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第二十三章
ことの顛末 1
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後日、麓戸から珍しく電話がかかってきて、話があるから会えないかと言われた。
小坂は書類を渡された。
DNA鑑定書とある。
「妊娠中でもわかるらしい。オデトの髪の毛を拝借した」
開いてみると、小坂愛出人の子である可能性0%、とあった。
「これって……」
どういうことだろう。
「俺の元ワイフの嘘だった」
麓戸が言った。
「嘘……」
小坂は呆然として繰り返した。
「願望かもしれんが」
麓戸は苦笑した。
「誰の子どもだったんですか?」
小坂は聞いた。
「付き合ってた男らしい。オデトと3Pした男だ」
あの男か……。それにしても、そんなことまで麓戸に知られているのか。誰が話したんだ。村田母か、あの男か。恥ずかしさに、きゅっと拳を握った。
「よかったな。ほっとしたか?」
麓戸が、ぽんぽんと小坂の肩を叩いた。
「はい……」
レストランで食事した日から、ずっと不安だった。
「まさか、がっかりしてる?」
麓戸が聞いた。
「いえ、ちょっとだけ、拍子抜けして」
子どもができたのかと覚悟を決めていたので、がっくりした。
「そうか。オデトは子どもが欲しいのか。オデトだったら自分で産めそうなんだがな」
子どもはほしいけれど、無理矢理脅されて襲われたあげくの結果で、相手と結婚もできるのかできないのかわからず、養育費だけは確実に要求され、子どもの成長に関われるのかも不明で、家族という形態を取れるのかも不明で。それは理想と大きく違っていた。
「何言ってるんですか。僕、真剣なのに」
自分で産めたところで同じだろう。もっとつらいのではなかろうか。
「ごめんごめん。オデトが妊娠したら可愛いだろうなぁ、と思って」
麓戸は、小坂の気も知らぬかのように、嬉しそうに笑っている。
「無理です」
人が真剣に悩んでいたのに、ふざけているのが腹立たしくて、つっけんどんに答えた。
「はぁ、オデトを孕ませたいなぁ」
と、麓戸がニヤニヤして言うので、
「そんな妄想やめてください」
と小坂は突っぱねた。
「オデトの子、確かに欲しいな。可愛いだろうな。誰か産んでくれないかな。二人で育てよう」
今度は現実路線で、妄想してくる。
「や、僕、普通に女性と結婚しますし」
小坂が冷たく返すと、麓戸は、
「まだ言ってるのか」
と小声でつぶやいた。
小坂は、ほっとしたせいか、泣けてきた。
「どうしたどうした」
麓戸が慌てたように言って小坂の背中を撫でた。
「そんなに赤ん坊、残念だったか? それとも、あいつを好きだったとか」
麓戸が聞いた。小坂は答えた。
「違いますよ」
村田母のことは好きではない。むしろ嫌いだ。最初から好きではない上に、無理矢理された時点で無理だ。セックスしたのは反応しただけだ。
「おい、剣もほろろか。あいつもかわいそうだな」
麓戸が露悪的に笑う。ちょっと勝ち誇ったような皮肉で自信ありげな笑いだ。
「かわいそうじゃないでしょ。赤ん坊の父親と結婚するんでしょ?」
小坂はすねて言った。
「ああ、そうだ。そうらしい。そんなこと言ってた」
麓戸は忘れてたというように言った。元妻のことなど、あまり関心がないのだろうか。麓戸の元妻への関心の薄さに小坂は、ほっとした。
「僕は捨てられて一人ぼっち」
小坂が肩を落とすと、
「え? 何言ってるんだ。俺がいるじゃないか」
麓戸は、すかさず、そう言って小坂を甘やかした。それが嬉しくて小坂はまた泣いた。
「何、泣いてるんだ」
麓戸は笑って小坂の頭を撫でた。小坂は麓戸の胸に甘えて、ぐすぐすと甘い涙を流した。
小坂は書類を渡された。
DNA鑑定書とある。
「妊娠中でもわかるらしい。オデトの髪の毛を拝借した」
開いてみると、小坂愛出人の子である可能性0%、とあった。
「これって……」
どういうことだろう。
「俺の元ワイフの嘘だった」
麓戸が言った。
「嘘……」
小坂は呆然として繰り返した。
「願望かもしれんが」
麓戸は苦笑した。
「誰の子どもだったんですか?」
小坂は聞いた。
「付き合ってた男らしい。オデトと3Pした男だ」
あの男か……。それにしても、そんなことまで麓戸に知られているのか。誰が話したんだ。村田母か、あの男か。恥ずかしさに、きゅっと拳を握った。
「よかったな。ほっとしたか?」
麓戸が、ぽんぽんと小坂の肩を叩いた。
「はい……」
レストランで食事した日から、ずっと不安だった。
「まさか、がっかりしてる?」
麓戸が聞いた。
「いえ、ちょっとだけ、拍子抜けして」
子どもができたのかと覚悟を決めていたので、がっくりした。
「そうか。オデトは子どもが欲しいのか。オデトだったら自分で産めそうなんだがな」
子どもはほしいけれど、無理矢理脅されて襲われたあげくの結果で、相手と結婚もできるのかできないのかわからず、養育費だけは確実に要求され、子どもの成長に関われるのかも不明で、家族という形態を取れるのかも不明で。それは理想と大きく違っていた。
「何言ってるんですか。僕、真剣なのに」
自分で産めたところで同じだろう。もっとつらいのではなかろうか。
「ごめんごめん。オデトが妊娠したら可愛いだろうなぁ、と思って」
麓戸は、小坂の気も知らぬかのように、嬉しそうに笑っている。
「無理です」
人が真剣に悩んでいたのに、ふざけているのが腹立たしくて、つっけんどんに答えた。
「はぁ、オデトを孕ませたいなぁ」
と、麓戸がニヤニヤして言うので、
「そんな妄想やめてください」
と小坂は突っぱねた。
「オデトの子、確かに欲しいな。可愛いだろうな。誰か産んでくれないかな。二人で育てよう」
今度は現実路線で、妄想してくる。
「や、僕、普通に女性と結婚しますし」
小坂が冷たく返すと、麓戸は、
「まだ言ってるのか」
と小声でつぶやいた。
小坂は、ほっとしたせいか、泣けてきた。
「どうしたどうした」
麓戸が慌てたように言って小坂の背中を撫でた。
「そんなに赤ん坊、残念だったか? それとも、あいつを好きだったとか」
麓戸が聞いた。小坂は答えた。
「違いますよ」
村田母のことは好きではない。むしろ嫌いだ。最初から好きではない上に、無理矢理された時点で無理だ。セックスしたのは反応しただけだ。
「おい、剣もほろろか。あいつもかわいそうだな」
麓戸が露悪的に笑う。ちょっと勝ち誇ったような皮肉で自信ありげな笑いだ。
「かわいそうじゃないでしょ。赤ん坊の父親と結婚するんでしょ?」
小坂はすねて言った。
「ああ、そうだ。そうらしい。そんなこと言ってた」
麓戸は忘れてたというように言った。元妻のことなど、あまり関心がないのだろうか。麓戸の元妻への関心の薄さに小坂は、ほっとした。
「僕は捨てられて一人ぼっち」
小坂が肩を落とすと、
「え? 何言ってるんだ。俺がいるじゃないか」
麓戸は、すかさず、そう言って小坂を甘やかした。それが嬉しくて小坂はまた泣いた。
「何、泣いてるんだ」
麓戸は笑って小坂の頭を撫でた。小坂は麓戸の胸に甘えて、ぐすぐすと甘い涙を流した。
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