凶幻獣戦域ラージャーラ

幾橋テツミ

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第3章(終章)まつろわぬ者の旗

凶物どもの最期④

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 二手に別れ、破断銃を手に壁に身を寄せつつ、人知れず展開される摩訶不思議な戦闘──いやのゆくえを窺う4人の戦士であったが、予期せぬ出現者によって場面は一気に終末の様相を呈するに至った!

 まさに三体の機兵を待ち受けていたかのように一旦光線発射を停止した操獣師たちは地上10レクト(7.5メートル)ほどの空中に静止したまま、どこか虚ろな眼差しで鋼の処刑人の挙動を見守る構えのようである…。

 かくて神の雷のごとき怪光線に長時間曝され、苦悶しつつ末期の巨大な芋虫のように床を蠢く陀幽巴と鑼幽巴の鱗状皮膚は殲闘者の電撃攻撃の餌食となった末弟の悲劇を再現するかのごとく無惨に灼け焦げ、吐き気を催す異臭を立ち昇らせていた…。

 さて、三体が居並ぶ際には常に中央に位置してきた金色のボディカラーの機兵はここでも直接行動に出ることはなく、
長兄の傍らには赤の、次弟には青の機体が歩み寄り、素早く右腕の超刃を振りかざした機兵たちはまさにマシンならではの冷徹さをもって哀れな龍坊主の首筋目がけて振り下ろしたのである!

「ひぎいいいいッ!たッ救けてくれッ!!赦してくれえーッッ!!!」

 ──果たしてこの無力な命乞いの叫びが、最強にして最凶と畏怖され、ラージャーラ全界の隅々までその名を轟かせた海の教軍超兵にして凱鱗領執教士長・幽巴兄弟の喉奥から迸ったものであるとは何人が想像し得たであろうか?

 しかしながらいかに強壮な人工生命体とはいえ、紛うことなき有機生物である教軍超兵の叫びが無機物の集合体である斬撃機兵の行為を止め得るはずもなく、陀幽巴と鑼幽巴の堅牢な頸骨は三度の斬撃を耐え忍んだものの、淡々と…されど最大のパワーを込めて加えられた次なる一撃が遂に止めとなって、群青色の廊下を黝い血液で汚しつつ遂に胴体から離断したのであった…。

「終わった──あれほどの戦鬼の最期とは到底信じられぬほどに…こう言ってよければ、物悲しいまでにあっけなく…!」

 ──あたかもこの主任技師の詠嘆を合図としたかのように4人の操獣師の聖幻晶が再び火を噴き、りさらとチラワンからの光線が陀幽巴の、ローネとミリラニからのビームが鑼幽巴の髄魄を駄目押しするかのように貫いたのであった…。

 ここではじめて金色の機兵が動き、右手に陀幽巴の、左手に鑼幽巴の首を拾い上げるが、斬首刑を行った他の二体も首無しの骸をそれぞれの肩に担いで立ち上がる。

「一体、あれをどうするつもりだ…?

 ──まさかロゼムス公に研究材料として献上するつもりなのか…!?」

 若干の嫌悪感を込めてデュルトが呟いたその時、主のもとに帰還するため三体が階段に向き直ったその時を見計らったかのようにその上り口に楕円形の淡い白光が発生した。

 有機物・無機物含めた全ての存在者の視線が注がれる中姿を現したのは、豪奢にして端麗な黄金の仮面で素顔を隠した長身の黒衣の魔人──そしてその右手には天才技術者ロゼムス公の、左手には淫祀邪教の巫女の貌を隠し持つ若き大女優ルターナの共に美しかった生前とは似ても似つかぬ恐怖と苦痛に醜く歪んだ断末魔の形相が刻まれた生首が掲げられていたのである──!

 あまりの衝撃に声もなく凍りつく4人の錬装者──されど主任技師ソートンは誰に告げるでもなく消え入るかのごとき小声で囁いたのであった…。

「や…奴は…う、うう…そうか…じ、を目の当たりにするのはもちろんはじめてだが…ま、間違いない、こいつこそが神牙教軍首領・鏡の教聖だ──!!」


  

 

 

 

 

 

 

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