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第七章
傷
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僕は、ふと気になって弓弦さんに尋ねた。
「ねえ、そういえば、仕事って、どうしているの?」
「ずっと前にやめた」
彼は、言いたくないことを聞かれたかのように、不機嫌そうに言った。
「えっ、いつ? 怪我をしたから休んでいるんだとばかり思っていた。どうして僕に黙っていたの?」
「別に、君に言う必要なんてないだろう」
確かに、そうだ。別に、僕は彼の家族でもないし、僕に報告しなければいけないという義務はない。でも、彼からしてみたらその程度の存在ってことか、と思うと、彼のことを、あんなに必死になって心配していたのが馬鹿らしくなって、かっとなって僕は言った。
「何だって? 僕がどんなにあなたのことをいつも思っているか。そうだ、どうせ、あなたにはわからないんだ、僕の気持ちなんて!」
「では、君には、君の気持ちがわかっているのか」
「何をっ」
売り言葉に買い言葉で、僕は頭に血がのぼるのを感じた。
「自分でもわかっていないのに、俺にわかれというのは、無理だ」
僕は、ふと、弓弦さんの静かな表情に、弓弦さんが意地悪で言っているわけでも、怒っているのでもないことに気付いた。そして、なぜだかそのとき理解した。capisco
「あなたも前に言ったね。『お前にわかるわけがない』って」
それは「俺の気持ちをわかってくれ」と同義だったのだ。僕は、あいかわらず言葉ではわからなかった。でも知っていた。ti amo アナタヲアイシテル。
そして、やっかいなことに、僕は同時に深く傷ついていた。だから、いっそう僕は、わからなかった。僕は傷ついていたのだ。
「ねえ、そういえば、仕事って、どうしているの?」
「ずっと前にやめた」
彼は、言いたくないことを聞かれたかのように、不機嫌そうに言った。
「えっ、いつ? 怪我をしたから休んでいるんだとばかり思っていた。どうして僕に黙っていたの?」
「別に、君に言う必要なんてないだろう」
確かに、そうだ。別に、僕は彼の家族でもないし、僕に報告しなければいけないという義務はない。でも、彼からしてみたらその程度の存在ってことか、と思うと、彼のことを、あんなに必死になって心配していたのが馬鹿らしくなって、かっとなって僕は言った。
「何だって? 僕がどんなにあなたのことをいつも思っているか。そうだ、どうせ、あなたにはわからないんだ、僕の気持ちなんて!」
「では、君には、君の気持ちがわかっているのか」
「何をっ」
売り言葉に買い言葉で、僕は頭に血がのぼるのを感じた。
「自分でもわかっていないのに、俺にわかれというのは、無理だ」
僕は、ふと、弓弦さんの静かな表情に、弓弦さんが意地悪で言っているわけでも、怒っているのでもないことに気付いた。そして、なぜだかそのとき理解した。capisco
「あなたも前に言ったね。『お前にわかるわけがない』って」
それは「俺の気持ちをわかってくれ」と同義だったのだ。僕は、あいかわらず言葉ではわからなかった。でも知っていた。ti amo アナタヲアイシテル。
そして、やっかいなことに、僕は同時に深く傷ついていた。だから、いっそう僕は、わからなかった。僕は傷ついていたのだ。
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