284 / 407
第十八章 生徒の村田とイケメン教師
イケメン教師、村田に父親について聞かれる
しおりを挟む
「父親って、どんな感じなんだろう?」
村田が聞いてきた。
「俺、父親の記憶がなくってさ、どう対応したらいいか、わかんないんだよね。一般的にさ、どういう感じなんだろう?」
村田の問いに、小坂は、
「さあ、僕も知らない」
と、ぼんやり答えた。ガラス窓から夕暮れの空が見えた。
「えっ、そうなの?」
村田が驚いたように小坂の顔を見る。
まるで、教師なら、何でも知っていて何でも答えられると思っているかのように。残念だな。教師にも知らないこと、答えられないことがたくさんある。難しい教科の質問なら、いくらでも答えられるが、自分のプライベートについてなど一番答えたくない質問だ。
「実の父親のことは、よく覚えていない」
村田の熱意ある眼差しに負けて小坂は仕方なく答えた。
「どうして?」
村田は、授業中にそんな態度だったらいいのに、と思うような熱心さで問う。
「父親が失踪したから、ほとんど知らない」
小坂は、夕焼け雲の赤黒い縁を目でなぞりながら答えた。
「しっそう? いなくなったってこと?」
村田が聞き返す。
「そうみたいだね」
小坂は人ごとのように答える。
「そうなんだ? だから、校長と仲いいんだ?」
村田が聞く。
「え?」
なぜ、そうなるのか。論理に飛躍がある。
「いや」
神崎先生は関係ない。
「校長先生は僕が高校生だった時、担任の先生だったんだよ」
と小坂は説明した。
けれど、村田は、小坂の説明には耳を貸さない。
「なんか納得した。なんで、校長なんかと仲いいのかなーって、ずっと思ってた」
などと一人で頷いていた。
「で、先生の彼氏ってどんな人?」
また懲りずに、村田が、小坂の恋人について詮索してきた。
村田は、どうしても小坂の私生活が気になるらしい。「彼氏などいない」と答えるのは、かえって良くないだろうか。
小坂が答えを迷っていると、
「もしかして、校長先生?」
と村田は聞いてきた。
「えっ?」
小坂は不意をつかれた。
恋人はいるのかと聞かれて、麓戸のことを言おうか言うまいかと迷っていた。
なのに校長か。神崎先生を恋人と間違われるようになったとは。
片想いだった長の年月を思い起こすと感慨深かった。
「何びっくりしてんの?」
村田は笑った。
「そっか。校長先生が彼氏なわけないよねぇ。いくらなんでも年の差ありすぎでしょ」
村田に言われて、
「そうだな」
と小坂も認めた。
校長との関係について、村田がどこまで知っているのかよくわからない。いずれにせよ、校長との関係を詳しく聞かれると困ったことになる。
「俺と小坂だって、十歳差で、年の差あるなって思ってたけど、小坂と校長先生の年の差って、ヤバくない?」
村田は、そう言って笑う。
「なんで、あんなオヤジが好きなわけ?」
確かに、麓戸とならまだしも、校長とは年齢の差がありすぎる。親子ほども離れている。
「俺のが良くね?」
気づいた時には村田の身体が近くにあった。
村田が聞いてきた。
「俺、父親の記憶がなくってさ、どう対応したらいいか、わかんないんだよね。一般的にさ、どういう感じなんだろう?」
村田の問いに、小坂は、
「さあ、僕も知らない」
と、ぼんやり答えた。ガラス窓から夕暮れの空が見えた。
「えっ、そうなの?」
村田が驚いたように小坂の顔を見る。
まるで、教師なら、何でも知っていて何でも答えられると思っているかのように。残念だな。教師にも知らないこと、答えられないことがたくさんある。難しい教科の質問なら、いくらでも答えられるが、自分のプライベートについてなど一番答えたくない質問だ。
「実の父親のことは、よく覚えていない」
村田の熱意ある眼差しに負けて小坂は仕方なく答えた。
「どうして?」
村田は、授業中にそんな態度だったらいいのに、と思うような熱心さで問う。
「父親が失踪したから、ほとんど知らない」
小坂は、夕焼け雲の赤黒い縁を目でなぞりながら答えた。
「しっそう? いなくなったってこと?」
村田が聞き返す。
「そうみたいだね」
小坂は人ごとのように答える。
「そうなんだ? だから、校長と仲いいんだ?」
村田が聞く。
「え?」
なぜ、そうなるのか。論理に飛躍がある。
「いや」
神崎先生は関係ない。
「校長先生は僕が高校生だった時、担任の先生だったんだよ」
と小坂は説明した。
けれど、村田は、小坂の説明には耳を貸さない。
「なんか納得した。なんで、校長なんかと仲いいのかなーって、ずっと思ってた」
などと一人で頷いていた。
「で、先生の彼氏ってどんな人?」
また懲りずに、村田が、小坂の恋人について詮索してきた。
村田は、どうしても小坂の私生活が気になるらしい。「彼氏などいない」と答えるのは、かえって良くないだろうか。
小坂が答えを迷っていると、
「もしかして、校長先生?」
と村田は聞いてきた。
「えっ?」
小坂は不意をつかれた。
恋人はいるのかと聞かれて、麓戸のことを言おうか言うまいかと迷っていた。
なのに校長か。神崎先生を恋人と間違われるようになったとは。
片想いだった長の年月を思い起こすと感慨深かった。
「何びっくりしてんの?」
村田は笑った。
「そっか。校長先生が彼氏なわけないよねぇ。いくらなんでも年の差ありすぎでしょ」
村田に言われて、
「そうだな」
と小坂も認めた。
校長との関係について、村田がどこまで知っているのかよくわからない。いずれにせよ、校長との関係を詳しく聞かれると困ったことになる。
「俺と小坂だって、十歳差で、年の差あるなって思ってたけど、小坂と校長先生の年の差って、ヤバくない?」
村田は、そう言って笑う。
「なんで、あんなオヤジが好きなわけ?」
確かに、麓戸とならまだしも、校長とは年齢の差がありすぎる。親子ほども離れている。
「俺のが良くね?」
気づいた時には村田の身体が近くにあった。
0
お気に入りに追加
2,508
あなたにおすすめの小説

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。


わるいむし
おととななな
BL
新汰は一流の目を持った宝石鑑定士である兄の奏汰のことをとても尊敬している。
しかし、完璧な兄には唯一の欠点があった。
「恋人ができたんだ」
恋多き男の兄が懲りずに連れてきた新しい恋人を新汰はいつものように排除しようとするが…

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる