370 / 407
第二十四章 校長の家で
イケメン教師、校長室で校長に尋問される
しおりを挟む
校長室の机の前に小坂は立っていた。
椅子に座ったまま校長が尋ねた。
「小坂先生は、まだ例の男と会っているのかね?」
「例の男とは……?」
と小坂が尋ね返すと、校長は、
「とぼけても無駄だよ」
と鼻白らんだ。
「いかがわしい店を経営している男のことだよ。君の可愛い生徒たちが訴えてきたから、調べたんだがね」
と言って椅子から立ち上がり小坂の側に歩いてきた。
麓戸のことだ。
小坂は身構えて身体を固くした。
そんな小坂の肩に手を置いて校長は再び尋ねた。
「あの男とは、どういう関係なんだ?」
「どういうって……別段、僕は何も……」
小坂は口ごもった。
「見回り以外の目的で店に出入りしたことはない、そうだな?」
校長が断定するように聞いた。
「えっと……」
ここは何と答えれば正解なのかと、小坂は戸惑った。
「玩具を買ったことはあるが、それは、覆面で見回り調査をしている際に、店員にすすめられ、あやしまれないために購入した。と、そういうことだったな?」
そんな言い訳をした覚えはないが、校長は、もっともらしい言い訳を述べた。
「はい……」
小坂は、コクコクと何度も頷いた。校長の意図は、そういうことにしておけということだろう。
「教育委員会の調査が入ってね」
校長が渋面を作った。
「えっ……」
小坂はドキッとした。麓戸が危ない。自分も罪に問われるかもしれない。もう何もかもバレているのかも。
小坂は動悸がしてフラついて気分が悪くなってきた。
校長は、苦悩する小坂の様子をじっくりと観て楽しんでいたのだろうか。校長の手にがっしりと肩をつかまれ、うつむけていた顔を上げると、校長の顔は嬉しそうに、ほくそ笑んでいた。
「安心したまえ。調べに入ったら、もう廃業した後だったらしい。あの建物自体も店主のものだし、公安委員会にも確認してもらったが、そもそもあの場所は保全対象区域外で営業区域内なので違法ではなく問題ではないそうだ」
「あ、そうなんですか……」
そもそも警察に調べられたわけじゃないのだから、罪に問われるということはないのか、とホッとした。
しかし不適切な行動として教育委員会から懲戒処分を受ける可能性はあるから、まだ安心はできない。
「ちゃんと風営法に基く届出や廃業届も出ていたらしい」
「へえ……」
さすが麓戸、抜かりがない。ひょっとして店をやめたのも、調査が入ることを察してだったのかもしれない。オデトのため、と言っていたのは、やっぱり嘘じゃないかと思った。
「しかし、大人のおもちゃ販売だけでなく、なんでも、会員制のSM倶楽部もあったそうじゃないか」
校長が耳元で囁く。
「え、えす……へえ……そうなんですか……」
小坂は棒読みになって応じた。冷や汗が出る。
「そういうところでは、密かに売買春が行われていた可能性もあると思うんだが……」
「ばいばい……」
実際、売買春まがいのことをやっていた麓戸と小坂……。そんなことがバレたら人生おしまいだ。いや、あれは、自由恋愛であって、お金もとっていないし……。小坂は必死で頭の中で言い訳を考えるのに忙しい。
「ははは、バイバイ、そうだな。店はバイバイだ」
親父ギャグを思いついて校長は高らかに笑った。
「まあ、廃業したとなれば、そこまで調べるのもね。そういう店を経営するような男を、そういったやり方で追い詰めるのもよくない。それよりももっと効果的な方法があると思うよ、私はね」
よかった。免れた。もうこれ以上調べないでほしい。
「はっ。そうでありますか」
緊張のあまり軍体調になりながら小坂は答えた。
「それよりもっと効果的な方法」と言いながら、校長が悪い顔でほくそ笑んでいたことを、この時、小坂は気付いていなかった。
椅子に座ったまま校長が尋ねた。
「小坂先生は、まだ例の男と会っているのかね?」
「例の男とは……?」
と小坂が尋ね返すと、校長は、
「とぼけても無駄だよ」
と鼻白らんだ。
