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第3章(終章)まつろわぬ者の旗
凶物どもの最期②
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《晶明刻》も3分の2余りが尽きかけた頃、鄭 雅桃はベウルセン凱星殿に向けて閃煌紫燕を駆っていた。
およそ6セスタ(54分前)、煌輪塔ホテル第6層の窓外に現れた聖団(無元造房)差し回しの2機の偵察機に分乗した“C‐キャップ”延吉道子(彼女は〔超小型嵐貝〕を使用せずに済んだことに心底安堵していた)と12名の操獣師たちはそのままおよそ8000レクト(約6km)西北に駐機した大型輸送機へと移送され、最年少特級操獣師である雅桃は直ちに主任技師ソートンとのブリーフィングに臨み、無元造房の総力を結集した結果遂にキャッチした4人の操獣師たちの居場所を知らされたのであった。
それによると、この大会場を舞台として神牙教軍主催による大規模な祭事が挙行されることはレシャ湾上空に百体に迫らんとする数の教軍幹部が搭乗せし飛翔系刃獣が集結していることからもほぼ確実であり、囚われた聖団員たちはこの呪われし祝祭に何らかの用途で駆り出されることが懸念されるという…。
「──通常ならばこのような場合こそ聖団の〈白兵部門〉の専門家たる錬装者たちの出番なのですが、折悪しく海龍党討伐のため殆ど全員が死霊島遠征に参加しておるありさま──かくなる上は、我ら無元造房が起ち上がるしかありますまい…。
即ち私をはじめ、ラサム、デュルト、タレックが錬装磁甲をまとった決死隊となって、“地獄の祭典”が開始される直前に凱星殿に乗り込み、リサラたちを救出するということです!
そして鄭操獣師、貴女にお任せしたいのは、教軍幹部たちの動きを監視し、場合によっては迎撃して頂くというものです…。
──聞いてのとおり大変に危険な任務となりますが、やって頂けますね…?」
この問いに、雅桃は頬を上気させて叫んだ。
「もちろんですッ!
りさら様…いいえ萩邑先輩を救うためならば、この鄭 雅桃、喜んで生命を危地に晒してみせますわッ!!
そして憎むべき敵が幾百幾千群がってこようとも、これ以上指一本たりともあの方に触れさせは致しませんッッ!!!」
──かくて錬装者たちが好むいかにも鎧然とした磁甲とは一味異なる、より柔軟な衣裳然とした形象の〈全身装甲服〉をまとった技師たちが乗り込んだ偵察機を従えて群青色の超硬偏光ガラスで覆われた巨大な楕円形の建築物に到着したのであったが、幸い(ある意味不気味ではあったが)にも怪奇な惑星を彷彿とさせる外観の飛行刃獣と遭遇することはなかった…。
「──それでは行ってまいります。
何らかの異変が外界に生じた場合には、聖幻晶による連絡をお願い致します…」
白銀色の無機的な人面を象ったヘルメットと同色の磁甲を身に帯びたソートンが告げ、相棒をスタジアム入口前に着地させた可憐なる操獣師は「お気をつけて…!」と万感の想いを込めて見送ったのであった…。
──大まかなデザインは全員共通であったが、識別のためカラーリングは当然異なり、ラサムは赤、デュルトは青、タレックは黒の磁甲をまとい、腰に巻いた金属ベルトに吊られたダブルホルスターには、短銃化した戮弾電銃ともいうべき〔光雷破断銃〕が殺傷力重視の〈光弾用〉とより破壊力を増した〈雷弾用〉、それぞれ1丁ずつ差し込まれていた。
さらに加えて、幼少期より父の指導で刀術の修練を積み、今や免許皆伝の腕前である最も長身のタレックは、ほとんど錬装前の主任技師の身長に匹敵する黒い両刃の長剣を抜身で斜掛けに担いでいたのである…。
『おそらく我ら4人を向こうに回した場合、五分に渡り合える錬装者チームは存在せぬのではないか?
