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第十二章 電車編

若い男

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「みんな君を見ている」
校長は、言った。
「当然だ。さっき、あんな卑猥なセックスショーを繰り広げたんだからね。ほら、君みたいなきれいな若い男が、君のことを、じっと見つめているよ」
校長は、小坂を振り向かせた。
「彼にも、君のいやらしい姿を、近くで、もっとよく見せてあげようじゃないか」

 校長の視線をたどると、校長の言う、「きれいな若い男」がいた。「あの人に見られるなんて恥ずかしい」と、とっさに小坂は思った。今までさんざん下卑たオヤジたちに弄ばれて平気でいたというのに、突然、小坂の内に理性が戻ってきた。

 若い男が寄ってきた。人をかき分け小坂の方を目指して、まっすぐに。小坂の視線をとらえて離さない。同じ年ごろか、それとも少し年上なのかもしれない。近寄ってきたスーツ姿のサラリーマンの袖口をつかんで、今すぐ助けてと、すがりつきたい気持ちに小坂は襲われた。
 こんな常軌を逸した生活から自分は救われたい。

 だが、その気持ちを抑えて小坂は、言った。まるで、迷惑であるかのように。よそよそしく。
「なん、ですか」
口からこぼれ落ちた言葉は、外界への不信感と警戒心に満ち満ちていた。


※奏さんのSSに関連しています。
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感想 25

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