309 / 396
第二十章 麓戸の店で
イケメン教師、久しぶりに麓戸の店で
しおりを挟む
エレベーターを待つ間、麓戸が小坂の髪に触れて言った。
「冷たい」
外は小糠雨が降っていた。小坂の上着がしっとり濡れていた。
エレベーターに乗り込むと麓戸は店のある階のボタンを押した。麓戸の住む最上階ではないことを、小坂は寂しく思った。
かつては、麓戸の部屋で週末を過ごしたものだった。休みの日は麓戸とずっとセックスして過ごしていた。激しくも甘い交わり。
もう、そんな関係ではないのだ。自分でそれを選んだのだ。小坂は自分にそう言い聞かせた。
店に入ると、麓戸は小坂にソファーをすすめた。小坂が訪れないうちに、少し室内の様子が変わっていた。そんな些細な変化にすら一抹の寂しさを感じた。麓戸のことは、何でも知っていたい。そう思っていたのだ。
この寂しさに耐えなければいけない。この苦しい気持ちも一時のことだろうから。
麓戸は湯を沸かし、コーヒーをいれる準備をしているようだった。
麓戸が近くに来たときに、小坂はさりげなく質問した。
「麓戸さん、宮本と何かあったんですか?」
引っかかっていることがあったのだ。
麓戸は、教室で生徒の宮本と顔を合わせたとき、初対面のふりをしていた。
宮本は麓戸の店に行ったことがある。小坂は麓戸の店から出てきた宮本とすれ違った。
麓戸の店はマンションの一室を使った小さな店で店員は麓戸一人。
麓戸と宮本は初対面ではない。
未成年をR指定の店の客としたことを誤魔化すために、麓戸は知らないふりをしたのだろうか。
口裏合わせをするために麓戸は、宮本を食事に誘ったのだろうか。
麓戸の店で、何かあったのではないか。
麓戸が答える前に、コーヒーケトルから松風が聞こえ始めた。
コーヒーの香りとともに、麓戸が、小坂のかけているソファーのところに戻ってきた。
「何を勘ぐっているんだ。何もないよ。相手は子どもじゃないか」
麓戸は苦笑して言った。
「三人で食事をしてきただけだ。安心しろ。宮本君も悪照も、ちゃんと家に送り届けたから」
「麓戸さんは、少年が好きなんですか?」
小坂は尋ねた。
コーヒーカップを小坂の前に置いた麓戸は、
「やきもちをやいているのか?」
と、小坂の顔を見て破顔した。
「まあ、オデトだって、俺から見たら少年だけどな」
麓戸の笑いも、小坂には、はぐらかしに見えた。
「ごまかさないでください。僕が言っているのは十代の少年のことです」
小坂は、やっきになって食いつく。
「誤魔化してないさ。何を気にしているんだ? 好きも何も、違法なことは俺はしない」
あきれたように麓戸が返した。
「そうですよね……。でも宮本は美少年だから……」
小坂はもじもじして言う。
「そんなに心配するなんて、さてはオデト、宮本君を好きなんじゃないか?」
反対に麓戸に疑われてしまった。
「違います」
小坂は答えた。
「赤くなった」
麓戸が笑った。
「彼には嫌われてますから。僕はただ担任の生徒を心配しているんです」
小坂はムキになって言い返した。
「へえ、そうかな」
麓戸は小坂の表情を見てニヤニヤ笑った。
「彼は、生徒会長に推されているらしいな」
「ああ……はい」
「宮本君は、性処理係のようなタイプだがなあ」
麓戸の言葉に、小坂は嫌な気持ちになった。
小坂の気持ちに気づいたのか、麓戸は付け加えた。
「オデト。性処理係に選ばれることは名誉なことなんだぞ。なにせ、学年一の美少年だということだからな」
小坂もそう聞いていた。そう言いくるめられた。
「もう、性処理係はなくなりましたから。僕が廃止させました。それが僕の悲願でしたから」
小坂は不快な気持ちを振り切るようにきっぱりと言った。
「オデトが廃止させた?」
麓戸が驚いたように聞き返した。
「そうです」
小坂はうなずいた。
「今の生徒会長が生徒会長になった選挙から」
小坂は視線を遠くにやった。
今の生徒会長は、一年生の時、性処理係だった。
小坂の時と同じように、性処理係だったからと、生徒会長の推薦から下ろされそうになっていた。
それを阻止したのは小坂だった。
「冷たい」