「いかがわしい店を経営している男のことだよ。君の可愛い生徒たちが訴えてきたから、調べたんだがね」
と言って椅子から立ち上がり小坂の側に歩いてきた。
麓戸のことだ。
小坂は身構えて身体を固くした。
そんな小坂の肩に手を置いて校長は再び尋ねた。
「あの男とは、どういう関係なんだ?」
「どういうって……別段、僕は何も……」
小坂は口ごもった。
「見回り以外の目的で店に出入りしたことはない、そうだな?」
校長が断定するように聞いた。
「えっと……」
ここは何と答えれば正解なのかと、小坂は戸惑った。
「玩具を買ったことはあるが、それは、覆面で見回り調査をしている際に、店員にすすめられ、あやしまれないために購入した。と、そういうことだったな?」
そんな言い訳をした覚えはないが、校長は、もっともらしい言い訳を述べた。
「はい……」
小坂は、コクコクと何度も頷いた。校長の意図は、そういうことにしておけということだろう。
「教育委員会の調査が入ってね」
校長が渋面を作った。
「えっ……」
小坂はドキッとした。麓戸が危ない。自分も罪に問われるかもしれない。もう何もかもバレているのかも。
小坂は動悸がしてフラついて気分が悪くなってきた。
校長は、苦悩する小坂の様子をじっくりと観て楽しんでいたのだろうか。校長の手にがっしりと肩をつかまれ、うつむけていた顔を上げると、校長の顔は嬉しそうに、ほくそ笑んでいた。
「安心したまえ。調べに入ったら、もう廃業した後だったらしい。あの建物自体も店主のものだし、公安委員会にも確認してもらったが、そもそもあの場所は保全対象区域外で営業区域内なので違法ではなく問題ではないそうだ」
「あ、そうなんですか……」
そもそも警察に調べられたわけじゃないのだから、罪に問われるということはないのか、とホッとした。
しかし不適切な行動として教育委員会から懲戒処分を受ける可能性はあるから、まだ安心はできない。
「ちゃんと風営法に基く届出や廃業届も出ていたらしい」
「へえ……」
さすが麓戸、抜かりがない。ひょっとして店をやめたのも、調査が入ることを察してだったのかもしれない。オデトのため、と言っていたのは、やっぱり嘘じゃないかと思った。
「しかし、大人のおもちゃ販売だけでなく、なんでも、会員制のSM倶楽部もあったそうじゃないか」
校長が耳元で囁く。
「え、えす……へえ……そうなんですか……」
小坂は棒読みになって応じた。冷や汗が出る。
「そういうところでは、密かに売買春が行われていた可能性もあると思うんだが……」
「ばいばい……」
実際、売買春まがいのことをやっていた麓戸と小坂……。そんなことがバレたら人生おしまいだ。いや、あれは、自由恋愛であって、お金もとっていないし……。小坂は必死で頭の中で言い訳を考えるのに忙しい。
「ははは、バイバイ、そうだな。店はバイバイだ」
親父ギャグを思いついて校長は高らかに笑った。
「まあ、廃業したとなれば、そこまで調べるのもね。そういう店を経営するような男を、そういったやり方で追い詰めるのもよくない。それよりももっと効果的な方法があると思うよ、私はね」
よかった。免れた。もうこれ以上調べないでほしい。
「はっ。そうでありますか」
緊張のあまり軍体調になりながら小坂は答えた。
「それよりもっと効果的な方法」と言いながら、校長が悪い顔でほくそ笑んでいたことを、この時、小坂は気付いていなかった。
1
お気に入りに追加
2,508
あなたにおすすめの小説

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。


わるいむし
おととななな
BL
新汰は一流の目を持った宝石鑑定士である兄の奏汰のことをとても尊敬している。
しかし、完璧な兄には唯一の欠点があった。
「恋人ができたんだ」
恋多き男の兄が懲りずに連れてきた新しい恋人を新汰はいつものように排除しようとするが…

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる