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第二十章 麓戸の店で
イケメン教師、久しぶりに麓戸の店で
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エレベーターを待つ間、麓戸が小坂の髪に触れて言った。
「冷たい」
外は小糠雨が降っていた。小坂の上着がしっとり濡れていた。
エレベーターに乗り込むと麓戸は店のある階のボタンを押した。麓戸の住む最上階ではないことを、小坂は寂しく思った。
かつては、麓戸の部屋で週末を過ごしたものだった。休みの日は麓戸とずっとセックスして過ごしていた。激しくも甘い交わり。
もう、そんな関係ではないのだ。自分でそれを選んだのだ。小坂は自分にそう言い聞かせた。
店に入ると、麓戸は小坂にソファーをすすめた。小坂が訪れないうちに、少し室内の様子が変わっていた。そんな些細な変化にすら一抹の寂しさを感じた。麓戸のことは、何でも知っていたい。そう思っていたのだ。
この寂しさに耐えなければいけない。この苦しい気持ちも一時のことだろうから。
麓戸は湯を沸かし、コーヒーをいれる準備をしているようだった。
麓戸が近くに来たときに、小坂はさりげなく質問した。
「麓戸さん、宮本と何かあったんですか?」
引っかかっていることがあったのだ。
麓戸は、教室で生徒の宮本と顔を合わせたとき、初対面のふりをしていた。
宮本は麓戸の店に行ったことがある。小坂は麓戸の店から出てきた宮本とすれ違った。
麓戸の店はマンションの一室を使った小さな店で店員は麓戸一人。
麓戸と宮本は初対面ではない。
未成年をR指定の店の客としたことを誤魔化すために、麓戸は知らないふりをしたのだろうか。
口裏合わせをするために麓戸は、宮本を食事に誘ったのだろうか。
麓戸の店で、何かあったのではないか。
麓戸が答える前に、コーヒーケトルから松風が聞こえ始めた。
コーヒーの香りとともに、麓戸が、小坂のかけているソファーのところに戻ってきた。
「何を勘ぐっているんだ。何もないよ。相手は子どもじゃないか」
麓戸は苦笑して言った。
「三人で食事をしてきただけだ。安心しろ。宮本君も悪照も、ちゃんと家に送り届けたから」
「麓戸さんは、少年が好きなんですか?」
小坂は尋ねた。
コーヒーカップを小坂の前に置いた麓戸は、
「やきもちをやいているのか?」
と、小坂の顔を見て破顔した。
「まあ、オデトだって、俺から見たら少年だけどな」
麓戸の笑いも、小坂には、はぐらかしに見えた。
「ごまかさないでください。僕が言っているのは十代の少年のことです」
小坂は、やっきになって食いつく。
「誤魔化してないさ。何を気にしているんだ? 好きも何も、違法なことは俺はしない」
あきれたように麓戸が返した。
「そうですよね……。でも宮本は美少年だから……」
小坂はもじもじして言う。
「そんなに心配するなんて、さてはオデト、宮本君を好きなんじゃないか?」
反対に麓戸に疑われてしまった。
「違います」
小坂は答えた。
「赤くなった」
麓戸が笑った。
「彼には嫌われてますから。僕はただ担任の生徒を心配しているんです」
小坂はムキになって言い返した。
「へえ、そうかな」
麓戸は小坂の表情を見てニヤニヤ笑った。
「彼は、生徒会長に推されているらしいな」
「ああ……はい」
「宮本君は、性処理係のようなタイプだがなあ」
麓戸の言葉に、小坂は嫌な気持ちになった。
小坂の気持ちに気づいたのか、麓戸は付け加えた。
「オデト。性処理係に選ばれることは名誉なことなんだぞ。なにせ、学年一の美少年だということだからな」
小坂もそう聞いていた。そう言いくるめられた。
「もう、性処理係はなくなりましたから。僕が廃止させました。それが僕の悲願でしたから」
小坂は不快な気持ちを振り切るようにきっぱりと言った。
「オデトが廃止させた?」
麓戸が驚いたように聞き返した。
「そうです」
小坂はうなずいた。
「今の生徒会長が生徒会長になった選挙から」
小坂は視線を遠くにやった。
今の生徒会長は、一年生の時、性処理係だった。