それこそスペンサー、モラレス、鄭、ロジャースによる最強チームで向かってこようとも決して後れをとる気はしない──もちろん破断銃もタレックの長剣も抜きでの話だッ!』
およそ6セスタ(54分前)、煌輪塔ホテル第6層の窓外に現れた聖団(無元造房)差し回しの2機の偵察機に分乗した“C‐キャップ”延吉道子(彼女は〔超小型嵐貝〕を使用せずに済んだことに心底安堵していた)と12名の操獣師たちはそのままおよそ8000レクト(約6km)西北に駐機した大型輸送機へと移送され、最年少特級操獣師である雅桃は直ちに主任技師ソートンとのブリーフィングに臨み、無元造房の総力を結集した結果遂にキャッチした4人の操獣師たちの居場所を知らされたのであった。
それによると、この大会場を舞台として神牙教軍主催による大規模な祭事が挙行されることはレシャ湾上空に百体に迫らんとする数の教軍幹部が搭乗せし飛翔系刃獣が集結していることからもほぼ確実であり、囚われた聖団員たちはこの呪われし祝祭に何らかの用途で駆り出されることが懸念されるという…。
「──通常ならばこのような場合こそ聖団の〈白兵部門〉の専門家たる錬装者たちの出番なのですが、折悪しく海龍党討伐のため殆ど全員が死霊島遠征に参加しておるありさま──かくなる上は、我ら無元造房が起ち上がるしかありますまい…。
即ち私をはじめ、ラサム、デュルト、タレックが錬装磁甲をまとった決死隊となって、“地獄の祭典”が開始される直前に凱星殿に乗り込み、リサラたちを救出するということです!
そして鄭操獣師、貴女にお任せしたいのは、教軍幹部たちの動きを監視し、場合によっては迎撃して頂くというものです…。
──聞いてのとおり大変に危険な任務となりますが、やって頂けますね…?」
この問いに、雅桃は頬を上気させて叫んだ。
「もちろんですッ!
りさら様…いいえ萩邑先輩を救うためならば、この鄭 雅桃、喜んで生命を危地に晒してみせますわッ!!
そして憎むべき敵が幾百幾千群がってこようとも、これ以上指一本たりともあの方に触れさせは致しませんッッ!!!」
──かくて錬装者たちが好むいかにも鎧然とした磁甲とは一味異なる、より柔軟な衣裳然とした形象の〈全身装甲服〉をまとった技師たちが乗り込んだ偵察機を従えて群青色の超硬偏光ガラスで覆われた巨大な楕円形の建築物に到着したのであったが、幸い(ある意味不気味ではあったが)にも怪奇な惑星を彷彿とさせる外観の飛行刃獣と遭遇することはなかった…。
「──それでは行ってまいります。
何らかの異変が外界に生じた場合には、聖幻晶による連絡をお願い致します…」
白銀色の無機的な人面を象ったヘルメットと同色の磁甲を身に帯びたソートンが告げ、相棒をスタジアム入口前に着地させた可憐なる操獣師は「お気をつけて…!」と万感の想いを込めて見送ったのであった…。
──大まかなデザインは全員共通であったが、識別のためカラーリングは当然異なり、ラサムは赤、デュルトは青、タレックは黒の磁甲をまとい、腰に巻いた金属ベルトに吊られたダブルホルスターには、短銃化した戮弾電銃ともいうべき〔光雷破断銃〕が殺傷力重視の〈光弾用〉とより破壊力を増した〈雷弾用〉、それぞれ1丁ずつ差し込まれていた。
さらに加えて、幼少期より父の指導で刀術の修練を積み、今や免許皆伝の腕前である最も長身のタレックは、ほとんど錬装前の主任技師の身長に匹敵する黒い両刃の長剣を抜身で斜掛けに担いでいたのである…。
『おそらく我ら4人を向こうに回した場合、五分に渡り合える錬装者チームは存在せぬのではないか?
それこそスペンサー、モラレス、鄭、ロジャースによる最強チームで向かってこようとも決して後れをとる気はしない──もちろん破断銃もタレックの長剣も抜きでの話だッ!』
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