オリビアは父王と母后に似て、芸術の才能が高かった。
父王は王立美術学院の名誉総裁であり、自身でも筆を振るった。母后は歌に秀で、彼女のデザインするドレスと着こなしは貴婦人たちの注目の的でお手本にされた。従兄は王立楽団をプロデュースしていた。
そんなオリビアには、音楽の講師として王立学校の元講師がつけられた。

ある日、チェンバロの男講師は、オリビアの姉を膝に抱き上げた。
ピピーーーーーーーッ!!!
オリビアは笛を甲高く吹き鳴らした。耳障りな音に驚いたチェンバロの講師は、姉を床に落とした。
「違反です! 違反です! 男が少女を膝に抱くのは違反です!」
オリビアは相手を指さして大声で宣告した。
 廊下からバタバタ音がして、何事かと王宮の者たちがかけつけた。
「どうしたのです」
母后がオリビアに尋ねた。
「お母さま、この者が違反をしたのです」
オリビアは、講師を指さした。講師はガタガタ震え出した。
「ひっ捕らえよ!」
王宮護衛官の長が、号令を出した。講師は、護衛官たちに、しょっ引かれていった。

「ああ、せいせいしたわ」
オリビアは言った。
「あの者は、王立学校の講師とは名ばかりで、なんの素養もなく、私たちの指導者として不適格だったわ」
「そうかもしれないわね。貴族の子女が大勢習っていたものだから吟味せずに決めてしまったわ。ごめんなさいね」
母后は、オリビアと姉に謝った。
「それだけなら、才能がない残念な人間ですまされるけれど。そんなことより何より違反行為をするのだから。あの者は、厳罰に処するべきよ」
オリビアは主張した。
「わかりました。裁判長殿に伝えておきます」
母后は約束した。
ドアの陰に白い羽が見えた。
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