小坂の時と同じように、性処理係だったからと、生徒会長の推薦から下ろされそうになっていた。
それを阻止したのは小坂だった。
「冷たい」
外は小糠雨が降っていた。小坂の上着がしっとり濡れていた。
エレベーターに乗り込むと麓戸は店のある階のボタンを押した。麓戸の住む最上階ではないことを、小坂は寂しく思った。
かつては、麓戸の部屋で週末を過ごしたものだった。休みの日は麓戸とずっとセックスして過ごしていた。激しくも甘い交わり。
もう、そんな関係ではないのだ。自分でそれを選んだのだ。小坂は自分にそう言い聞かせた。
店に入ると、麓戸は小坂にソファーをすすめた。小坂が訪れないうちに、少し室内の様子が変わっていた。そんな些細な変化にすら一抹の寂しさを感じた。麓戸のことは、何でも知っていたい。そう思っていたのだ。
この寂しさに耐えなければいけない。この苦しい気持ちも一時のことだろうから。
麓戸は湯を沸かし、コーヒーをいれる準備をしているようだった。
麓戸が近くに来たときに、小坂はさりげなく質問した。
「麓戸さん、宮本と何かあったんですか?」
引っかかっていることがあったのだ。
麓戸は、教室で生徒の宮本と顔を合わせたとき、初対面のふりをしていた。
宮本は麓戸の店に行ったことがある。小坂は麓戸の店から出てきた宮本とすれ違った。
麓戸の店はマンションの一室を使った小さな店で店員は麓戸一人。
麓戸と宮本は初対面ではない。
未成年をR指定の店の客としたことを誤魔化すために、麓戸は知らないふりをしたのだろうか。
口裏合わせをするために麓戸は、宮本を食事に誘ったのだろうか。
麓戸の店で、何かあったのではないか。
麓戸が答える前に、コーヒーケトルから松風が聞こえ始めた。
コーヒーの香りとともに、麓戸が、小坂のかけているソファーのところに戻ってきた。
「何を勘ぐっているんだ。何もないよ。相手は子どもじゃないか」
麓戸は苦笑して言った。
「三人で食事をしてきただけだ。安心しろ。宮本君も悪照も、ちゃんと家に送り届けたから」
「麓戸さんは、少年が好きなんですか?」
小坂は尋ねた。
コーヒーカップを小坂の前に置いた麓戸は、
「やきもちをやいているのか?」
と、小坂の顔を見て破顔した。
「まあ、オデトだって、俺から見たら少年だけどな」
麓戸の笑いも、小坂には、はぐらかしに見えた。
「ごまかさないでください。僕が言っているのは十代の少年のことです」
小坂は、やっきになって食いつく。
「誤魔化してないさ。何を気にしているんだ? 好きも何も、違法なことは俺はしない」
あきれたように麓戸が返した。
「そうですよね……。でも宮本は美少年だから……」
小坂はもじもじして言う。
「そんなに心配するなんて、さてはオデト、宮本君を好きなんじゃないか?」
反対に麓戸に疑われてしまった。
「違います」
小坂は答えた。
「赤くなった」
麓戸が笑った。
「彼には嫌われてますから。僕はただ担任の生徒を心配しているんです」
小坂はムキになって言い返した。
「へえ、そうかな」
麓戸は小坂の表情を見てニヤニヤ笑った。
「彼は、生徒会長に推されているらしいな」
「ああ……はい」
「宮本君は、性処理係のようなタイプだがなあ」
麓戸の言葉に、小坂は嫌な気持ちになった。
小坂の気持ちに気づいたのか、麓戸は付け加えた。
「オデト。性処理係に選ばれることは名誉なことなんだぞ。なにせ、学年一の美少年だということだからな」
小坂もそう聞いていた。そう言いくるめられた。
「もう、性処理係はなくなりましたから。僕が廃止させました。それが僕の悲願でしたから」
小坂は不快な気持ちを振り切るようにきっぱりと言った。
「オデトが廃止させた?」
麓戸が驚いたように聞き返した。
「そうです」
小坂はうなずいた。
「今の生徒会長が生徒会長になった選挙から」
小坂は視線を遠くにやった。
今の生徒会長は、一年生の時、性処理係だった。
小坂の時と同じように、性処理係だったからと、生徒会長の推薦から下ろされそうになっていた。
それを阻止したのは小坂だった。
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