外は小糠雨が降っていた。小坂の上着がしっとり濡れていた。
エレベーターに乗り込むと麓戸は店のある階のボタンを押した。麓戸の住む最上階ではないことを、小坂は寂しく思った。
かつては、麓戸の部屋で週末を過ごしたものだった。休みの日は麓戸とずっとセックスして過ごしていた。激しくも甘い交わり。
もう、そんな関係ではないのだ。自分でそれを選んだのだ。小坂は自分にそう言い聞かせた。
店に入ると、麓戸は小坂にソファーをすすめた。小坂が訪れないうちに、少し室内の様子が変わっていた。そんな些細な変化にすら一抹の寂しさを感じた。麓戸のことは、何でも知っていたい。そう思っていたのだ。
この寂しさに耐えなければいけない。この苦しい気持ちも一時のことだろうから。
麓戸は湯を沸かし、コーヒーをいれる準備をしているようだった。
麓戸が近くに来たときに、小坂はさりげなく質問した。
「麓戸さん、宮本と何かあったんですか?」
引っかかっていることがあったのだ。
麓戸は、教室で生徒の宮本と顔を合わせたとき、初対面のふりをしていた。
宮本は麓戸の店に行ったことがある。小坂は麓戸の店から出てきた宮本とすれ違った。
麓戸の店はマンションの一室を使った小さな店で店員は麓戸一人。
麓戸と宮本は初対面ではない。
未成年をR指定の店の客としたことを誤魔化すために、麓戸は知らないふりをしたのだろうか。
口裏合わせをするために麓戸は、宮本を食事に誘ったのだろうか。
麓戸の店で、何かあったのではないか。
麓戸が答える前に、コーヒーケトルから松風が聞こえ始めた。
コーヒーの香りとともに、麓戸が、小坂のかけているソファーのところに戻ってきた。
「何を勘ぐっているんだ。何もないよ。相手は子どもじゃないか」
麓戸は苦笑して言った。
「三人で食事をしてきただけだ。安心しろ。宮本君も悪照も、ちゃんと家に送り届けたから」
「麓戸さんは、少年が好きなんですか?」
小坂は尋ねた。
コーヒーカップを小坂の前に置いた麓戸は、
「やきもちをやいているのか?」
と、小坂の顔を見て破顔した。
「まあ、オデトだって、俺から見たら少年だけどな」
麓戸の笑いも、小坂には、はぐらかしに見えた。
「ごまかさないでください。僕が言っているのは十代の少年のことです」
小坂は、やっきになって食いつく。
「誤魔化してないさ。何を気にしているんだ? 好きも何も、違法なことは俺はしない」
あきれたように麓戸が返した。
「そうですよね……。でも宮本は美少年だから……」
小坂はもじもじして言う。
「そんなに心配するなんて、さてはオデト、宮本君を好きなんじゃないか?」
反対に麓戸に疑われてしまった。
「違います」
小坂は答えた。
「赤くなった」
麓戸が笑った。
「彼には嫌われてますから。僕はただ担任の生徒を心配しているんです」
小坂はムキになって言い返した。
「へえ、そうかな」
麓戸は小坂の表情を見てニヤニヤ笑った。
「彼は、生徒会長に推されているらしいな」
「ああ……はい」
「宮本君は、性処理係のようなタイプだがなあ」
麓戸の言葉に、小坂は嫌な気持ちになった。
小坂の気持ちに気づいたのか、麓戸は付け加えた。
「オデト。性処理係に選ばれることは名誉なことなんだぞ。なにせ、学年一の美少年だということだからな」
小坂もそう聞いていた。そう言いくるめられた。
「もう、性処理係はなくなりましたから。僕が廃止させました。それが僕の悲願でしたから」
小坂は不快な気持ちを振り切るようにきっぱりと言った。
「オデトが廃止させた?」
麓戸が驚いたように聞き返した。
「そうです」
小坂はうなずいた。
「今の生徒会長が生徒会長になった選挙から」
小坂は視線を遠くにやった。
今の生徒会長は、一年生の時、性処理係だった。
小坂の時と同じように、性処理係だったからと、生徒会長の推薦から下ろされそうになっていた。
それを阻止したのは小坂だった。
0
お気に入りに追加
2,465
あなたにおすすめの小説
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる