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ジャンは恋人のケイに電話する
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ジャンはケイに電話した。
ケイへの電話は、仕事で繋がらないことがほとんどだ。だが、今日は珍しく、すぐ声がした。
「はい、ケイです」
聞くだけでドキドキするようなハンサムな良い声だ。
だけど今は、その声にうっとりしている場合ではない。
「なんか、ケイの息子だっていうのに、勝手に部屋に入られて困ってるんだけど!」
アユムは憤慨して言った。
「ああ、アユム、着いたのか。寮に入るまで、いさせてやって」
ケイの温かな声がジャンの耳元で、そう言う。
「ええっ? 困るよ、こんな子ども」
そう言うジャン自身も、まだ十七だ。大人のケイから見たら、自分も子どもかもしれないという考えは、ジャンの頭の中に全くなかった。自分だけは、いっぱしの大人のつもりだったのだ。
だから、電話の向こうでケイが苦笑したのも、ジャンには意味がわからなかった。
「アユムは十六だよ。ジャンと同じ年頃だからいいだろ?」
ケイは、そんなことを言うのだ。
「年下って嫌い」
ジャンはプンとして言い放った。
「しかも無神経だよケイ。ケイの息子が来て僕が喜ぶとでも思ってるの?」
ジャンは鈍感な恋人に抗議した。
「ごめん。そうか。ジャン、一人で寂しがってたから喜ぶかなあと思ったけど、だめか」
喜ぶだって!? 喜ぶわけない。好きな人が、誰かとこしらえた子どもなのだ。想像しただけで嫉妬で気が狂いそうになる。
しかも、ケイは自分の子を大事に思っているんだろう。だからこうして、ジャンに断りもなく呼びよせたりして。
いわば目の前にいる少年は、ライバルだ。ケイをめぐって、ケイの愛を取り合うライバルなのだ。
そしてジャンには、とうてい自分に勝ち目がないように思われた。
喜ぶだって!? とんでもない!
ケイは謝っている。だけどこれは謝って済む問題じゃない。
ケイは全然わかってない! とんだ勘違いだ!
ケイは僕の気持ちなんか、これっぽっちもわかってくれてないんだ!
ジャンは悲しみと寂しさと孤独に胸をかきむしりたくなった。
「寂しがってたから」って? 僕が「一人で寂しがってたから」って!?
「ケイがいないから、ケイじゃなきゃダメなのに、なんにもわかってない……嫌い! もうケイも嫌い!」
ジャンは癇癪を起こした。
泣きたかった。泣き喚きたかった。だけど目の前には、ケイの息子とやらがいる。初対面だ。泣くわけにはいかない。子どもの前で泣くわけにはいかない。我慢していると涙が喉に詰まって喉が痛かった。
こういうところが子どもだと、ケイに思われていることをアユムはわかっていなかった。なぜなら、自分を、いっぱしの対等な大人の恋人だと思いこんでいたから。
「ああ、弱ったなあ。まあ、悪いけど、今夜はがまんして」
電話が切れた。
ケイへの電話は、仕事で繋がらないことがほとんどだ。だが、今日は珍しく、すぐ声がした。
「はい、ケイです」
聞くだけでドキドキするようなハンサムな良い声だ。
だけど今は、その声にうっとりしている場合ではない。
「なんか、ケイの息子だっていうのに、勝手に部屋に入られて困ってるんだけど!」
アユムは憤慨して言った。
「ああ、アユム、着いたのか。寮に入るまで、いさせてやって」
ケイの温かな声がジャンの耳元で、そう言う。
「ええっ? 困るよ、こんな子ども」
そう言うジャン自身も、まだ十七だ。大人のケイから見たら、自分も子どもかもしれないという考えは、ジャンの頭の中に全くなかった。自分だけは、いっぱしの大人のつもりだったのだ。
だから、電話の向こうでケイが苦笑したのも、ジャンには意味がわからなかった。
「アユムは十六だよ。ジャンと同じ年頃だからいいだろ?」
ケイは、そんなことを言うのだ。
「年下って嫌い」
ジャンはプンとして言い放った。
「しかも無神経だよケイ。ケイの息子が来て僕が喜ぶとでも思ってるの?」
ジャンは鈍感な恋人に抗議した。
「ごめん。そうか。ジャン、一人で寂しがってたから喜ぶかなあと思ったけど、だめか」
喜ぶだって!? 喜ぶわけない。好きな人が、誰かとこしらえた子どもなのだ。想像しただけで嫉妬で気が狂いそうになる。
しかも、ケイは自分の子を大事に思っているんだろう。だからこうして、ジャンに断りもなく呼びよせたりして。
いわば目の前にいる少年は、ライバルだ。ケイをめぐって、ケイの愛を取り合うライバルなのだ。
そしてジャンには、とうてい自分に勝ち目がないように思われた。
喜ぶだって!? とんでもない!
ケイは謝っている。だけどこれは謝って済む問題じゃない。
ケイは全然わかってない! とんだ勘違いだ!
ケイは僕の気持ちなんか、これっぽっちもわかってくれてないんだ!
ジャンは悲しみと寂しさと孤独に胸をかきむしりたくなった。
「寂しがってたから」って? 僕が「一人で寂しがってたから」って!?
「ケイがいないから、ケイじゃなきゃダメなのに、なんにもわかってない……嫌い! もうケイも嫌い!」
ジャンは癇癪を起こした。
泣きたかった。泣き喚きたかった。だけど目の前には、ケイの息子とやらがいる。初対面だ。泣くわけにはいかない。子どもの前で泣くわけにはいかない。我慢していると涙が喉に詰まって喉が痛かった。
こういうところが子どもだと、ケイに思われていることをアユムはわかっていなかった。なぜなら、自分を、いっぱしの対等な大人の恋人だと思いこんでいたから。
「ああ、弱ったなあ。まあ、悪いけど、今夜はがまんして」
電話が切れた。
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