350 / 407
第二十一章 麓戸の追憶(麓戸視点)
麓戸と池井 5
しおりを挟む
麓戸は別の言葉を選んだ。
「池井は可愛いからさ」
嘘ではない。
「可愛い? 僕が?」
池井が、信じられない、というような顔で聞き返した。
「うん。自覚ないのか? もしかして。言われなかった? 俺だって言われたんだぜ。一年の時。君は美少年だから素質があるって」
「なんの素質?」
「ラグビー部の性奴隷になる素質だよ。池井だって、そう言って勧誘されたんじゃないのか?」
「そんなこと言われなかったよ」
「ああ性奴隷になる素質とは言われなかったよな。何かうまいこと誤魔化してたけど。とにかく俺も池井も、美形だと思われてるんだから行動には気をつけろよ」
「何を気をつけるの?」
池井が聞き返した。言われてみればその通りだ。なんで気をつけなければいけないのだろう。自分たちは何も悪くないのに。
「いや美形かどうかは関係ないか。教師を誘惑するような行動はやめろよ。もし神崎のことを好きなら」
「誘惑なんかしてないよ!」
池井は怒った。それもそうだろう。自分だって上級生たちを誘惑した覚えなどない。怒るのももっともだ。
でも、だったらなぜあんな関係になっているんだ?
「だったら美少年の自覚をもてよ。誘惑してなくても狙われやすいんだから」
「僕のことを神崎先生が好きってこと?」
「それは知らないけど、とにかく神崎とエッチするのはやめろよ。神崎先生が辞めさせられてもいいのか?」
あんな変態的な行為を放っておけない。神崎なんか辞めさせられればいいとも思った。だがことが明るみになって池井が巻き添えになるのも心配だった。
「結局、ハルトだって神崎先生のことよく知らないんじゃないか」
池井は不満そうに言った。
「ああ。そうだな。だけどバレたら神崎が辞めさせられるのは事実だと思うぞ。俺が気づいたってことは他にも気づいてる人がいるかもってことだから、ほんとにやめろよ。池井だって学校に居づらくなるだろう?」
麓戸は池井をいっこうに説得できないことにいら立ちながら言った。
麓戸の言葉に池井はいきりたった。
「学校に居づらくなる? もう十分居づらいんだけど! それでもなんとか僕が学校に来られるのは神崎先生がいるからだよ。先生が味方で僕を守ってくれるから僕はかろうじてここにいられるんだ」
池井は泣きそうな顔で訴えた。麓戸がいてくれるからという、麓戸に対する感謝の言葉は一言もなかった。が、池井の辛そうな顔を見ると何も言えなかった。池井の気持ちも痛いほどにわかった。
これ以上説得しても池井は責められているような気持ちになるだけだろうと思った。もう今日はこれ以上何も言うまいとあきらめた。
「池井にとって神崎は大事な味方なんだな」
麓戸が言うと、池井は黙って頷いた。
「池井は可愛いからさ」
嘘ではない。
「可愛い? 僕が?」
池井が、信じられない、というような顔で聞き返した。
「うん。自覚ないのか? もしかして。言われなかった? 俺だって言われたんだぜ。一年の時。君は美少年だから素質があるって」
「なんの素質?」
「ラグビー部の性奴隷になる素質だよ。池井だって、そう言って勧誘されたんじゃないのか?」
「そんなこと言われなかったよ」
「ああ性奴隷になる素質とは言われなかったよな。何かうまいこと誤魔化してたけど。とにかく俺も池井も、美形だと思われてるんだから行動には気をつけろよ」
「何を気をつけるの?」
池井が聞き返した。言われてみればその通りだ。なんで気をつけなければいけないのだろう。自分たちは何も悪くないのに。
「いや美形かどうかは関係ないか。教師を誘惑するような行動はやめろよ。もし神崎のことを好きなら」
「誘惑なんかしてないよ!」
池井は怒った。それもそうだろう。自分だって上級生たちを誘惑した覚えなどない。怒るのももっともだ。
でも、だったらなぜあんな関係になっているんだ?
「だったら美少年の自覚をもてよ。誘惑してなくても狙われやすいんだから」
「僕のことを神崎先生が好きってこと?」
「それは知らないけど、とにかく神崎とエッチするのはやめろよ。神崎先生が辞めさせられてもいいのか?」
あんな変態的な行為を放っておけない。神崎なんか辞めさせられればいいとも思った。だがことが明るみになって池井が巻き添えになるのも心配だった。
「結局、ハルトだって神崎先生のことよく知らないんじゃないか」
池井は不満そうに言った。
「ああ。そうだな。だけどバレたら神崎が辞めさせられるのは事実だと思うぞ。俺が気づいたってことは他にも気づいてる人がいるかもってことだから、ほんとにやめろよ。池井だって学校に居づらくなるだろう?」
麓戸は池井をいっこうに説得できないことにいら立ちながら言った。
麓戸の言葉に池井はいきりたった。
「学校に居づらくなる? もう十分居づらいんだけど! それでもなんとか僕が学校に来られるのは神崎先生がいるからだよ。先生が味方で僕を守ってくれるから僕はかろうじてここにいられるんだ」
池井は泣きそうな顔で訴えた。麓戸がいてくれるからという、麓戸に対する感謝の言葉は一言もなかった。が、池井の辛そうな顔を見ると何も言えなかった。池井の気持ちも痛いほどにわかった。
これ以上説得しても池井は責められているような気持ちになるだけだろうと思った。もう今日はこれ以上何も言うまいとあきらめた。
「池井にとって神崎は大事な味方なんだな」
麓戸が言うと、池井は黙って頷いた。
0
お気に入りに追加
2,508
あなたにおすすめの小説

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。


わるいむし
おととななな
BL
新汰は一流の目を持った宝石鑑定士である兄の奏汰のことをとても尊敬している。
しかし、完璧な兄には唯一の欠点があった。
「恋人ができたんだ」
恋多き男の兄が懲りずに連れてきた新しい恋人を新汰はいつものように排除しようとするが…

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる