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第二十五章 モーテルで

イケメン教師、神崎校長の打ち明け話しを聞いて驚く。

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 神崎校長は小坂に言った。
「だけど、私は既婚者なんだ。女房を蔑ろにして、自分だけ楽しむなんてことは、やっぱり間違ってる……。君と交わることができて歓喜する一方、罪悪感を感じた。女房に打ち明けたんだ」
「奥さんは知っているんですか?」
と小坂は驚いて聞き返した。
「ああ。ハネムーンのあと、私と関係のあった生徒が命を絶って、その時に、私の性志向や嗜好を打ち明けたんだ。問題になって……打ち明けざるを得なかった。妻は怒って、離婚だと言ったが、私は嫌だと言った。私なりに妻を愛していたし、新婚旅行で子ができていたし。それに外聞や出世のことも気になった。当時はそれが一番だったかもしれない。酷い男だ。とにかく、離婚は避けた。女房は息子を育てることに気持ちを切り替えてくれ、息子は大学生になった。だが引きこもりだ。女房は別居となった」
「別居は嘘じゃなかったんですか」
今日、奥さんが家にいたことで、嘘をつかれていたのかと思い小坂は密かにショックを抱いていたのだ。
「ああ、女房は息子と住んでいる。それでも時々、家のことをしに来てくれているんだ……」
「いい奥さんですね……」
別居が嘘でなかったことにホッとして嬉しかったのも束の間、そんな風に結びつきがあるのかと、嫉妬もし、寂しくも感じた。けれど、嫉妬の感情を醜いと思い、小坂は咄嗟に隠した。醜い感情を抱いていることが知られたら、嫌われてしまうと思ったからだ。神崎に隠しただけでなく自分自身にも隠した。感情を感じるのが苦しかったからだ。まるで悪い感情は何も感じていないかのように、平然と見えるようにふるまった。そんな自分の心の反応に小坂は気づいていなかった。あまりにもいつものことだったからだ。
「まったく頭が上がらない……。それで、女房に、小坂くんのことを話したんだ。前にも言わなかったか?」
言われたような気もするし、よく覚えていなかった。それでも、神崎の話を聞いていないとか覚えていないのは失礼だし、何より自分が馬鹿だと思われたくなかったので、誤魔化しながら小坂は答えた。
「前からおっしゃってましたけど、てっきり、僕をからかって困らせて面白がっているのかと……まさか本気だとは……」
「美人な女房だが、小坂くんから見れば年寄りだ」
「そんなことはないですけど」
小坂は、礼儀ですぐに否定したけれども、確かに神崎の言うとおりかもしれない。熟女に興奮する自分は異常なのかもしれない。好きもの、変態、マニアック……自分を責める言葉が次々に湧いてきて、小坂はそんな自分を恥ずかしく思い、いたたまれなくなった。
 恥ずかしさに熱くなった顔を隠すように下を向いた小坂にとって、神崎の次の言葉は救いでもあったが驚きでもあった。
「だが、女房は、小坂くんをいたく気に入ってね。私に小坂くんの話をせがむんだ。嬉しくてね。そんなに女房と親しく話せたのは何十年ぶりか」
奥さんが小坂を求めてくれたのにはほっとしたし嬉しいし誇りも感じた。
 しかしすぐに別の感情も湧いてきた。
「話したって……どこまでですか」
 神崎は、かなり開けっぴろげでざっくばらんな面があると小坂は感じていた。小坂は自分のことを少しも人に話せなかったので、自分とは違うとうらやましくもあり、魅力にも感じてもいた。統率力だとか人望の厚さだとかが、校長のそんな性格に起因しているのかもと日頃感じていた。が、奥さんに対しても、なんでも話せるのか、と驚嘆し、そんな関係をうらやましく感じた。自分は誰にも自分のことを何も話せないのに……。
 神崎校長や麓戸には少し話せるからすっかり頼りきっていたのに。なのに麓戸は息子のオテルに取られたし、神崎先生には奥さんが……。つまり彼らにとって、自分は大して貴重な存在ではなかったのだ。自分は唯一の自分を明かせる相手と思うから、なんでもしてきたのに……! 相手は自分をさほど重要視していなかった。大した存在ではなかった。自分の犠牲がバカみたいだと悲しくなった。
「まあ、いろいろだよ……。かなりきわどいことまで話してね……女房が聞きながら興奮してるのがわかった……。写真も見せてね。イケメンだと喜んでいたよ」
「はあ……」
そんな以前から奥さんにイケメンだと言われていたと知れば、やっぱりほっとした。自分がお眼鏡にかなっていたのだと思って安心した。あんなに激しく抱き合ったのに、自分の方がずっと若いのに、なのに小坂は自分が不適切な感じが拭えなかったのだ。
「冗談で、『今度家に連れてこようか?』と言ったら本気にして喜んでね」
「そうだったんですか」
密通してしまったと、あんなに自分を責めて苦しくなって罪悪感でいっぱいだったのに……。苦しかったのに! 神崎校長はほんとに人が悪い! でも密通と思い込んでいたせいで余計に異常に興奮しもしたのかもしれない……。
 そこまで考えがいたったとき、小坂は、また、さっきの異常な興奮がよみがえってくるのを感じた。
「美容院に行って髪をセットしたりドレスを買ったり、そりゃあ娘時代のようにウキウキして、下着まで、どれがいいかと私に相談してくるんだ」
「はあ……そうですか」
なんだか惚気られている気分だ。
 しかし下着などと言われれば、さっきの交わりを思い出してドキドキしてくる。奥さんの股やパンティの透け具合、下着の上からベロベロ舐めたり汁ごと吸ったりして、尖ってきた部分を舌先を尖らせて舐めるとのけぞって喘いで、なおも汁を垂らして湿らせて、熱くなったそこへ……。小坂は思い返すのが止まらなくなった。
「『下着は関係ないだろう、見せるわけでもないんだから』というと、ドレスを着るには、ラインが見えたらいけないだとかなんだとか、『小坂くんはどういうのが趣味かしら』とか言ってね。私もあきれて、『大変なもんだな、下着が見えるのが嫌なら、いっそ下着なんかつけてない方が、一番いいんじゃないか』と言ったら『そうね! それがいいわ』ときたからびっくりしたよ」
「それで……」
ノーブラだったのはそういうわけか……。ショーツは履いていたけれど。でもとても小さいショーツで透け透けで、用をなしていないようなエッチな下着だった。
「パンティくらいは履きなさい、冷えると身体によくないからね、と言うのがやっとだったよ」
と校長は苦笑した。
「奥さんの下着……とても素敵でした……」
小坂は、透け透けパンティの割れ目に舌をはさんでこすりあげたのを思い出しながら舌舐めずりした。下半身が疼いて熱くなり思わず腰を動かした。
「ほう、下着はつけた方が好きか。言っておこう」
神崎は小坂の腰の動きをいやらしい目つきで眺めながらニヤニヤして言った。
「いえ、ノーブラも……」
小坂は言いかけて興奮してそれ以上言えなかった。透けた乳首を思い出したからだ。絹のドレスの上からしゃぶりつき、舌で転がし、両手で揉んで腰を擦りつけたことを……。
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